提案は結論から話せということは、半分しか合っていないと思います
残りの半分は話し方というより「選択肢」で決まっていないか?と思うことが多いです。
たとえば、CS部門で問い合わせ対応を任されている若手の人。
問い合わせが月300件から450件に増えて、上司の席まで相談に行く。
念のため今のまま続ける案と外注する案も手元で比べていたのに、口から出るのはこんな一言だったりします。
「最近、問い合わせがかなり増えてまして」
「AIチャットを入れたらいいと思うんですよね」
「どうしたらいいでしょうか」
どれも相談の切り出しとしては普通ですよね。
でも返ってくるのはたいてい「また今度で」です。
流れる提案は上司に考えさせている
なぜ流れるかというと、3つとも上司に考えさせているからです。
上司の頭の中は「で、何をしたいの?」「なんでそれ?」「他は?」で埋まっていて、その場で答えを組み立てる余裕はない。

結論・理由・選択肢の型
提案には「結論から話す」を一歩進めた型があります。
結論(何をしたいか)
理由(なぜそれか)
選択肢(他の案と比べてどうか)
この3つを分けて話す型です。
しかもこの型には、もう1つ「仕掛け」があります。
アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは経営会議でパワーポイントを禁止し、文章で書く6ページのメモに切り替えました(2017年の株主への手紙では、会議の冒頭に全員が黙ってメモを読むと書いています)。
つまり箇条書きで逃げられない形にして、書き手に「なぜそれか」「他の案は」まで考え切らせたわけです。
これまさに上司に考えさせない提案そのものだと思うんです。
頭の回転でも学歴でもなく「順番」の話なので、今日から誰でも真似できる。

冒頭の3つを言い直す
冒頭の3つも、それぞれ1行ずつ欠けているだけなんです。
①「最近、問い合わせがかなり増えてまして」=事実だけ
→「問い合わせ対応にAIチャットを入れたいです。月300件から450件に増えて、残業が1人月20時間を超えています。」
上司は「入れるか入れないか」を判断するだけで済む。
②「AIチャットを入れたらいいと思うんですよね」=結論だけ
→「AIチャットを入れたいです。450件のうち約6割がパスワード再設定と配送確認で、自動で答えられる内容だからです。」
ここで効くのが、心理学者エレン・ランガーらが1978年に発表したコピー機の実験です。
順番待ちの列で先にコピーを頼むとき、理由なしの承諾は60%(100人中約60人)でした。
「急いでいるので」と理由を添えるだけで94%まで上がった。
理由が1行あると、相手は「なんで?」を自分で考えなくて済むわけです。
③「どうしたらいいでしょうか」=問いだけ
→「3案を比べました。今のままだと残業が続き、外注は月40万円、AIチャットは月5万円です。AIチャットで進めてよいでしょうか。」
相手は最後の1文に「はい」か「いいえ」を返すだけで済む。
補足すると、選択肢には「今のまま続ける案」を必ず入れること。
比べる基準ができるので、他の案の良さが一目で伝わるかと。
3つの言い直しに共通しているのは、上司に考えさせないこと。

準備するのは選択肢から
ただここまで整えても「他の案は考えた?」「失敗したらどうするの?」で詰まる人はいて、僕もそっち側でした。
結論は話す順番であって準備する順番ではない。
「結論を決めてから話す」から「選択肢を並べてから結論を選ぶ」に変わるんですよね。
冒頭の若手が念のため今のまま続ける案と外注する案も比べていたのは、まさにこの準備です。
「失敗したら?」と聞かれても「3か月で自己解決率が2割に届かなければ外注に切り替えます」と返せるのは、比べた案が手元にあるから。
話すのは結論からでも、準備するのは選択肢から。
なので提案が即OKになるのは、結論から話したからではなく選択肢から準備したから。
・結論だけ準備して話すと
→「他の案は考えた?」で止まって「また今度で」
・選択肢から準備して話すと
→「じゃあそれで」で終わる

提案前の3行メモ
なので僕は提案前にメモへ「結論・理由・選択肢」の3行を書くようにしていて、選択肢は今のまま続ける案も含めて3つ並べます。
書くのは5分ほどですが、上司との往復はだいぶ減ったと思っています。
いまでも気を抜くと、結論だけ送って「他の案は?」と返される日があります。
まぁ話のうまさはなかなか変わらないですが、話す順番は次の提案からでもできる。
何よりこういうちょっとした仕組み化の実践こそ、上司との往復を減らして、いつもの仕事が楽しくなってくると思っています。
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参考文献
・Jeff Bezos「2017 Letter to Shareholders」Amazon.com, Inc.(2018年公開)
・Ellen J. Langer, Arthur Blank, Benzion Chanowitz「The Mindlessness of Ostensibly Thoughtful Action: The Role of "Placebic" Information in Interpersonal Interaction」Journal of Personality and Social Psychology, 36(6), 1978

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