「今の話は、視野を広げる話?それとも視座の話?」
「てか視座が高くなれば、自動的に視野も広くならね?」
みたいに疑問が絶えなかったので、コンサル時代の先輩、MBAでお世話になった教授、経営者の方々に都度質問してまわっていました。
そのときのメモを備忘録がてら整理したものです。

視点の多さ:どれだけバランス感を持って評価・判断できるか
- 視点とは、対象を評価・判断するときに用いる観点の数とバランス感のことです。売上、利益率、顧客満足、オペレーション効率、リスク、ブランド、法規制、人材育成。これらの観点を総合的にふまえたうえで何かを決めたり、評価したり、物申したりできる人が、いわゆる「視点が多い人」です。
- 視点が多いと、バランス感覚が優れた人の立ち回りができるようになります。角を立てないように立ち回れる、同じ施策を検討する際に短期・中期・長期の効果を切り分けられる、複数のことを優先度づけしながら捌ける、といった具合です。
視野の広さ:自分以外のことをどれだけ捉えられているか
- 視野とは、自分が対象として捉えている範囲の広さのことです。自分の作業だけを見ているのか、同じチームの流れまで見ているのか、隣の部署やサプライヤーまで含めて見ているのか。どこまで範囲を広く見るかによって、問題の原因や影響をより正しく捉えられるようになります。
- 例えば、あなたがシステム開発会社の営業担当だったとします。業績がなかなか良くならないときに「売上が上がらないのは、営業の受注率が低いせいだ」という話になって、営業スタッフ向けに研修をやったとしましょう。でも実は業績が上がらない原因が「エンジニアの納品スピード」だったとすると、受注率をいくら上げても無駄なんですよね。視野が狭いと、こういうことをやっちゃいます。
↓こういうときに

営業の受注率を上げるために研修を頑張ったところで↓のようにしかなりません。

- 視野が広い人、自チームだけでなく他チームや他部署まで考えられる人は、「システム納品までの流れを俯瞰すると、詰まっているのはエンジニアチームだな」と正しい問題定義ができます。
視座の高さ:どの立場の高さで物事を考えるか
- 視座とは、思考を置く立場の高さのことです。いち担当者の立場だけで考えるなら視座は低く、部署・全社・業界・社会という高い立場で考えられるほど視座は高くなります。
- 新人であっても、「この作業は会社の顧客価値のどこにつながるのか」「業界のトレンドに照らすと我々の強みはXXXだから、今のうちにXXXをやったほうがよいのではないか」と考えられるなら、その人の視座は高いと言えます。逆に、役員であっても自部門の数字だけで物事を捉えるなら、思考上の視座は低いままです。
8タイプの愉快な仲間たち
ちょっと誇張していますが、これまで会ったことがある人を視点・視野・視座で整理すると、次の8タイプに分類できそうです。

- ①井の中の新人(視座低い×視野狭い×視点少ない):考える立場は「自分の作業」どまりで、見えているのは自分の机の上と目の前のタスクだけです。判断基準は「言われた通りにできたか」くらい。フォーマットを正確に埋めたり締め切りを守ったりはできるんですが、「そもそもこの資料って誰が何のために使うの?」という目的意識が持てません。真面目なのは素晴らしいけど、ちょっと井の中の蛙状態です。
- ②意識高いだけの人(視座高い×視野狭い×視点少ない):会社全体とか社会貢献とか大きな立場から語れるのですが、実際に見えている範囲は限定的で、判断基準も単純です。「イノベーションが大事だ!」「顧客中心でいこう!」とか言うけど、じゃあ具体的にどのプロセスをどう変えるの?どの指標で測るの?って聞くと答えられません。旗を振るのは上手だけど現場や制約が見えていないから空回り。まあ、でもここがスタートですよね。視座が高いだけでも、可愛がりたくなります。
- ③ニッチな職人(視座低い×視野狭い×視点多い):視座は自分の持ち場に限定されていて、視野も狭いままです。でも視点だけは豊富で、自分の担当範囲という狭い世界の中では、品質はどうか、効率は上げられないか、安全性は?顧客の受け止めは?と、いろんな観点から改善を重ねます。資料の体裁とか可読性とか、局所的な最適化はもう職人芸の域です。ただ他部署との連携や顧客の体験全体は見えていないので、せっかくの改善が組織全体に波及しないのがもったいないところです。
- ④その道のプロ(視座高い×視野狭い×視点多い):ニッチな職人の進化版です。視座は経営や業界レベルで考えられるのですが、視野は自分の専門分野だけに絞っていて、その代わりその範囲では視点がめちゃくちゃ豊富です。財務面、顧客動向、競合分析、規制、技術トレンドと、自分の専門領域ならあらゆる観点から深く分析して本質を突いた提案ができます。隣接分野や新規事業など横のつながりが必要な話になると急に動きが鈍くなるのですが、あえてこのポジションを取っている人もいますし、これも1つのキャリアのロールモデルだよな、とも思います。かっこいいですもん。
- ⑤おせっかいウォッチャー(視座低い×視野広い×視点少ない):おせっかいだけど傍観者よね、という少し矛盾した要素をはらんでいる存在です。視座は自分やチームレベルにとどまっているけど、誰が詰まっているか、どの工程で遅れが出ているか、他部署の状況はどうか、とアンテナの範囲は結構広いんです。でも視点が少ないから判断基準が「早いか遅いか」「困ってるかどうか」みたいな単純なものしかなく、解決策も「みんな頑張ろう!」「人を増やそう!」と表面的になっちゃいます。
- ⑥クソ優秀なサイコパス(視座高い×視野広い×視点少ない):会社全体や業界を俯瞰できていて、売上、競合、市場といろんなものが見えています。でも視点が偏っていて、例えば「短期の数字」だけで判断してしまうんですよね。確かに結果は出るんですよ。でも顧客満足とか従業員の幸せとか、ブランド価値とか、そういう他の観点を無視しちゃうから、長期的には会社をボロボロにしちゃう危険があります。もったいないというか、危険なタイプです。
- ⑦気が利くサポーター(視座低い×視野広い×視点多い):視座は自分やチームの立場なんですが、視野はチーム内外に広がっていて、視点も複数持っている器用なタイプです。進捗状況、品質、顧客の反応、メンバーの負荷と、いろんな範囲のいろんな観点を同時に把握して、段取りの組み替えや資料の修正をパパッとできちゃいます。上司の右腕として根回しや調整を先回りでやってくれる頼もしい存在ですが、会社全体の戦略や長期的な方針と結びつけて考えるのは苦手です。
- ⑧スーパーマン(視座高い×視野広い×視点多い):視座は経営・社会レベルにあって、視野は現場から業界まで全部見通せていて、視点も財務、顧客、従業員、リスク、ブランドなど状況に応じて使い分けられます。まさに理想形です。唯一の注意点をあえて申し上げると、何でも自分でできちゃうから、つい細部まで手を出しちゃうこと。それだとチームが育たないし、組織も大きくなれません。いかに任せるか、いかに仕組み化するか、それがこのレベルの人の課題になります。
視点の増やし方:偉人と名経営者の視点を徹底的にパクる
- 1つ目は、ありきたりですが本を読むことです。本を読んだ数だけ、著者の視点を己の脳内にストックできますから。自分だけで経験できることなんて限られているのですから、歴史上の偉人とか名経営者たちの視点を徹底的にパクりましょう。例えば、僕は次のようなマップを埋める感覚で、本を読んで読書メモを取っています。

- 2つ目は、厳しい上司を見つけて、ボコボコにフィードバックをもらうこと。上司じゃなくともお客様でもいいです。すると自分で資料を作ったときに「鬼上司のAさんだったら何を突っこんでくるかな?」「鉄人Bさんであれば、何を質問してくるかな?」「あの厳しかったクライアントであれば、何を指摘なさるだろうか?」と、厳しい人たちの視点で自分の資料をセルフチェックできます。お世話になった厳しい方々の人数ともらった指摘の数が、視点の数です。
視野の広げ方:一つ前と一つ後ろの工程を言語化する
- 自分が触っている工程の一つ前と一つ後ろについて「そこで何が起きているか、誰が何を指標に動いているか」を書き出してみてください。例えば営業数字が伸びないなら、前工程のプロダクト開発と後工程のカスタマーサクセスに目を向け、仕様の変更や引き継ぎの質が与える影響を具体的に拾いに行きます。この詳しいやり方は『ザ・ゴール』を読むとイメージしやすいと思います。漫画版でもいいと思いますよ。僕も漫画版から入りました。
視座の高め方:「2つ上の立場」で考える
- 視座を上げるために、むかし先輩に教わって今もやっているのが「2つ上の立場の視点に立つ」ということです。1つ上だと近すぎて変化が小さく、3つ上だと遠すぎて現実味がありません。自分が一般社員なら課長の視点で、課長なら部長の視点で、部長なら役員の視点で考えてみます。この2段階ジャンプが、視座を上げるのにちょうどいい距離感なんです。
- やり方の1つ目は、「上司は、その上司に何を報告したがっているか」を考えること。課長は部長に何を伝えたいのか、部長は役員に何をアピールしたいのか。上司が上に報告したいであろうことを先回りして準備できれば、そりゃ重宝されるわけです。
- 2つ目は、偉い人たちの会議の議事録を読んでみること。どんな議論がされているのか、どんな数字が重視されているのか、どんな課題が話題になっているのか。会社の上層部がどんな視座で物事を見ているかが具体的にわかり、自分の仕事が最終的にどこにつながっているのかリアルに感じられるようになります。
- 3つ目は、2つ上の上司と直接話しちゃいましょう。意外かもしれませんが、偉い人って現場の声を聞きたがっていることが多いんです。「部下の部下」から直接話しかけられると、むしろ喜ぶ人も少なくありません。ランチの時間とかエレベーターで一緒になったときとか、ちょっとした機会を活かして、その人がどんなことを考えているのか聞いてみましょう。
けっこうやれそうじゃないですか?
でも、やっている人、周りにいますか?
あんまりいないんですよ。
なので、やってみるとチャンスだったりします。
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