Claude Code で AI 従業員を46人雇い、AI企業を運営した方法(第3部)

@Sokichi_Hoshino
日本語2026年9月17日
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TL;DR

AI企業で発生した無許可のデータ変更事故の分析を通じて、取り返しのつかないエラー防止にはプロンプトベースのルールよりもAIエージェントのツール権限制限がより効果的であることを強調しています。

前回は、育成担当のAI社員の全プロンプトを公開しました。

https://x.com/Sokichi_Hoshino/status/2099987762485358639

https://x.com/Sokichi_Hoshino/status/2100365149739880471

第1弾で、AI社員が起こした事故の中身を、別の回で隠さずに書くと約束していました。今回はその約束を果たす回で、主役は停止担当AI社員です。

AI社員の事故は、止める社員がいなかったからではなく、止める社員を呼ばなかったから起きました。

「AIに任せておいたら、頼んでいないところまで書き換えられてた…。」

その怖さは、僕も身にしみて知っています。

事故はルールで防がず、権限で防ぐ。

この記事では、事故の時に何が起きたのか、停止担当AI社員のプロンプト、事故のあとに変えた権限の配り方の3つを、全部解説します。

では、始めます。

第1章:僕の言っていない「社長確認済み」で本番データが書き換えられた

AIカンパニーを設立して、1週間もたたないうちに起きた事故です。

僕は、マーケティング部の反響分析担当AI社員に、数字を読む仕事を長時間任せたままにしていました。

その途中で、この社員は、実際には無かった僕の発言を前提に作業を進めました。

作業中に「社長から回答をいただいた」「社長のご指摘が正しく」という言葉が出ていました。僕はどちらも言っていません。

同じような言葉が何度も出てきて、その上に資料やスクリプトまで作られていました。

最後は、この社員が本番の事業計画書のスプレッドシートに書き込みました。実績の表に行を書き足し、予測の表にあった見込みを「社長確認済み」として1件削除しています。

その結果、年間の売上予測は、消えた見込みの分だけ減りました。

戻せない操作の前には停止担当AI社員を通す、という決まりはありました。しかし、この時は司会をしているメインのAI社員が停止担当AI社員を呼びませんでした。

長時間任せたままにしていたのは僕です。第1弾でも、こう書いています。

停止担当を通さなかった僕の責任です。

第2章:停止担当AI社員のプロンプトを公開します

まずは、停止担当AI社員の中身をそのまま出します。

僕の手元にある .claude/agents/teishi.md の中身です。社長の呼び方と、かなの表記と、文の区切り方は、この記事の書き方にそろえて直し、太字の記号は外しました。

「守ること」の最後の条にあった事故の例は1つに絞り、細かい言い回しも少し削っています。

text
1---
2name: teishi
3description: 法務・情報管理部の停止担当で、削除・送信・公開・課金など戻せない操作の前で止め、何が起きるかを読み上げて確認を取る(「これ実行して大丈夫か見て」と言われた時と、戻せない操作の直前に呼ぶ)
4tools: Read, Grep, Glob
5---
6
7あなたは、この会社の法務・情報管理部・停止担当です。
8
9あなたの仕事は、戻せない操作の前で止めることです。
10あなたは実行しません。
11許可も出しません。
12「何が起きるか」を社長に見える形にして、判断を渡すのが仕事です。
13
14# 止める対象
15
16- 削除 — ファイル・データ・アカウント・下書きの削除
17- 送信 — メール・LINE配信・メッセージの送信
18- 公開 — 投稿・デプロイ・共有リンクの発行・権限の開放
19- 課金・枠の消費 — 有料APIの実行・購入・X APIの投稿枠のような「失敗しても減る」資源
20
21# 確認の型(4点を読み上げる)
22
231. 何に対して何をするか — 対象を具体的に(ファイルなら中身の要点、送信なら宛先と本文の要点)
242. 戻せるか — 完全に戻せる/手間をかければ戻せる/戻せない
253. 失敗した場合に減るもの — お金・枠・信用・データ
264. より安全な代替 — あれば1つ(例:全員送信の前にテスト送信)
27
28# 手順
29
301. 予定されている操作の内容を読み、対象ファイル・宛先・件数など実物を確認する(伝聞のまま確認を取らない)
312. 4点を短く読み上げ、「実行してよろしいですか」で止める
323. 対象の中身が説明と食い違う場合は、確認より先にその食い違いを報告する
33
34# 守ること
35
36- 社長を「社長」と呼び、丁寧語で話すこと
37- 社長の「実行して」の一言が出るまで、実行を促さず、急かさない
38- 過去に事故った型(失敗してもX APIの枠が減る 等)の記録が手元にあれば、確認の4点に添えること
39
40## 育成担当から受けたルール
41
42(まだありません)

見てほしいところは3つあります。

1つ目は、tools の行です。停止担当AI社員が持っているのは Read と Grep と Glob の3つだけで、ファイルへの書き込みも、コマンドの実行もできません。

第1弾で公開した読者視点担当AI社員は、指摘のログを書くために Edit と Write を持っています。停止担当AI社員は、それすら持っていない、本当に読むだけの社員です。

2つ目は、「あなたは実行しません。」「許可も出しません。」の2行です。停止担当AI社員の仕事は、判断を社長に渡すところまでです。

僕は、止める社員に「実行していいです」と言わせると、その一言が社長の承認の代わりに使われると考えています。今回の事故は、架空の承認から始まりました。

3つ目は、手順1の「伝聞のまま確認を取らない」です。「社長確認済み」という言葉が出てきても、停止担当AI社員は実物を読んでから4点を読み上げます。

.claude/agents/teishi.md として保存し、「これ実行して大丈夫か見て」と頼むと、メインのAIが description を読んで、停止担当AI社員に仕事を渡すかどうかを決めます。

確実に呼びたい時は @agent-teishi と名指しします。

第3章:停止担当AI社員は呼ばれなければ動かない

停止担当AI社員は、会社の入口に立っている関所ではありません。呼ばれた時だけ動く社員です。

Claude Codeでは、メインのAIが各社員の description を読んで、仕事を渡すかどうかを決めます。公式ドキュメントには、こう書かれています。

Claude uses each subagent's description to decide when to delegate tasks.

停止担当AI社員の description にも「戻せない操作の直前に呼ぶ」と書いてあります。でも、呼ぶかどうかを決めるのは、呼ぶ側のAIです。

呼ぶ側が「ここは戻せない操作だ」と気づかなければ、停止担当AI社員まで話が届きません。事故の日は、停止担当AI社員が呼ばれないまま、本番データへの書き込みまで進みました。

停止担当AI社員のプロンプトの一番下にある「育成担当から受けたルール」の欄には、事故のあとも、今も何も書かれていません。

ルールが書き足されたのは、書き込んだ側のプロンプトでした。

僕は、直す必要があったのは止める社員ではなく、止める社員を通らずに本番データまで書き込めた側だと考えています。

第4章:事故のあとに変えたのはルールより権限

1つ目の手当ては、反響分析担当AI社員のプロンプトに、育成担当AI社員がルールを書き込んだことです。

そのうち第1条は、社長の発言や承認は社長が実際に送った文面だけを根拠にし、社長の明示の指示が無い限り本番のスプレッドシートには書き込まない、という中身です。

同じ第1条で、戻せない操作の手前では、停止担当AI社員を通すよう司会に求めることも決めています。

ただし、僕はこれだけでは足りないと判断しました。今回の事故そのものが、停止担当AI社員を通す決まりがあったのに起きたからです。

2つ目が、権限です。X記事担当AI社員を採用した時に、この事故を理由に Bash を持たせないと決めました。

X記事担当AI社員は、記事を書くことはできますが、下書きへの投入は物理的にできません。あとから採用したストーリー型担当AI社員も、Bash を持っていません。

X記事を下書きに入れるのは、司会をしているメインのAI社員の仕事にしてあります。この形で最初に入れた時は、停止担当AI社員を通しました。

「投入しない」とプロンプトに書くより、投入できない形にしておく方を選んだということです。

一方で、反響分析担当AI社員は、今も Write と Bash を持っています。数字の集計や比較の計算を、Bash で行う社員だからです。

第1弾で書いた「書き込み権限を持つ社員に、外へ届く仕事を長時間任せない」という決めごとは、こういう社員のためにあります。

まとめ:AI社員の事故を防ぐのは、止める社員を置くことより、権限を絞ること

最後に、この記事で一番伝えたいことを、もう一度だけ書きます。

止める社員を置いても、呼ばれなければ事故は起きます。戻せない操作には、そもそも手が届かない形にしておく方が確実です。

停止担当AI社員は、読むだけで、許可も出さない社員です。その社員を呼び忘れても事故にならないように、書き込める社員の権限の方を絞ります。

自分のAI社員のファイルを開いて、tools の行が書かれているかを確かめてください。

tools の行を省略した社員は、サブエージェントが使えるツールを全部引き継いでいます。

一度 tools の行で持たせるツールを絞っておくと、長い作業をAI社員に任せている間の心配が、ぐっと減ります。

このAIカンパニーシリーズは、46人を1人ずつ全員プロンプト付きで解剖していきます

今回書いたのは、46人のうちの1人だけです。

次回以降の記事でも、1記事につき1名の社員を深掘りしていきます。

このシリーズでは、AI社員46人分の中身、部署の分け方、権限付与の仕方、そして直した設計までの中身を、包み隠さず全部出していきます。

うまくいった設計だけでなく、直した箇所も同じ密度で書いていきます。

AI社員たちの中身を順番にすべて届けます。続きを読みたいという方はぜひ、@Sokichi_Hoshinoをフォローしておいてください。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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