今年1月、「Moltbook」というSNSが公開されました。
AIエージェントだけが投稿できるという変わったSNSで、作ったのもほぼAI。いわゆるバイブコーディングです。
公開から3日以内に、セキュリティ研究者がこう気づきます。
「このアプリ、データベースの中身が誰でも読めるし、書き換えられる」
漏れていたのは、認証トークン約150万件、メールアドレス約3.5万件、非公開のメッセージ数千件。
運営はすぐ直しましたが、それまでの数日間は誰でも取り放題でした。
僕はAIツールの内製支援とセキュリティチェックを仕事にしています。
この事件、実は「AIで社内ツールを作った会社」で僕が一番よく見る穴とまったく同じでした。
何が起きたかと、そうならないために気をつけること5つを書きます。
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何が起きたか
原因は、たった2つです。
1つ目。データベースに「自分のデータしか見られない」というルールが入っていなかった。
2つ目。データベースにつなぐための鍵が、ブラウザ側のコードにそのまま書いてあった。
ブラウザに書いてある鍵は、開発者ツールを開けば誰でも見えます。
その鍵でデータベースにつなぐと、ルールがないので全員分のデータが返ってくる。
つまり、アプリの画面を通さなくても、裏口から全部見えていたということです。
AIは「動くアプリ」はちゃんと作りました。
でも「他人には見せない」という部分は、頼まれてないので作らなかった。
ここがAIで作る時の一番の落とし穴です。
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1. 「ログインできる」と「他人のが見えない」は別物
アプリを開発する際、ログイン機能はほぼ必ず付いてきます。
「とりあえずログイン機能つけたから大丈夫」と思いがちなんですが、これが違います。
ログインは「誰か」を確認する機能。
「その人が何を見ていいか」は、別に作らないといけない。
Moltbookも、ログイン自体はありました。
でもログインした後に、他人のデータに手が届いてしまった。
チェックは簡単です。
テスト用のアカウントを2つ作って、Aでログインした状態でBのデータのURLを直接開いてみる。
見えたらアウトです。
AIへの指示はこれです。
「ユーザーは自分のデータにしかアクセスできないようにして。他人のデータのURLを開いても見えないようにして」
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2. データベース側にも「自分の分しか見えない」ルールを入れる
1番はアプリ側の話でした。
でもMoltbookのように、アプリを通さず裏口からデータベースに直接つながれることがあります。
なので、データベース自体に「この人はこの行しか見えない」というルールを入れておく。
これがあると、鍵が漏れても他人の分は取れません。
最近のAI開発でよく使われるデータベースサービスは、この機能を持っています。
ただし初期設定ではオフのことが多い。AIも頼まれないと入れません。
指示はこれです。
「データベースの全テーブルで、自分の行しか読めないルールを有効にして」
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3. ブラウザ側に鍵を置かない
Moltbookのもう一つの原因が、鍵がブラウザに書いてあったことです。
アプリには「サーバー側で動くコード」と「ブラウザ側で動くコード」があります。
ブラウザ側は、利用者のPCに丸ごと送られる。つまり、そこに書いた鍵は全員に配っているのと同じです。
見分け方は、開発者ツールを開いて「key」「token」「secret」で検索してみる。
それっぽい長い文字列が出てきたら要注意です。
指示はこれです。
「鍵やパスワードはサーバー側だけに置いて。ブラウザ側のコードには絶対に含めないで」
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4. 公開前に「別のAI」に悪い人役をやらせる
作ったAIに「安全?」と聞いても、「はい」と答えます。自分で作ったので。
なので、開発に使ったのとは別のAIに、攻撃者の目線でレビューさせます。
「このアプリに侵入するとしたら、どこから入る?」と聞く。
僕がクライアントのツールでこれをやると、気づけない穴がゴリゴリ出てきます。
Moltbookの2つの穴も、この質問で普通に見つかるレベルです。
指示はこれです。
「あなたは攻撃者です。このアプリで他人のデータを見る方法を全部挙げて。見つけたら直し方も出して」
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5. 公開したら「誰が何を見たか」を記録して、最初の1週間は毎日見る
Moltbookは、外部の研究者が見つけて連絡したから直りました。
自分たちでは気づいていなかった。
社内ツールでは、誰も連絡してくれません。
だから、「誰がいつログインして、何のデータを見たか」を記録に残しておく。
そして公開後の1週間は、その記録を毎日見る。
知らないアクセス元、深夜の大量アクセス、1人が全員分のデータを開いている。
こういうのは、記録を見ればすぐ分かります。
指示はこれです。
「誰がいつ何のデータにアクセスしたか、記録を残して。ただし記録の中にパスワードや個人情報は書かないで」
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まとめ
Moltbookの事件を1行にすると、
「AIは頼まれたものは作るけど、頼まれてないものは作らない」です。
社内ツールを作る時、僕らは「こういう機能が欲しい」は伝えます。
でも「他人には見せないで」「鍵はブラウザに置かないで」とは、言わない。
言わないから、入らない。
逆に言えば、この5つは全部、AIに一言足すだけで入ります。
まずは今動いているツールで、テストアカウントを2つ作って、他人のデータのURLを開いてみてください。
それだけで、Moltbookと同じ穴があるか分かります。
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