ニューヨーク大学の心理学者が、4つの実験で確かめたことです。
目標って、人に宣言したほうが達成できると思っていませんか?
宣言する人
「今年こそ、資格を取ります!」
黙ってやる人
「(言わずに、今日の分だけやろう)」
報告する人
「先週言った件、ここまで進みました」
続いたのは、3人目です。
そして、「目標を人に知られた人のほうが、知られなかった人より早く手を止めていた」ことも、実験で確かめられています。
本題に入る前に、ひとつだけお知らせを。
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名前はいまのままで入れます。では、本題に入ります。
1. 「宣言する人」は、11分早くやめていた
2009年、ニューヨーク大学の心理学者らの研究チームが発表した研究です。
4つの実験に、合計「168人」が参加しました。実験が行われたのは、ドイツの大学です。そのうちの1つを紹介します。
参加したのは、臨床心理士を目指している学生です。
まず、こんな目標を紙に書いてもらいました。
「治療の様子を撮ったビデオを見て、勉強する」
ここで、学生を2つのグループに分けます。
・書いた紙を、実験者がその場で読んで確認する(目標を人に知られたグループ)
・書いた紙を、誰にも読まれずに回収される(知られなかったグループ)
違いは、これだけです。
そのあと、実際にビデオを見てもらいました。見ていい時間は、最大「40分」。いつやめても構いません。
結果です。「絶対に臨床心理士になりたい」と強く思っている学生では、こうなりました。
・知られなかったグループ:「39.17分」
・知られたグループ:「27.95分」

目標を人に知られた学生は、約11分早く、見るのをやめていました。
「黙ってやる人」は、ほぼ最後まで続けていた
強く目指していて、知られなかった学生は、40分のうち39分、ほぼ最後まで見ています。
同じ研究チームは、法律家を目指す学生でも試しています。
こちらは、法律の問題を解く課題です。使える時間は45分。解きかけの1問は、時間をすぎても最後まで解けます。
・知られなかったグループ:「45.65分」
・知られたグループ:「41.52分」
ここでも、知られたグループのほうが早くやめていました。
宣言したわけでも、ほめられたわけでもありません。目標を、ただ人に「見られた」だけです。
それだけで、行動が減っていました。
2. なぜ、言っただけで満足してしまうのか
不思議な話です。目標を知られたら、「見られているから頑張ろう」となりそうなものです。なぜ、逆になったのか。
同じ研究の、4つ目の実験が答えを出しています。
法律家を目指す学生に、「これからやること」を3つ挙げてもらいました。
半分の学生には、それを実験者やほかの人の前で声に出して言ってもらいます。残りの半分は、言いません。
そのあとで、こう聞きました。
「今のあなたは、どのくらい法律家だと感じますか」
結果です。
・人前で言った学生:「4.19」
・言わなかった学生:「3.10」
人前で言った学生のほうが、「自分はもう法律家に近づいている」と感じていました。
まだ、何もしていないのに、です。
「言った」が「やった」に数えられる
研究チームの説明は、こうです。
「なりたい自分」に近づくには、行動を積み重ねるしかありません。
ところが、目標を人に知ってもらうと、頭の中では、それが「一歩進んだこと」として数えられてしまう。
言っただけで、少しなれた気分になる。すると、実際に手を動かす必要が、その分だけ小さく感じられます。
宣言する人が怠け者なのではありません。言った瞬間に、頭が先にごほうびを受け取ってしまうのです。
3. 1週間たっても、差は消えなかった
「その場だけの話でしょう」と思うかもしれません。
1つ目の実験は、1週間後まで追いかけています。
参加したのは、心理学を学ぶ学生「49人」です。勉強についての目標を2つ、紙に書いてもらいました。
たとえば、「統計をもっと勉強する」のような目標です。
そして、先ほどと同じように、実験者に読まれるグループと、読まれないグループに分けました。
1週間後、「その目標のために、何日行動しましたか」と聞きました。
結果です。
・知られなかったグループ:「2.70日」
・知られたグループ:「1.92日」
1週間たっても、知られたグループのほうが行動していませんでした。
ただし、効くのは「なりたい自分」の目標だけ
この研究には、大事な条件があります。
差がはっきり出たのは、「本気でその道を目指している人」だけでした。
臨床心理士の実験でも、「絶対になりたい」と強く思っている学生で、差が大きく出ています。そこまで思っていない学生では、「30.90分」と「30.68分」。ほぼ同じでした。
つまり、こういうことです。
・「牛乳を買って帰る」のような用事:人に言っても、行動は減らない
・「英語を話せる人になる」「副業で自立する」のような、なりたい自分の目標:人に言うと、行動が減りやすい
本気の目標ほど、言っただけで満足しやすい。皮肉な話です。
4. うまくいく想像も、力を抜いてしまう
宣言と似た仕組みが、もう1つ見つかっています。
2011年、ニューヨーク大学とドイツのハンブルク大学の研究チームが、4つの実験を発表しました。
参加者に、「うまくいった未来」をできるだけいい形で思い浮かべてもらいます。
そのあとで、体のエネルギーの高まりを測りました。指標にしたのは、血圧と、本人が感じる元気さです。
結果です。
うまくいった未来を思い浮かべた人は、ほかの想像をした人より、体のエネルギーが「下がって」いました。
1週間追いかけた実験では、エネルギーが下がった人ほど、その週に実際にやり遂げたことが少なくなっていました。
同じ研究者は、実験室の外でも確かめています。
・やせたい女性を「1年」追いかけた調査:やせた自分を明るく思い描いていた人ほど、実際に減った体重が少なかった
・股関節の手術を受けた患者の調査:回復した自分を明るく思い描いていた人ほど、「2週間後」の回復の評価が低かった
どちらも、「うまくいく」と強く思い描いた人のほうが、結果が出ていませんでした。
うまくいく想像は、気持ちがいいものです。でも、気持ちよくなった時点で、体は「もう終わった」と受け取ってしまう。
宣言も、うまくいく想像も、同じです。先に気分だけを受け取ると、動く力が残りません。
5. でも、「誰に話すか」で結果は逆になる
ここまで読むと、「目標は誰にも言わないのが正解」と思うかもしれません。
実は、そうとも言い切れません。
2019年、アメリカのオハイオ州立大学の研究チームが、反対の結果を出しています。
学生「171人」に、単純な作業をくり返してもらう実験です。作業の前に、自分で目標を決めてもらいました。
その目標を、誰に伝えるかで3つに分けています。
・自分より立場が上だと感じる相手に伝える
・自分より立場が下だと感じる相手に伝える
・誰にも伝えない
結果です。
立場が上だと感じる相手に伝えた学生は、目標へのこだわりが強くなり、成績も「上がって」いました。
立場が下だと感じる相手に伝えた学生は、誰にも伝えなかった学生と「変わりませんでした」。
別の調査では、学生「292人」を1学期のあいだ追いかけています。
ここでも、自分が尊敬する相手に成績の目標を話した学生ほど、目標にこだわり続け、実際の成績もよくなっていました。
理由は、「この人にがっかりされたくない」という気持ちです。
尊敬する相手に話すと、言って満足するどころか、「やらないとまずい」が強くなります。
この分野には、反対の結果もある
もう1つ、正直に書いておきます。
2025年には、「目標を人に話すと、周りからの助けが増えて、目標に向かいやすくなる」という研究も発表されています。
なので、「人に話すと必ず失敗する」とまでは言えません。ここまでの研究を合わせると、正確にはこうなります。
・話して、満足して終わる → 行動が減る
・尊敬する相手に話して、あとに引けなくなる → 行動が増える
・話して、助けをもらう → 行動が増える
話すこと自体が悪いのではありません。「話して終わり」が悪いのです。
6. 「報告する人」が、いちばん続く
では、話し方をどう変えればいいのか。
ヒントになるのが、2016年に発表された大きな分析です。
イギリスのシェフィールド大学などの研究チームが、「138の研究、合計1万9,951人」のデータをまとめました。
調べたのは、「進み具合を記録すると、目標は達成しやすくなるのか」です。
結果です。
進み具合を記録した人は、記録しなかった人より、目標を達成していました。
さらに、効果が大きくなる条件が2つありました。
・記録した結果を、人に報告したり公開したりする
・頭の中だけでなく、紙やアプリに書いて残す
ここが、宣言とのいちばんの違いです。
・宣言:「これから、やります」
・報告:「ここまで、やりました」

同じ「人に話す」でも、中身が逆です。
宣言は、やる前にごほうびを受け取ります。報告は、やった分しか話せません。
冒頭の3人目、「報告する人」がいちばん続くのは、このためです。
7. 「もし〜なら」で決めた人は、やり遂げる
最後に、宣言の代わりに使える方法を1つ紹介します。
2006年、ニューヨーク大学などの研究チームが、「94の研究」をまとめた分析です。
目標の立て方を、2つに分けて比べました。
・「運動します」と決める
・「もし19時に家に着いたら、そのまま着替えて10分歩く」と決める

2つ目のように、「もし〇〇になったら、〇〇する」の形で決めた人のほうが、目標をやり遂げていました。
効果の大きさは「0.65」。この種の研究としては、中くらいから大きめの効果です。
理由は、決めるのが「その場」ではなくなるからです。
「運動します」だけだと、いつやるかを、毎回その場で決めなければいけません。疲れている日は、「今日はいいか」になります。
「もし19時に家に着いたら」と先に決めておくと、19時に家に着いた時点で、もう迷う必要がありません。
人に宣言するより、自分との約束を細かく決める。そのほうが、行動は確実に増えていました。
明日からできること
① 目標は、やる前に言わない。やった分だけ言う
「来月から始めます」ではなく、「今週、3回やりました」と言う。言いたくなったら、先に1回やってからにしてください。
② 話すなら、尊敬している人に1人だけ
SNSで全員に言うより、「この人にがっかりされたくない」と思う相手に1人だけ伝える。研究で効いていたのは、立場が上だと感じる相手だけでした。
③ 「〇〇します」を、「もし〇〇なら〇〇する」に書き換える
「勉強します」を、「もし朝のコーヒーを入れたら、テキストを1ページ開く」に変える。きっかけになる場面を、毎日必ず起きることにするのがコツです。
④ 進み具合を、週に1回、数字で誰かに送る
「頑張っています」ではなく、「今週は4日できました」と数字で送る。記録して、人に報告すると、効果がいちばん大きくなっていました。
⑤ 言いたくなったら、「これは宣言か、報告か」と自分に聞く
これからの話なら、宣言です。もう終わった話なら、報告です。迷ったら、報告だけにします。
まとめ:続くのは、報告する人
目標は、宣言したほうが達成できる。
多くの人が、そう信じています。でも研究が示していたのは、「言っただけで、頭が先にごほうびを受け取ってしまう」ということでした。
宣言する人が、だらしないわけではありません。
本気でなりたいと思っている人ほど、言った瞬間に満足しやすい。そういう仕組みです。
そして、続いていたのは、宣言する人ではなく、報告する人でした。
10月は、下半期の目標を書かされて、言わされる時期です。
言わされた目標は、仕方ありません。
でも、そのあとに「ここまでやりました」を1回足すことは、自分で決められます。
もう1つだけ、書いておきます。
黙ってやっている人は、周りからは何もしていないように見えます。宣言していないので、誰にもほめられません。
でも、40分のうち39分、手を動かし続けたのは、その人たちでした。
ほめられないまま進んだ分は、ちゃんと残っています。
誰にも言わずにやった今日の1回から、始めてください。
最後に|次の一歩も、一緒に考えよう
副業も、同じです。
「副業を始めます」と言った日が、いちばん気持ちいい。そして、そこで止まってしまう人が多いです。
続いている人は、言う前に1つやっています。そして、やった分だけを話しています。
僕自身、SEの本業を続けたまま物販を始めて、5年続けてきました。
本業を続けながら副業の時間をどこで作ったか、始めてすぐにつまずいたところは、オープンチャットで共有しています。読むだけなら無料で、名前もいまのままで入れます🦊
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参照元
・ニューヨーク大学ほか(Psychological Science, 2009/目標を人に知られたときの行動、4つの実験・168人、実施はドイツの大学)
・ニューヨーク大学、ハンブルク大学(Journal of Experimental Social Psychology, 2011/うまくいく想像と体のエネルギー)
・Cognitive Therapy and Research(1991/減量と前向きな想像)、Journal of Personality and Social Psychology(2002/手術後の回復と前向きな想像)
・オハイオ州立大学(Journal of Applied Psychology, 2019/目標を話す相手の立場とこだわり)
・Personality and Social Psychology Bulletin(2025/目標を話すと周りの助けが増える)
・シェフィールド大学ほか(Psychological Bulletin, 2016/138の研究・1万9,951人の進み具合の記録)
・ニューヨーク大学ほか(Advances in Experimental Social Psychology, 2006/「もし〜なら」の計画、94の研究)
※ この記事の数字は、いずれも集団の傾向を示すものです。





