このまま何もしないと、住む場所がなくなる日が来る。
大げさではない。数字がそう言っている。
20年この仕事をしてきた。今の市場で起きていることを正直に書く。
第1章:分譲が買えない層が賃貸に流れている
分譲マンションの価格が上がり続けている。東京23区の建売住宅で1億円以上の物件が初めて2割を超えた。7ヶ月連続で販売価格の最高値を更新している。
「では中古を買えばいい」と思った人間に伝えたい。
首都圏の中古マンションの成約㎡単価は65ヶ月連続で上昇している。中古も高い。新築が買えないから中古に流れる。中古の需要が上がる。中古も高くなる。逃げ場がない。
買えない人間が賃貸に流れる。
業界関係者287名への調査で「分譲マンション価格の高騰」が賃貸市場にプラスの影響を与える要因のトップに挙げられた。新築も中古も買えない層が賃貸需要を押し上げている。
需要が増えれば何が起きるか。家賃が上がる。
第2章:人口が減っているのになぜ家賃が上がるのか
「人口が減っているなら空室も増えるはずでは」と思う人がいるかもしれない。そうならない理由がある。
世帯数は増えている。人口は減っていても世帯数は増えている。一人暮らし・離婚・高齢者の単身化が進んでいる。1人が1部屋を使う時代になった。人口が減っても世帯数が増えれば需要は減らない。
都市への集中が続いている。地方の人口は減っている。だが東京・大阪・名古屋への集中は続いている。都市部の需要は増え地方の空き家が増える。空室率の二極化が起きている。
外国人居住者が急増している。技能実習制度の拡大・留学生・就労ビザの緩和で外国人居住者が増えている。彼らも賃貸需要を生む。
供給が絞られている。建築コストの高騰で新規の賃貸物件が建てにくくなっている。需要が維持される中で供給が減れば空室率は下がる。
人口減少は「全体の話」だ。あなたが住もうとしている都市部の話ではない。
第3章:空室率が下がっている。借りたくても借りられない時代が来る
大阪市北区・中央区の空室率は4%台だ。大阪市は賃料上昇率で東京23区を上回り、掲載賃料が過去最高を更新している。
東京も大阪も同じ方向に動いている。
空室率が低いということは何を意味するか。借りたくても選べる物件が減っているということだ。条件を妥協しなければ借りられない状態に近づいている。
このまま供給が増えなければ、希望の場所に希望の価格で住めない時代が来る。
第4章:賃貸の家賃値上げは業界全体の既定路線だ
「賃料・共益費の値上げ」が業界関係者アンケートでディベロッパー・アセットマネジメント会社共通の最多回答だった。
個々の大家の判断ではない。業界全体のトレンドだ。
さらに賃貸マンション・用地の取得価格が「上がる」と答えた業者が71.1%。前回調査の55.8%から大幅に上昇した。取得コストは必ず家賃に転嫁される。
逃げ場がなくなっている。
第5章:老後に賃貸を借りられなくなる現実
若いうちは借りられる。問題はその先だ。
高齢者の入居を断る大家が増えている。収入が年金だけになった瞬間に審査が通らなくなるケースがある。孤独死のリスクを理由に断られる。保証会社に入れず断られる。
数字がある。65歳を超えて賃貸住宅を探した際に「苦労した」と回答した人が42.8%。約3人に1人(30.4%)が年齢を理由に入居を断られた経験がある。直近1年では36.7%と3人に1人以上が断られている。
収入や預貯金が十分にあっても断られるケースが少なくない。お金の問題ではなく年齢の問題だ。
家賃が上がり続ける中で収入は減る。審査は厳しくなる。住める場所の選択肢が狭まっていく。
今は借りられる。65歳を過ぎたら3人に1人が断られる現実がある。
第6章:このまま何もしなければ日本はこうなる
5年後。都市部の家賃が今より15〜20%上がっている。新築着工が減り続け供給不足が深刻化する。中古も高止まりが続く。新築も中古も買えない。賃貸も高い。逃げ場がなくなる。
10年後。団塊ジュニア世代が65歳に近づく。高齢単身世帯が急増する。賃貸を借りたくても借りられない高齢者が都市にあふれる。住宅難民が社会問題として表面化する。
20〜30年後。地方は空き家だらけ。都市部は住む場所がない。二極化が極限まで進む。持ち家がない高齢者が公営住宅・施設に流れ込む。その施設も不足する。
根本的な問題がある。少子化で建設業の職人が減る。家が建てられなくなる。供給が増えない。需要は都市部に集中し続ける。価格は上がり続ける。
これは予測ではなく、今起きていることの延長線上にある話だ。
第7章:では今、何をすべきか
答えは一つではない。人によって状況が違うからだ。
賃貸を選ぶ人間へ値上がりを織り込んだ資金計画を立てろ。今の家賃が10年後も同じだと思うな。老後に住む場所をどう確保するか、今から考えておけ。65歳を過ぎてから考えても遅い。
購入を考えている人間へ買うなら出口まで考えて買え。10年後に売れるか貸せるかを最初に考えろ。立地・管理状態・修繕積立金の状況を必ず確認しろ。買った瞬間ではなく売った瞬間に結果が出る。
どちらにも共通して言えること良い物件があったら迷わず買え。良い賃貸があったら迷わず借りろ。悩んでいる間に誰かが決める。
情報を持っている人間だけが選択肢を持てる時代になっている。知らないまま流されるのが一番のリスクだ。
何もしないことが、今一番危険な選択だ。
第8章:賃貸を選ぶことは正しい。だが何もしないことは違う
賃貸か購入かは性格と状況で決めればいい。賃貸を選ぶことを否定したいわけではない。
ただし今の市場で何が起きているかは知っておくべきだ。
賃貸を選ぶなら、値上がりを織り込んだ資金計画を立てろ。老後に住む場所の確保を今から考えておけ。
購入を考えるなら、出口まで考えて動け。買った瞬間ではなく売った瞬間に結果が出る。
何もしないことが一番のリスクだ。
良い物件があったら迷わず買え。同じように、良い賃貸があったら迷わず借りろ。悩んでいる間に誰かが決める。
出典:三菱地所リアルエステートサービス「賃貸マンション市場に関するアンケート調査(2025年第4四半期)」/日本賃貸住宅管理協会(2025年7月調査)/LIFULL HOME'Sマーケットレポート(2025年11月)
不動産業界実務経験20年による知見





