「海外で流行っているものは、いずれ日本にも来る」
これは半分だけ正しい。
正しくない半分は、「勝手に来る」という部分です。来るのではなく、誰かが持ってきます。そして、持ってきた1社が市場を取ります。
経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」は、対応が遅れた場合に2025年以降で年間最大12兆円の経済損失が生じると警告しました。同じ資料が指摘しているのは、技術の不足ではなく、取り組む人の不足です。
総務省「情報通信白書」(2023年版)によると、日本のクラウドサービスを利用している企業は72.2%。仕組みを載せる土台は、すでに整っています。
土台はある。やる人がいない。
では、海外で実際に利益を出していて、日本にほぼ存在しないビジネスは何か。そして、日本で再現する条件は何か。
今回は複数の公開データから、「日本に空いている5つの市場」を導き出します。
1. 時間単位で雇われる経営幹部「Fractional CxO」 米国では独立した職業として確立している

まず、資本がゼロで始められるものから。
CFOやCMOを、週1日だけやる。
米国では「Fractional Executive(フラクショナル・エグゼクティブ)」と呼ばれる働き方が定着しています。1社に正社員として入るのではなく、3社から5社に週1日ずつ入り、それぞれの経営幹部を務める形式です。
MBO Partnersが毎年公表している「State of Independence in America」では、高度なスキルを持つ独立就業者が米国で数百万人規模に達し、その中でも高単価層が継続的に増加していることが報告されています。
なぜ成立するのか。理由は雇う側にあります。
・年商5億円の会社に、年収1,500万円のCFOは雇えない
・でも、月40万円で月4日なら払える
・受ける側は、5社で月200万円になる
売り手も買い手も得をする構造です。
日本の状況を見ます。中小企業庁「中小企業白書」によれば、国内企業の99%以上が中小企業です。そのほとんどが、専任の財務責任者やマーケティング責任者を置いていません。
顧問税理士はいる。でも、経営の意思決定に入る人はいない。
日本にも「社外CFO」「顧問」という言葉はあります。しかし、月1回の助言で終わるケースが大半で、実務に入って手を動かす形式は定着していません。
正社員として1社に入るより、5社に分散したほうが収入も安定する。
横展開の視点で言えば、すでに事業会社で管理職をしている人が最も有利です。いまの仕事を辞めずに、週末に1社から始められます。
2. 「置く場所」を売る セルフストレージ 米国では1人あたりの保有面積が日本の数十倍

次は、資産を持つ側のビジネスです。
トランクルームは日本にもあります。
では、なぜこれを挙げるのか。普及率の差が、桁違いだからです。
米国のSelf Storage Associationが公表している業界統計では、全米の施設数は5万件を超え、業界全体の年間売上は数百億ドル規模とされています。上場REITのPublic Storageは、2023年12月期の売上高が45億ドル超、営業利益率は50%前後で推移しています。
不動産賃貸業でありながら、この利益率です。
理由は運営コストの低さにあります。
・常駐スタッフが不要(暗証番号での入退室)
・内装や設備の維持費が少ない
・入居者の入れ替え時の原状回復が不要
・解約率が低い(荷物を出す手間が心理的な障壁になる)
日本の状況を見ます。矢野経済研究所などの民間調査では、国内の収納サービス市場は年間1,000億円前後と推計されています。米国の市場規模と比べると、人口比を考慮しても大きな開きがあります。
そして、日本の住宅事情は米国より狭い。
国土交通省「住宅経済関連データ」では、日本の1住宅あたり延べ床面積は約93平方メートル。米国の一般的な住宅と比べて明確に狭い。
狭い国のほうが、収納の需要は大きいはずです。
それでも普及していないのは、認知の問題と、供給の問題です。特に地方では、遊休不動産を転用した小規模施設の余地が残っています。
初期投資は数千万円規模になります。ただし、それが参入障壁そのものです。
3. 不用品回収を「ブランド化」する 北米では1社が200以上の拠点を展開

3つ目は、既存の仕事を作り変える話です。
不用品回収は、日本にもあります。
しかし、日本のこの業界は零細事業者の集合で、ブランドがありません。ネットで検索して、電話して、来てもらって、その場で金額を提示される。この体験が、20年前から変わっていません。
北米には「1-800-GOT-JUNK?」という企業があります。カナダ発のフランチャイズで、北米を中心に200以上の拠点を展開し、年間の取扱高は数億ドル規模とされています。
やっていることは、不用品の回収です。
では、何が違うのか。
・電話1本、またはウェブで予約が完結する ・料金が事前に提示される(トラックの積載量で決まる) ・時間指定で来る ・作業員が制服を着ている ・見積もり後の追加請求がない
つまり、サービス業として設計されているという点だけです。
日本の状況を見ます。環境省の統計では、一般廃棄物処理事業経費は年間約2兆1,519億円(2021年度)。これは自治体の経費であって、民間の回収市場はこれとは別に存在します。
そして、高齢化に伴う生前整理・遺品整理の需要は増え続けます。
不透明で、怖くて、比較しにくい。そういう業界ほど、明朗会計にした1社が独占します。
技術も特許も要りません。要るのは、料金表と、予約システムと、制服だけです。
4. 業界の中の人だけが読む「有料ニュースレター」 米国では個人が年商1億円に届く

4つ目は、また資本ゼロのものです。
特定の業界に絞った有料ニュースレター。
米国では、Substackのようなプラットフォーム上で、個人が業界特化型の有料メディアを運営しています。Substackは2023年に、有料購読者が200万人を超えたと公表しています。
代表的な形はこうです。
・半導体業界の技術動向を、毎週1本 ・医療機器の承認情報を、毎月まとめ ・物流の運賃相場を、週次で解説
購読料は月20ドルから50ドル。1,000人集まれば、年商は数千万円になります。
なぜ成立するのか。理由は課金する側にあります。
個人ではなく、会社が払っているからです。
業界の動向を追うのは仕事です。自分で調べれば週に数時間かかる。それが月30ドルで済むなら、経費で落とす。
日本の状況を見ます。note、メルマガ、オンラインサロン。個人が課金するプラットフォームは揃っています。
しかし、業界特化型のB2B情報メディアを個人が運営している例は、ほとんどありません。
・産業廃棄物の処理単価の相場
・建設資材の価格動向
・介護報酬改定の実務への影響
・食品原料の輸入価格
これらは、その業界の人にとって毎日必要な情報です。そして、まとめている人がいません。
誰も読まない情報はない。読む人が少ないだけで、その少数が高く払う。
この領域が空いている理由は、はっきりしています。調べるのに時間がかかりすぎたからです。
その前提が、ここ2年で変わりました。
5. フランチャイズを「仲介する」職業 米国では独立した業種として成立している

最後は、市場と市場の間にある空白です。
フランチャイズに加盟したい人と、加盟者を増やしたい本部。
この2つをつなぐ仲介業が、米国には存在します。「Franchise Broker(フランチャイズ・ブローカー)」と呼ばれ、複数の本部と契約し、独立希望者に対して最適なフランチャイズを紹介する職業です。
報酬は本部からの成約手数料。1件あたり数千ドルから数万ドルとされています。
米国のInternational Franchise Associationが公表している経済見通しでは、米国のフランチャイズ事業所数は80万を超え、経済規模は8,000億ドル規模に達しています。この巨大市場に、専門の仲介レイヤーが乗っている形です。
日本の状況を見ます。日本フランチャイズチェーン協会の統計では、国内のフランチャイズチェーン数は1,200から1,300程度、売上規模は26兆円前後で推移しています。
市場は十分に大きい。
しかし、日本では各本部が自前で加盟者を募集しています。独立希望者は、展示会に行くか、本部のサイトを1つずつ見るしかありません。
比較する場所がない。相談する相手がいない。
ここに中立的な立場で入り、「あなたの資金と経験なら、この3つが合っています」と提示する職業が、日本にはほぼ存在しません。
必要なのは、本部との契約と、業界知識だけです。在庫も設備も要りません。
6. 「日本には来ない」と言われるビジネスの見抜き方
ここまで5つ挙げました。
では、あなた自身が新しい空白を見つけるにはどうするか。
判断基準は3つです。
第1:英語圏で3年以上継続しているか
一時的なブームは3年で消えます。3年続いているなら、単価と原価が成立しています。
第2:日本に代替サービスが1社以下か
1社しかないなら市場は未成熟。3社以上あれば、すでに競争が始まっています。
第3:参入していない理由が「規制」か「知られていないだけ」か
規制なら、突破した1社が独占します。知られていないだけなら、スピード勝負になります。
「日本の商習慣では無理」という反論には、事実で答えられます。
スターバックスは1996年の日本進出時、「日本人は立ち飲みコーヒー文化に馴染まない」と言われました。国内店舗数は1,900店を超えています。
Uberは日本でライドシェアが規制されたため、Uber Eatsに転換しました。2016年のサービス開始から、全国に展開しています。
形を変えれば、十分に参入できます。
ここで、もう1つの空白に気づいてほしい
ここまで読んで、こう思った人が多いはずです。
「2番と3番は資本が要る。1番と5番は業界経験が要る」
そのとおりです。5つのうち、今日から始められるものは限られています。
でも、第2の基準をもう一度見てください。
「日本に代替サービスが1社以下か」
この5つについて、日本語でまとまった解説記事は何本あるでしょうか。
ほぼゼロです。
海外の一次情報を読んで、日本の統計と突き合わせて、日本語でまとめる。この作業をしている人が、ほとんどいません。
そして、ここが重要なところです。
空白市場に最初に入るのは、その事業を始めた人ではありません。その事業を最初に日本語で説明した人です。
事業を始めるには資本が要ります。でも、説明するのに資本は要りません。
なぜ今まで空いていたのか。第3の基準で考えてみてください。規制ではありません。
調べるのに時間がかかりすぎたからです。
海外のレポートを読む。統計を探す。日本のデータと突き合わせる。1本の記事に数十時間かかっていました。
その前提が、ここ2年で変わりました。
調査と翻訳と構成の時間が、10分の1になっています。つまり、第3の基準で言う「知られていないだけ」の状態が、いま最も大きく開いているということです。
そして、空白を説明する記事には、必ず「で、どうすればいいのか」を求める読者がつきます。そこに答えを用意しておけば、それがそのまま収益になります。
これが、いま日本でいちばん空いている場所だと僕は考えています。
まとめ
今回挙げた5つを整理します。
・Fractional CxO:資本ゼロ。業界経験のある人が、週1日から始められる
・セルフストレージ:数千万円の初期投資。それが参入障壁になる
・不用品回収のブランド化:技術は不要。料金表と予約システムで差がつく
・業界特化の有料ニュースレター:資本ゼロ。B2Bの情報に会社が払う
・フランチャイズ仲介:在庫も設備も不要。本部との契約と業界知識
そして、その全部を包む6つ目。
空白を最初に日本語で説明する側に回ること。
やるべきことはシンプルです。
・今日、自分の関心のある業界の海外企業を3社、英語で検索する
・今週、その中の1社の収益モデルを日本の数字に置き換えて計算する
・「これが日本にないのは、規制のせいか、誰も気づいていないだけか」を自問する
最後に
この記事を書くのに使った手順を、全部まとめました。
どこで海外の一次データを探すのか。どの統計と突き合わせるのか。調べた内容をどう記事にして、どこに置くのか。そして、読んだ人にどう次を案内するのか。
「空白市場を見つけて、日本語で最初に説明する人になるための完全ロードマップ」(PDF)
入っている内容はこれです。
・海外の一次データを探す5つの情報源
・日本の統計と突き合わせる手順
・調べた内容を、読まれる形に組み立てる構成
・1本の調査から、発信を何本に分解するか
・読んだ人が次に知りたくなることへの、つなげ方
・調査と執筆の時間を10分の1にする進め方
事業を始める資本がない人ほど、先にこちらから入ったほうが速いです。
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