いま起業するなら、どの市場を選びますか。
この質問に「もうAI一択」と即答した人がいます。
PayPayの立ち上げを仕掛けて、楽天イーグルスの創業にも関わった、元ヤフー社長の小澤隆生さん。対談動画でこの話をしていて、正直めちゃくちゃ刺さったので、今日は僕なりにまとめてみます。
とはいえ、こう思いませんか。
「AIはシリコンバレーの企業がどんどん先に行ってる。日本で今からやっても、後発で無理でしょ」
対談でも聞き手が同じ疑問をぶつけてました。で、小澤さんの答えは「全くそう思わない」。日本でもAI一択だ、と言い切るんです。
理由がシンプルで。
「これはインターネットが出てきた時と一緒」なんだそうです。
インターネットが生まれたのは93年、94年ごろ。小澤さん自身がeコマースを始めたのは97年からで、当時としてはかなり早い方。それでも楽天もヤフーも後から育ったし、今でも新しいネット企業はボコボコ生まれてます。
車の話も面白くて。
最初の車は、蒸気機関を載せた馬車みたいなものでした。そこから100年以上経って、電気自動車が出てきて、当時は誰も想像しなかったカーナビなんて産業まで生まれてる。
AIはそれくらい社会を大きく変えるもので、「ここから20年から30年は、AIによってとことん世の中が変わる」と。
5年後には5年後の新しい事業が生まれて、10年後には10年後の新しい事業が生まれる。
だから、今から入っても遅くない。
ここでひとつ、大事な注釈があります。
「AI一択」といっても、ChatGPTみたいなものを自分で作れ、という話ではありません。プラットフォーマーになれとは言ってないんです。
小澤さんが挙げていたのは、まさかのお団子屋さんの例でした。
既存のお団子屋さんに勝ちたいなら、製造や販売の裏側でAIをとことん活用する。そうすると「コストが10分の1になるから、一気に勝てる」と。
つまり「何々×AI」。
主役はAIじゃなくて、「何々」の方なんですよね。
実際、日本のスタートアップのピッチイベントを見に行ったら、法律の手続き×AI、空き物件×AIと、登壇者が全員「何か×AI」だったそうです。
じゃあ、みんながやってる中に今から入っても遅くないのか。
遅くない、というのが小澤さんの答えでした。テクノロジーの進化が早すぎて、今この瞬間の勝ち筋が明日には変わる世界。だから先行者の貯金が効きにくいんです。
ただし、条件が2つある。
1つは、新しい技術を毎日試して、実装し続けること。
もう1つが本質的で、「何々×AI」の「何々」をどれだけ深く理解しているか。
お団子屋さんの本質は、AIを使うことじゃありません。美味しいお団子を作ることです。
美味しいお団子を作った上で、工程の一部にAIを入れてコストを下げる。相手が100で、こっちが120のものを出せれば、勝負として成立する。
で、この理屈をひっくり返すと、面白いことに気づきます。
一番チャンスがあるのは、実はすでに「何々」でうまくいってる会社なんですよ。
小澤さんも「既存企業の経営者がAIをうまく使うことで、バカみたいに成長する世界が来る」「でっかい事業をやってる人は、早く気づいてください」と声を大にしてました。
インターネットの時も同じことが起きていて、うまく使った証券会社は生き延びたし、そうじゃないところは潰れていった。
対談に同席していた投資家の方も、ホテルの値付けを例に挙げてました。
今でもホテルの価格って、支配人が「隣が8500円だから、うちは8300円でドリンク無料にしよう」みたいに属人的に決めてる世界らしいんです。ここはAIの仕組みで圧倒的に変えられる、と。
あなたの業界にも、こういう「人力のまま残ってる工程」、ありませんか。
ここまでが市場の話。
で、後半はもっと僕らに身近な話でした。
テーマは「凡人が磨くべきビジネススキル」。
小澤さんの答えは、意外なほど地味です。
「人の行動には理由がある」
ビジネ一発屋にならないためには、再現性が要ります。たまたま当たったじゃなくて、理由を知った上で成功したい。
天才はこのプロセスをすっ飛ばして「こうなんだよ」と正解を出しちゃう。でも僕ら凡人は、人がなぜそう動くのかを考え続けることで、本質を見抜く力を後天的に鍛えられる。
この「鍛えられる」ってところが救いなんですよね。
具体例が秀逸でした。
小澤さんがネットで弁当を売り始めたときの話です。
まず、モールで売れてる弁当の1位から10位をじっと観察した。すると、マーケティングとして機能してる店が選ばれてるわけじゃなかったそうです。
選ばれてたのは、めちゃめちゃ美味しそうに写真を撮ってる店。
当たり前ですよね。ネットでは味見ができないんだから、買う側は「美味しそうに見えるもの」を選ぶしかない。
でも、弁当屋さんは美味しい弁当を「作る」ことに死ぬほど頑張ってる。ネット上でそれを「伝える」ことには、力を入れてない。
だから小澤さんは、美味しい弁当を作った上で、写真を綺麗に撮って、料亭っぽい店名をつけて、折箱にまでこだわった。
「美味しいものを作る」と「美味しそうに見せる」を5対5でやる。
人の行動理由から逆算すると、力点の置き方がこう変わるんです。
この考え方の極めつけが、PayPayでした。
サービスを作る前にユーザーインタビューをしたら、99%が「こんなの面倒くさい、使わない」と答えたそうです。
マーケティングの常識で言えば、やらない一択。
でも小澤さんは中国に行って、現金を持たずに3日間過ごしてみた。QRコード決済だけで普通に生きていけたし、帰るころには現金を触りたくなくなっていた。
そこで確信します。
「みんな、知らないだけだ。人は5回使ったら大丈夫」
だったら、いくらかかってもいいから5回使ってもらおう。あの100億円キャンペーンの裏には、この行動理由の読みがあったんです。
社内で「こんなの流行るんですか」と言われたときの説得も、行動理由ベースでした。
お釣りが要るからレジに現金を置く。レジに現金があるから強盗が来る。小銭があるから万引きされる。キャッシュレスなら証拠が残るからやられにくい。
「お釣りのない世界を作るぞ」で、社員が納得していったそうです。
アンケートの答えは「使わない」。でも実際の行動は「5回使えば手放せなくなる」。
人の言葉じゃなくて、行動の理由を見る。ここまでやるから、再現性が生まれる。
これ、僕らの仕事でもそのまま使えると思うんです。
資料でも商品ページでも提案書でも、中身を「作る」ことには頑張るのに、相手に「伝わるように見せる」ことには力を入れてない。そういう場面、結構多くないですか。
読み手がなぜそれを選ぶのか。理由から逆算すれば、力の入れどころは変わってきます。
まとめると、この対談の学びは3つです。
AIはインターネット級の変化で、ここから20年から30年は世の中が変わり続ける。だから今からでも遅くない。
勝つのは「何々×AI」。主役は何々の方で、本質を磨いた上でAIを入れた人から順に勝っていく。
そして凡人の武器は「人の行動には理由がある」。言葉じゃなく、行動の理由を観察する。
明日からできることも、シンプルです。
自分の仕事の工程を書き出して、「人力のまま残ってる部分」にAIを1つ入れてみる。
それと、お客さんが自分の商品を選ぶ理由を、アンケートじゃなくて実際の行動から1つ見つけてみる。
僕もまず、自分の発信が「選ばれてる理由」を観察し直すところから始めます。
美味しい弁当と、美味しそうな写真。あなたの仕事では、どっちが欠けてますか。





