スタンフォード大学の研究で証明されていました。
なぜ人は、他人の推しになるのか。
毎日プライベートを出して、人柄を伝えて、コメントに返して、面白いことを言って——
今日は、ファン化には3種類あるという話をします。
本題に入る前に、ひとつだけお知らせを。
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1. ファン化には、3つの種類がある
人があなたから買う理由は、ざっくり3つに分かれます。
❶ この人自体が好き
人柄が好き。考え方が好き。なんとなく応援したい。
❷ この人みたいになりたい
憧れている。こんな生活がしたい。こんなふうに仕事がしたい。
❸ この人は信用できる
詳しそう。言っていることが正しそう。嘘をつかなさそう。
ここで大事なのは、❸には「好き」が1ミリも入っていないということです。
人柄を知らなくてもいい。面白くなくてもいい。それでも、買う理由になります。

2. ❶「この人自体が好き」はどう生まれるか
人が誰かを好きになる条件は、心理学でかなり調べられています。
似ていると、好きになる
1961年、ドン・バーンの実験です。
被験者に「見知らぬ人の意見のプロフィール」を見せて、その人を評価させました。結果はこうです。
自分と意見が似ている人のほうが、好かれた。
それだけではありません。似ている相手は、「より知的で、より情報通で、より道徳的だ」とまで判断されました。
意見が似ているだけで、頭が良さそうに見える。これが、価値観を発信する人が支持される仕組みのひとつです。
自分のことを話すと、近づく
1997年、アーサー・アロンらの研究です。
初対面の2人を組ませて、「45分間」、だんだん踏み込んでいく質問に答えさせました。いわゆる「36の質問」です。
比較対象は、普通の雑談をしたペア。
結果、質問に答えたペアのほうが、終わったあとの親密度が高かった。
自己開示は、効きます。
ただし、この研究には「正直に書いておくべき続き」があります。研究2と3では、「意見が合うペアにする」「お互い好きになると期待させる」「仲良くなることを目標として伝える」という操作を加えたのですが——
どれも、追加の効果はありませんでした。
効いていたのは、「自己開示そのもの」だったということです。
「ちゃんと応答してくれる」と感じると、親密になる
ロチェスター大学のハリー・ライスらは、親密さの正体をこう整理しています。
「相手が自分の中心的な部分に注意を向け、それに支持的に応えてくれている」と信じられること。
もっと噛み砕くと、「理解され、認められ、気にかけられている」と感じること。
SNSで言えば、コメントを拾う、質問に答える、読者の悩みを言葉にしてあげる。これが効くのは、この仕組みです。
❶をやる人は、このあたりを積み上げていきます。
自己開示、価値観、日常、読者とのやりとり。
ただし——ここが今日の話の入口です。
❶は、時間もエネルギーも、けっこう使います。
3. ❷「この人みたいになりたい」には、落とし穴がある
次は憧れ型です。
人は、自分を他人と比べて評価します。1954年、レオン・フェスティンガーが提唱した「社会的比較理論」です。
原文はこうです。
「人間には、自らの意見や能力を評価しようとする欲求が存在する」
「客観的な手段がないとき、人は自分の意見や能力を、他者のそれと比較することで評価する」
自分がどのくらいなのか、他人を見ないと分からない。だから比べる。
問題は、ここからです。
自分より上の人を見たとき、人は2つに分かれます。
「私もこうなりたい」と燃えるか。
「自分には無理だ」としぼむか。
この分かれ目を、正面から実験した研究があります。
「到達できそうか」で、結果が真逆になる
1997年、ウォータールー大学のペネロペ・ロックウッドとジヴァ・クンダの研究です。論文のタイトルは「Superstars and Me(スーパースターと私)」。
「実験2」を紹介します。
会計学科の「1年生と4年生」に、「すごい成績を出した4年生」の記事を読ませました。
1年生にとっては、まだ3年ある。「到達できそう」です。
4年生にとっては、もう卒業間近。「手遅れ」です。
結果です。
「触発された」と答えたのは、1年生が82%、4年生は6%。
同じ記事を読んで、「13倍以上の差」がつきました。
さらに1年生は、記事を読んだあと「自己評価が上がっていました」(平均8.19→8.90、統計的に有意)。4年生はやや下がりましたが、こちらは統計的な差とは言えない程度でした。
論文の結論部分に、こう書かれています。
「理想的なロールモデルとは、本人よりもやや年上で、少し先のキャリア段階にいて、本人が望むものを達成した人物であるようだ。卓越しているが、不可能ではない成功を収めた人物である」
近すぎても、遠すぎてもダメ。
ここが❷の難しさです。あなたが成功を発信すればするほど、一部の読者にとっては「自分には無理」に変わる。
しかも、どのくらいの距離感で見られているかは、自分ではコントロールできません。

4. ❸「この人は信用できる」が、いちばん再現しやすい
ここからが本題です。
信用(credibility)は、説得の研究で70年以上調べられてきたテーマです。
信用は、2つの要素でできている
スタンフォード大学のB.J. フォッグらは、1999年の論文でこう書いています。
「研究者の大多数は、信用性には2つの重要な構成要素があるとしている。trustworthiness(誠実さ)と expertise(専門性)である」
「信用性の高いものは、その両方が高いレベルにあると知覚される」
ひとつは「専門性」。 詳しい、経験がある、能力がある。
もうひとつは「誠実さ」。 嘘をつかない、偏っていない、善意がある。
この2つの定義は、1953年にイェール大学のカール・ホヴランドらが整理したものが元になっています。
・「専門性」=「正しい主張の情報源だと思われている度合い」
・「誠実さ」=「その人が、自分が正しいと思うことを伝えようとしている、という確信の度合い」
よく似ていますが、別物です。
「正しいことを知っているか」と、「正しいことを言おうとしているか」の違いです。
ここが、いちばん見落とされている
実績を並べるだけでは、専門性は上がっても、誠実さは上がりません。
「月商◯◯万円達成!」を並べ続けると、詳しそうには見えます。でも、「この人は都合のいいことしか言っていないのでは」という疑いは、消えません。
これを直接調べた研究があります。
2020年、オハイオ州立大学のローラ・ウォレスらの研究です。論文はこう結論づけています。
「情報源の偏り(bias)は、不誠実さ・専門性の欠如・好感度の低さとは別に、説得と信用性に負の影響を与える」
つまり、「詳しくないから信用されない」のと、「偏っているから信用されない」のは、別のルートだということです。
実績だけを並べるのは、前者を潰して後者を放置している状態になります。
逆に、自分に不利なことを言うと信用される
1966年の古典的な実験があります。
自分の利益に「反する」主張をする人は、「専門性が同じままでも、誠実さの評価が上がり、説得力が増した」という結果です。
「この方法は、こういう人には向きません」
「私はこれはできません」
「ここは失敗しました」
こういう発言は、短期的には損に見えます。でも「信用という軸では、明確にプラス」です。
フォッグらの大規模調査
フォッグらは、実際にどう信用が判断されるかも調べています。
2002年の調査では、2,684人に実在するWebサイト100件を評価させました。最も多く言及されたのは「デザインの見た目」で、コメントの46.1%を占めていました。
その前の2001年の調査(「1,400人以上」)では、信用を「上げる」要素として「専門性」「誠実さ」「個別対応」などが、「下げる」要素として「商業的な意図の露出」「素人っぽさ」が挙がっています。
売り込みが透けると、信用は下がる。これも実証されています。
5. なぜ❸が「人気者でなくても」成立するのか
ここからは、私のマーケティング上の解釈です。
先に正直に書いておきます。「❸が3つの中で一番売れる」と直接比較した決定版の研究は、確認できませんでした。近い研究は1本ありますが、航空会社の広告という特定の場面のもので、本文も確認できていません。
なので、これは研究結果ではなく、実務上の話として読んでください。
❸が再現しやすいと考える理由は、3つあります。
理由①:人柄を出さなくても成立する。
❶は、自分を開示しないと始まりません。❷は、自分の人生を見せないと始まりません。
❸は、扱っているテーマの話だけで積み上がります。
理由②:距離感の調整がいらない。
❷は、近すぎても遠すぎても機能しませんでした。でも❸に、その問題はありません。
「詳しくて、正直だ」は、遠くても近くても成立します。
理由③:購入の直前にある判断だから。
人が買う直前に考えるのは、たいていこれです。
「この人の言うこと、本当かな」
好きかどうかより先に、この判断を通過しないと買われません。
だから❶や❷を積んでいる人も、結局❸は必要になります。「❸は、他の2つの土台」でもあるわけです。
6. では、明日から何を投稿すればいいか
❸を積むには、「実績を並べるだけでは足りない」というのが、ここまでの話でした。
必要なのは、この順番です。
実績 → 理由 → 知識 → 再現性 → 信用
ひとつずつ見ていきます。
① 実績を見せる(専門性)
まずここは必要です。何ができる人なのかが分からないと、話が始まりません。
② なぜその結果が出たかを説明する(専門性)
ここで差がつきます。「月商◯◯万円でした」で止まる人と、「なぜそうなったか」を説明できる人。
説明できる人だけが、偶然ではないと分かってもらえます。
③ 再現できる形にする(専門性)
自分のケースを、他人が使える手順にする。ここまで来て初めて「教えられる人」になります。
④ 具体的な事例を出す(専門性)
抽象論は検証できません。「誰が」「どんな状況で」「何をして」「どうなったか」。
⑤ 失敗も出す(誠実さ)
ここから後半、誠実さのパートです。
うまくいかなかったこと、やってみて外したこと。これを出せる人は、成功談だけの人より信用されます。
⑥ 根拠を出す(誠実さ)
データ、研究、出典。「私はこう思う」だけで終わらせない。
出典を書くと、「間違っていたら指摘される状態」を自分で作ることになります。それ自体が誠実さの証明です。
⑦ できないことを正直に言う(誠実さ)
「この方法は、こういう人には向きません」
「これは私の専門ではありません」
これがいちばん効きます。1966年の実験が示したとおりです。
①〜④が専門性、⑤〜⑦が誠実さ。
片方だけでは、信用になりません。
①〜④だけだと「すごそうだけど、盛ってそう」になります。
⑤〜⑦だけだと「正直そうだけど、詳しくはなさそう」になります。

保存用:この記事のまとめ
ファン化の3種類
・❶ この人自体が好き(自己開示・類似性・応答性)
・❷ この人みたいになりたい(ただし「到達できそう」な距離のときだけ)
・❸ この人は信用できる(専門性 × 誠実さ)
研究で確認されていること
・意見が似ている人は、好かれるだけでなく「知的・道徳的とまで判断される」(1961年)
・自己開示は親密さを生む。ただし効いていたのは「自己開示そのもの」だった(1997年)
・ロールモデルに「触発された」のは、「1年生82% 対 4年生6%」(1997年)
・信用は「誠実さと専門性の2つ」からなる(1999年、スタンフォード)
・「偏りは、専門性の不足とは別ルート」で信用を下げる(2020年)
・自分に不利な主張をする人は、「専門性が同じでも信用が上がる」(1966年)
明日からやること
実績 → 理由 → 知識 → 再現性 →(ここから誠実さ)→ 失敗談 → 根拠 → できないことの明示
最後に
発信が苦しい人は、たいてい❶だけを正解だと思っています。
毎日プライベートを出して、人柄を伝えて、面白いことを言って、全員に好かれる。
それ、向いていない人がやると、続きません。
でも、買う理由は3つあります。
好かれなくてもいい。
憧れられなくてもいい。
面白くなくてもいい。
詳しくて、正直であればいい。
そして「詳しくて、正直」は、人気者になることと違って、積み上げ方がはっきりしています。
知っていることを書く。なぜそうなるかを説明する。うまくいかなかったことも書く。根拠を出す。できないことは、できないと言う。
それだけです。
人気者にならなくても、選ばれる人にはなれます。
最後に
圧倒的にファンを作るインスタの作り方は、登録された方にのみ、今後ご紹介していきます。
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参考文献
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※本記事で紹介した研究は、いずれも集団の平均的な傾向を示したもので、個人に必ず当てはまるものではありません。ロックウッドとクンダの研究は、カナダの1大学の学生を対象としたものです。「信用が専門性と誠実さの2要素からなる」という説明は、研究者による整理・通説であり、数式として定式化されたものではありません。「3種類のうちどれが最も売上につながるか」を直接比較した研究は確認できておらず、本記事の第5章は筆者のマーケティング上の解釈です。研究の解釈には諸説があります。





