AIに仕事を奪われる。
その不安、たぶん今この瞬間も、頭の片隅にありますよね。
僕もそうでした。速く、たくさん作れる人が生き残る。そう思ってたんです。
でも、ある人の一言で、その前提がまるごとひっくり返りました。
エドゥアルド・サレスさん。
メキシコのビジュアルメディア「ピクトライン」の共同創業者。
元Google、元Nikeのクリエイティブディレクターです。
カンヌライオンズとエミー賞を受賞して、Forbesの「世界で最もクリエイティブなメキシコ人30人」にも選ばれてる人。
その人が、テレビ番組でこう聞かれてました。
「AIに仕事を奪われますか?」
サレスさんの答えは、はっきり「そうは思わない」でした。
でも、ただ安心させて終わり、じゃないんです。
続けて、こう言ってました。
「AI時代の勝者は、より多く作る人でも、より速く作る人でもない。意味を作る人だ」と。
...これ、けっこう怖い話なんですよね。
だって、速く・多く作るって、AIが一番得意なことじゃないですか。
つまり僕らは、AIが最強の土俵で、わざわざ殴り合おうとしてる。
そりゃ、勝てないですよね。
じゃあ、なんで速さと量が、もう価値にならないのか。
サレスさんの説明が、すごく腑に落ちました。
今って、情報とコンテンツが過剰に作られすぎてる時代なんです。
動画も、画像も、文章も、多すぎる。
しかもそこにAIが乗っかって、量産がさらに加速してる。
だから、とサレスさんは言います。
「人はもう、これ以上コンテンツを欲しがっていない」
若い世代の集中力が低いって、よく言われますよね。
でもサレスさんは「あれは世代のせいじゃない」と言い切ってました。
情報が多すぎて、脳が処理しきれてないだけ。
つまり、脳がサバイバルモードに入ってるだけ、と。
...言われてみれば、自分もそうかも、って思いました。
だから、この過剰の時代に効くのは、量でも速さでもない。
「感情的なつながり」だけなんです。
AIで、画像も作れる。人も作れる。曲だって作れる。
でも、そこに感情的なつながりはない。
サレスさんいわく「それはただの道具にすぎない」。
で、ここが一番刺さったんですけど。
その人は、世界に一人しかいないんですよね。
見てる人は、その情報やイラストが欲しいわけじゃない。
その人と、その存在と、つながりたいだけ。
それが「ヒューマンタッチ」だと。
じゃあ、僕らの武器は何なのか。
「意味を作れ」って言われても、正直ふわっとしますよね。
意味って何やねん、と。
でもサレスさん、ここをちゃんと具体で定義してくれてました。
創造的なアイデアとは、「価値を生む、新しい組み合わせ」のこと。
これだけだと、まだピンと来ない。
だから彼は、その場でイラストを描きながら説明してくれました。
人間と、魚。
この2つを組み合わせると、何になるか。
...人魚ですよね。
人類は何千年も前に、この組み合わせで新しい生き物を生み出した。
サレスさんは「日本語だと漢字2つを足すだけで人魚になる、それが好きだ」とも言ってました。
で、次。
人魚と、お姫様を組み合わせる。
そうすると「リトル・マーメイド」になる。
さらにそのリトル・マーメイドを、スタジオジブリと組み合わせたら?
...「ポニョ」なんです。
要素を組み合わせて、新しい要素を作る。
それをまた別の要素と組み合わせる。
創造って、才能とかセンスの話じゃなくて、この繰り返しなんですよね。
で、サレスさん。
この「組み合わせでアイデアを生む」やり方を、ちゃんと手順にしてくれてました。
画期的なアイデアを生む、6つのステップ。
彼の著書に書いてある、発想の順番です。
一つ目は、問題を決めること。
「なんでも作れる」って、実は一番動けない状態なんですよね。
可能性が広すぎると、人は迷子になる。
全部できるは、何者でもないと同じだから。
サレスさんは「すべてであり、何でもない」と言ってました。
だからまず、「これを作る」と線を引く。
そこで初めて、進む方角が生まれるんです。
二つ目は、リサーチ。
作りたい分野に、今なにがあるのかを調べる。
どれが流行って、どれがコケてるのか。
「ひらめきは、勝手には来ない。自分で作るものだ」と。
YouTuberは山ほど動画を見てるし、作家は山ほど本を読んでる。
材料がないと、そもそも組み合わせられないんですよね。
三つ目は、探索。
作りたいものと、一見関係ないものを持ってくる。
全然違う国の、全然違う畑のやり方を、覗きにいく。
サレスさんの言葉が、また刺さりました。
「創造は、近い2点じゃなく、遠い点をつなぐところにある」
近すぎる組み合わせなんて、誰でも思いつくから。
そして、ここで一回、休む。
これはステップじゃないけど、すごく大事な部分だと言ってました。
この「休む」の正体は、後でちゃんと話します。
四つ目で、やっと組み合わせる。
さっきの人魚やポニョが、まさにこれです。
五つ目が、試すこと。
六つ目が、実際にやること。
...この後半の2つが、めちゃくちゃ大事なんですよね。
そして、ここが本題です。
その組み合わせの材料の中に、実は「自分自身」が入ってる。
自分の文化、生まれた場所、これまでの人生経験。
好きなもの、大事にしてること。
それが方程式に入るから、人によってアイデアが違うんです。
サレスさんが出すアイデアと、あなたが出すアイデアは、絶対に同じにならない。
文脈も、文化も、出自も、違うから。
そして、これがAIには入れられない。
リサーチなら、AIに任せられます。
「今あるアプリを10個挙げて」とか、そういうのは得意ですから。
でも「自分を入れる」ことだけは、AIには代われない。
サレスさんの言葉が、しびれました。
「AIはむしろ、なぜ人間が特別なのかを教えてくれる」
アイデアは、データ以上のもの。
本当に響くアイデアって、外側の組み合わせだけじゃないんです。
「自分から出てくるもの」が入ってるから、響く。
で、さっきの五つ目と六つ目のステップ。試すことと、やること。
ここが、想像以上に大事なんです。
意味って、頭の中にあるだけじゃ、価値ゼロなんですよ。
サレスさんはこう言い切ってました。
「現実世界に存在しないアイデアには、何の価値もない」
アイデアに価値が出るのは、それが「存在する」時だけ。
多くの人は、失敗が怖くて試さないんですよね。
うまくいかなかったらどうしよう、誰にも刺さらなかったら、って。
でも、まずは一番安く、一番速い方法で試せ、とサレスさんは言います。
刺されば、伸ばせばいい。
無反応なら、そこから学んで、やり方を変えてもう一回。
やってみないと、そのアイデアが動くかどうかは、誰にも分からない。
「アイデアが動くか知る唯一の方法は、やってみることだ」と。
これが、最後の六つ目でした。
そしてもう一つ、AIとの決定的な差があります。
休めるのも、遊べるのも、人間だけ。
さっき「後で話す」と言った、あの「休む」です。
サレスさんは、休むことをすごく大事にしてました。
アイデアって、机で粘ってる時には降りてこないんですよね。
ニュートンがリンゴでひらめいたのも、大学の机じゃない。
木の下で、くつろいでる時でしたよね。
人は、リラックスしてる時に、頭の中の固い接続がぐにゃぐにゃに緩む。
「1+1=2」みたいなガチガチの結びつきが、揺らぐ。
すると脳が勝手に「これとこれ、組み合わせたら?」と動き出す。
散歩中や、お風呂で、急にひらめくあの感じ。
あれは偶然じゃなくて、休んだ脳が組み合わせを作ってる瞬間なんです。
でもAIは、これができない。
プロンプトを止めれば、考えるのをやめる。
電源を切れば、そこで止まる。
人間だけが、休みながら考えられる。
遊べるのも、人間だけ。
サレスさんは「遊びも、休息の一部だ」と言ってました。
ここまで聞いて、僕の中で結論が出ました。
速さと本数で、AIと張り合うのは、もうやめよう。
そこは、どうやっても勝てない土俵なんです。
これからは、関連性が「心のある方」へ動いていく。
誰が一番速く情報をくれるか、じゃない。
どの人、どの存在に、感情的につながってるか。
そこに、人が集まる。
サレスさんの戦略も、まさにそこでした。
キャラクターや人柄で、まず感情的なつながりを作る。
そのキャラが情報を届ければ、それは「ただのネットの情報」じゃなくなる。
「自分が大事に思うものからの情報」になる。
同じ情報でも、届き方がまるで変わるんです。
だから、明日からでいい。
速さで消耗するのを、少しずつやめてみてください。
その代わりに、あなたの文化、あなたの経験、あなたの人柄。
そこからしか出てこない意味を、発信に乗せていく。
それは、AIには絶対に量産できないものです。
「勝つのは、速く量産する人じゃない。意味を作る人だ」
そして、代わりが利かないのも、その人だけ。
エミー賞まで獲った元Google/Nikeクリエイティブディレクターの、結論でした。





