2社に見積もりを頼んだら、どちらも1000万円でした。
同じものが、200ドルで、朝までにできていました。
落合陽一さんが最近、実際に経験した話です。
「1000万か。50万でならないですか」
そう聞いたら、返ってきたのは「50万じゃダメですね」でした。
落合さんはその案件を、エージェントに頼みました。
朝起きたら、できていたそうです。
かかったのは、およそ200ドル。
自分でやれば2日。外に出せば数十万。
そう言われて、諦めた仕事はありませんか。
やらずに机の端に寄せた企画。見積もりを見て、社内に通すのをやめた案件。
その値札が、いま崩れています。
なぜ1000万円が200ドルになったのか。理由は落合さん自身が言っています。
車輪の再生産です。
大抵のサービスは車輪の再生産で、ちょっとだけ新しいところがあるだけ。だいたい99%くらいのコードは車輪の再生産で、そのためにかかるコストが数万ドルに落ちてしまっている、と。
Cコンパイラという、作るのがものすごく大変なものが、2万ドルくらいのAPI課金で作れたという話まで出てきています。
そして落合さんは、こうも言っています。
道具が3月には割と揃った。去年の12月にはできなかったことが、3月にはほぼほぼできるようになった。これは大きい違いだ、と。
99%は焼き直し。その焼き直しのコストが落ちた。道具は3月に割と揃った。
だから1000万円が200ドルになります。
魔法じゃなくて、値札の付け替えです。
数ヶ月前の常識で見積もりを取っている人は、もう古い値札を見ています。
どのくらいの速さで動いているのか。落合さん自身の一日を聞くと、体感が変わります。
飛行機を降りて、収録現場に来るまでの1時間半。その間、別の対談をしながら、1万6000行のコードが書けていたそうです。
人間が1日頑張って書ける量は、1000行くらい。
夜寝る前には3万2000行まで行くので、だいたい32倍。しかも年末までには100倍になる体感がある、と言っています。
画面はどうなっているか。落合さんの言い方だと、画面にエージェントをいっぱい開いて、同時にガチャガチャ働かせている。
収録中のその瞬間も、目の前で2エージェントが走っていました。
これをエンジニアの話だと思って読み飛ばすと、たぶん損をします。
提案書。競合の比較表。議事録から起こす報告。毎週の定例資料。
どれも「時間さえあれば自分でもできるけど、時間がないから外に出す」ものです。
その時間の単価が、いま崩れています。
落合さんは別の場面で、コストそのものの話もしています。
最新のAIモデルと同じものにアクセスするためのコストは、年間で900分の1くらいの速度で下がっている。だからちょっと前のGPTみたいなやつは、もう0円で使える、と。
働ける長さも変わった、と言います。
GPT-4の頃は、8分くらいでダメになっていた。今は自分のところで10時間くらい働ける。
朝動かしたら10時間後までずっと働いていて、しかも人間の100倍くらいのスピードで動く、と。
ここからは私の見方です。
安くなって、長く働けて、速い。
この3つを、1000万円が200ドルになった話の隣に並べてみてください。あれが特殊な成功例じゃなくて、これから普通に起きることに見えてきます。
ここからも私の見方です。
落合さんが99%と言っているのは、コードの話でした。
でも、先月あなたが作った提案書はどうでしょうか。
テンプレを開いて、数字を入れ替えて、言い回しを整えた。
あれは、何%が新しかったですか。
焼き直しの側にあるものは、値段が落ちます。落ちるというか、もう落ちています。
もう一つ、落合さんの言葉で刺さるものがあります。
ベーシックインカムでお金は配っていないけど、今、能力は配っている。
落合さんはこれを「再分配なのか」と捉えています。誰でもほぼ使えるし、新しいシステムを作ってと言えばAIが作れる。でも大抵の人は作らない、とも言っています。
そして、そこで終わらせません。
聞き手が「100倍にできる人と1000倍にできる人の差、レバレッジの差はありますよね」と振ると、落合さんはこう返しています。
そう。レバレッジの差は埋まってないんですよ、と。
能力は分配されたけど、レバレッジの差が埋まっていない。だからさらに格差を広げるんじゃないか、と。
しかも、ボトムラインにはものすごく能力の高いものを配り切っている。だからこれは結構残酷だ、と言います。
落合さんは、こういうセリフを「無慈悲」と表現しました。
「Claude Code使えばサービス作れるんだから、それでお金稼げばいいじゃん君も」
道具はあなたの手元にもうあります。だから稼げるはずですよね、と言われる時代です。
言われた側は、たまったものじゃありません。
でも、そう言われる状況そのものは、もう来ています。
じゃあどう構えるのか。ここで一番効くのが、落合さんが語ったパラダイムの転換です。
これまでは、人間と機械が協調して何かを作っていました。
でも今は、機械と協調して作ると遅くなる。だから自動で作られたものを見て、選ぶようになっている、と言います。
無限に曲が出てきたら、どの曲を選ぶかのほうが、作るより難しい。
作る係から、選ぶ係へ。
そしてもう一つ、身に覚えのある話が出てきます。
AIエージェントと一緒にコードを書くとき、一番のボトルネックは人間の承認だ、と落合さんは言います。人間が操作することが一番のボトルネックで、人間が操作しなければもっと早く済むのに、と。
これ、コードの話に限らないはずです。
承認。確認。決裁。
止まっているのは作業じゃなくて、たいてい誰かの受信箱です。
ここまでの話から、明日の頼み方を5ステップに整理します。
題材は1つに絞ります。毎月あなたが作っている、競合の比較表です。
ステップ1。焼き直しの側から選ぶ。
99%は車輪の再生産だ、と落合さんは言いました。先月と同じ体裁で数字だけが変わる比較表は、あなたの仕事で最初に外れる値札です。
ステップ2。夜、一晩を渡す。
「去年のフォーマットのまま、今月の数字に差し替えて、比較表を3パターン作っておいて」と頼んで、寝ます。落合さんのところでAIは10時間働くそうです。寝ている間の時間は、だいたい足ります。
ステップ3。1本ずつ直させず、並べて走らせる。
1案を完璧に仕上げてもらってから直すと、往復のたびにあなたが待ちます。3パターンを同時に走らせて、朝まとめて見る。
ステップ4。途中の確認をやめる。
1項目ごとに「これでいいですか」と聞かせない。最後まで走らせてから見る。1回ごとに確認を挟む限り、あなたが渋滞の原因です。
ステップ5。朝、3案を並べて1本選ぶ。
作り直さないで、選ぶ。作る側の椅子から、選ぶ側の椅子に座り直します。
比較表で通ったら、次は議事録から起こす報告に、同じ5つを当ててみてください。
1000万円が200ドルになる保証はしません。でも、桁が変わる案件が、手元に1つはあるはずです。
急ぐ理由もあります。
落合さんは、エンジニアのコーディングタスクは完全に今年中になくなるだろう、と言っています。
プログラムを書くという能力はほぼなくなって、誰でも作れるようになる。エントリージョブのエンジニア職が消えるのは必然だ、とも。
来年の話じゃありません。今年中の話として語られています。
最後に、煽って終わりたくないので、落合さんが置いていった一番いい話をします。
開発は楽になるから、誰でもポケモンのゲームは作れるようになる。
でも、パチモンのポケモンをプレイしたい人はいない。
全部が値崩れするわけじゃない、という話です。
複製できるものは、値札が壊れます。焼き直しの提案書も、テンプレの資料も、車輪の再生産も、200ドルの側に落ちていきます。
でも複製できないものは、値段を保ちます。
育ててきたIP。あなたにしか書けない判断。積み上げてきた信用。あの人に頼みたい、という理由。
落合さんは、AIバブルが弾けてもその後の世界は弾けない、とも言っています。
鉄道も、運河も、光ファイバーも、インフラを敷いた人は儲からなかった。でも安くなったおかげで、産業革命が完成し、YouTubeが出てきた。
供給過剰の後に、本番が来る。
だから道具の値段が落ちること自体は、たぶん怖い話じゃありません。
怖いのは、こちらのほうです。
AIエージェントは全世界の人に配られていて、労働生産性でいえば、みんなが圧倒的な生産性を持っている状態にすごく近い。
なのに新しいものが出てこないのは、それで新しいものを作ろうとする人が極めて少ないからかもしれない。
落合さんはそう言って、これを「人間が今突きつけられている本質的な問題」と呼んでいます。
配られた側にいるのは、あなたも同じです。
だから明日、決めるのは1つだけでいい。
自分の仕事のうち、どこまでを200ドルの側に放り込んで、どこを自分の手に残すのか。
パチモンにならない部分を、ちゃんと知っている人だけが、値札を守れます。





