あなたの仕事が、数年で消えるかもしれません。
これを言っているのは、煽り屋でもインフルエンサーでもありません。OpenAIの内側で、AIの未来を予測する仕事をしていた本人です。
名前はダニエル・ココタイロ。2022年にOpenAIに入り、そこで数年先に何が起こるかを予測する仕事をしていました。今はAI Futures Projectという小さな非営利団体を運営し、AIの未来予測に専念しています。
彼はあるインタビューでこう言っています。
誰もが自分の仕事が失われることを恐れるべきだ。タクシー運転手だけじゃない。法律上どうしても人間しかできない一部の仕事を除いて、ほとんど全員が対象になる。
正直、最初に読んだ時は僕も半信半疑でした。でも彼の経歴と、これから話す証言を知ると、簡単には笑えなくなります。
3億円を捨てる覚悟で口止めを拒否した男
ダニエルがOpenAIを辞めるとき、退職の書類にはこんな条項がありました。
会社を批判しない。そしてこの契約の存在自体を誰にも話さない。
これに署名しないと、当時の彼の資産の約80パーセントに相当する株式、日本円で3億円近くを失うことになっていました。
彼は妻と1、2ヶ月悩み、弁護士にも相談した末に、署名を拒否しました。お金より大事なことがある、そう判断したそうです。
この話がネットで広まると、ちょっとした騒動になりました。社内でも社員たちが経営陣に、なぜこんな条項があるのかと問い詰め始め、会社側は方針を撤回。結果としてダニエルはお金も受け取れることになりました。
でも彼がここまでして伝えたかったのは、お金の話ではありません。彼が見ていた景色はこうでした。
世界の大半は、居眠り運転をしている状態にある。AIで何が起きているか、ほとんど誰も気づいていない。
企業は表向き、控えめで期待感を煽るような発表しかしません。本当に何が数年後に起きるかまでは、あまり語りたがらないというのが、彼が内部で感じていたことでした。
1年で売上60倍、パラメータは100倍という異常な速さ
ダニエルが語った数字は、正直かなり異常です。
Anthropicという会社は、1年前は年間およそ10億ドルの売上でした。それが今は、およそ600億ドル。1年でおよそ60倍という成長です。これはスタートアップとしても異例で、これほどの規模の会社としては歴史上もっとも速い成長かもしれない、と彼は言います。
この成長がこのまま続くとは彼も思っていません。でも、かなり減速したとしても、2030年ごろには経済全体に近い規模になる勢いだ、というのが彼の見立てです。
AIの中身であるパラメータの数も、2020年ごろは1750億ほどでした。それが今では10兆ほど。わずか6年で約100倍という規模になっています。
ダニエルが強調していたのは、あと何年でそれが来るかという年数そのものより、このトレンドの速さそのものが大事だという視点でした。年数の予測は外れることもある。でも、この加速のペースは今のところ止まっていない、と。
なぜCEOたちはブレーキを踏まないのか
ここまで危うい話を、企業のトップたちが知らないはずはありません。ダニエルは、彼らはむしろ本気で分かっている、と言います。
では、なぜ止まらないのか。
答えは単純な競争心理でした。サム・アルトマン、ダリオ・アモデイ、イーロン・マスク、それぞれが、相手が先にそこへ到達したら独裁的な力を持ってしまうかもしれない、と本気で恐れているというのです。だから互いを信用できず、自分が先に着くしかないと考えて走り続けている。
そしてこれらの企業が今狙っているのは、コーディングの自動化だけではありません。研究のアイデア出しから実験、結果の分析まで、研究プロセス全体を自動化しようとしています。つまり、いずれ人間の従業員をほとんど必要としない状態を目指しているということです。
Anthropicのダリオはこれを、巨大なデータセンターの中の天才の国と呼びました。ダニエルはこれに異を唱え、正確には天才の軍隊と呼ぶべきだと言います。多様な個性を持つ存在の集まりではなく、同じモデルのコピーが並び、企業の指示にすべて従う軍隊のようなものだから、というのが彼の理屈でした。
企業側の本音は、たぶん大丈夫、その大丈夫を実現する一番の方法は自分たちが主導権を握ることだ、というものです。ダニエルはこれを、都合の良い自己正当化にすぎないと見ています。
70パーセントが最悪の結末。でも彼は絶望屋ではない
ダニエルは、このまま何も変わらなければ70パーセントの確率でとても恐ろしい結末に向かう、と語っています。
ただ、ここは丁寧に補足が必要なところです。これは人類がそのまま絶滅するという意味ではなく、AIが人間の手を離れて主導権を握ってしまうような大きな破局が起きる確率、という意味だと彼自身が説明しています。
彼が挙げていたリスクは大きく二つです。ひとつは、AIが人間の管理下から外れてしまう制御の喪失。もうひとつは、ごく一部の企業や個人だけが超高性能なAIを握ってしまう権力の集中です。どちらも、AI業界が生まれる何十年も前から議論されてきた、根の深い懸念だと彼は言います。今出てきた話ではない、ということです。
同時に、彼はただの悲観論者ではありません。自分の予測が全部外れてくれたら最高に嬉しい、とも語っています。ちゃんと問題を解決できれば、AIは全員にとって素晴らしいものになる可能性もある、と。楽観でも悲観でもなく、来るかもしれないものを、まず正しく見ようとしているのが彼の姿勢でした。
言葉ではなく行動で判断せよ、を自分の仕事に置き換える
ダニエルが繰り返していた言葉があります。
人は、その人が何を言うかではなく、何をするかで判断すべきだ。
企業のトップが公の場で語る言葉と、実際にやっていることの間には、しばしば大きな差があります。彼はサム・アルトマンにも実際に会って、そのことを強く感じたと語っていました。
これは僕たちの仕事にもそのまま使える視点だと思います。取引先や業界の景気の良い約束、SNSで流れてくる期待感たっぷりの発表を、そのまま鵜呑みにしない。実際に動いている数字とその変化のスピードで、自分の立ち位置を確かめる。
ダニエルは自分の子どもについても、これ以上は増やさない方がいいと妻に話したと明かしています。何が来るか分からなすぎる、と。そこまでの重さを持って語られている話だということは、忘れずにいたいところです。
だからといって、僕たちが今できることは、怖がって固まることではありません。自分の仕事のどの部分が、AIによってどれくらいのスピードで変わりそうかを一度書き出してみる。そして、今のうちに動かせることを一つだけ決める。それだけで、漠然とした不安は、輪郭のある備えに変わります。
この記事で紹介した証言は、The Diary Of A CEOというチャンネルでの、ダニエル・ココタイロ本人へのインタビューが元になっています。彼が実際にどんな表情で、どんな重さでこれを語っていたか、気になる方はぜひ元の映像も見てみてください。





