Claude Fable 5を追加課金なしで使える期間は、Anthropic公式では現時点で「7月7日まで」と案内されています。
この日程は今後変わる可能性もありますが、いずれにしても、今のFable 5が「期間限定」であることは変わりません。
期間が終わってもFable 5自体がなくなるわけではありませんが、通常のサブスク枠からは外れて、続けるには追加課金が必要になります。
で、今タイムラインには「終了までにFable 5にやらせるべきこと」の記事がたくさん流れています。私も昨日、その系統の記事を書きました。
でも今日は、逆側の話をします。
「Fable 5がいなくなった後」に困らないための話です。
昨日の記事が「使い倒す」ための記事だとしたら、今日は「残す」ための記事です。中身はまったく別ですが、セットで一つだと思ってください。
先に結論から言うと、昨日の復活からFable 5に仕事を任せて「明らかに賢い」と感動した人ほど、終了後に困る可能性が高いです。
理由は単純で、優秀なAIと仕事をすると、こちらの指示がどんどん雑になるからです。
「あれ、いい感じにやっといて」で通じてしまう。
一度説明したことは、言い直さなくても覚えていて使ってくれる。
言い忘れた条件を、察して補ってくれる。
快適ですよね。私も昨日から、ずっとこの状態です。
でも、その「いい感じ」の中身を言葉にして持っているのは、あなたではなくFable 5の側です。
正確に言うと、会話のログ自体は、期間が終わっても消えずに残ります。使えなくなるのは、その散らかったログと雑な指示から、意図を正確に汲み取ってくれる「読み手」の方です。
例えるなら、辞めていく秘書の走り書きメモだけが残る状態です。書いてはある。でも、本人しかスラスラ読めない。
私がこれに気づいたのは、昨日、AIと仕事用フォルダの点検をしていたときでした。
6月末にAIと一緒に確立したばかりの、納品用e-learning動画(研修用の解説動画)の制作手順。ファイルを探しても、メモを探しても、どこにもありません。あったのは、過去の会話ログの中だけでした。作業用フォルダを開いたら、中身は空でした。
つまり私は、「チャットに出して終わり」にしていたんです。あのまま気づかなければ、手順は会話の中に埋もれたまま、二度と掘り返されなかったと思います。
この記事では、優秀なAIがいるうちに絶対やっておくべき「引き継ぎ」を、4つにまとめます。
・チャットにしか存在しない成果物を、回収する
・察してくれていたことを、引き継ぎ書にさせる
・引き継ぎのリハーサルをする(これは今しかできません)
・これからの仕事が自動で残る、2つのルールを入れる
難しい技術は使いません。プログラミングもしません。必要なのは「頼み方」だけです。
第1章:何が消えて、何が残せるのか
まず、頭を整理します。Fable 5の賢さは、2種類に分けられます。
一つは「その場の賢さ」。質問に的確に答える、長い資料を正確に読む、複雑な仕事をやり切る。
これはモデルの性能そのものなので、期間が終われば性能ごと手元から離れます。ここは、どうしようもありません。
もう一つが「残る賢さ」です。あなたとの会話の中で確立された仕事の進め方。何度もやり取りして決まった方針。
完成した文章や仕組み。「こう頼めば、こう返ってくる」という型。
こちらは、モデルの性能ではなく「情報」です。
情報なら、ファイルにできます。ファイルにできれば、次のAIにも渡せます。
やるべきことは、この2つを切り分けて、「残る賢さ」を期間中にファイルへ変換しておくこと。それだけです。
優秀なAIほど「察してくれる」。それが罠になる
もう一つ、大事な構造の話をします。
Fable 5クラスのモデルは、指示の行間を読みます。
たとえば「先月分の請求書作って」という一言で正しい請求書が出てくるのは、AIが時給や宛先といった背景を、会話の流れや過去のファイルから察して補っているからです。
人間の職場でいえば、超優秀な秘書と働いている状態です。「例のあれ、お願い」で全部通じる。
問題は、その秘書に退職日が決まっていることです。
しかも、引き継ぎ書はまだ一枚もありません。
次に来るAIも、過去のやり取りを読むこと自体はできます。
でも、あなたの「例のあれ」を、今の秘書と同じ精度では汲み取ってくれません。
そこで初めて気づくんです。この雑な指示で通じていたのはモデルが賢かったからで、自分は自分の仕事のやり方を、言葉で説明できていなかった、と。
ここで大事なのは、次に使うAIが無能という話ではないことです。
SonnetもOpusも、明示的な手順を実行する能力は十分にあります。
とはいえ、正直に言っておくと、差が出るのは「曖昧な指示から意図を察する力」だけではありません。出力そのものの質も違います。そこはごまかせません。
ただ、その差の開き方は、手元に明示的な手順と見本があるかどうかで大きく変わります。
雑な指示のままモデルだけ変わると、意図のズレと質の低下が同時に来ます。手順と見本が残っていれば、少なくとも仕事の型は崩れません。
だから対策はシンプルで、察してもらっていた部分を、明文化しておけばいい。
そして、その明文化を一番うまくやれるのは、あなたの文脈を今まさに全部知っていて、長い会話から正確に要点を拾える、Fable 5自身なんです。
実は「散らかった長い会話を読んで、正しく整理する」という作業こそ、モデルの賢さの差が一番出る仕事です。
つまり、抜き取り作業そのものが、Fable 5にやらせるべき仕事なんです。ここを次のAIにやらせようとしても、同じ品質では拾えません。
第2章:絶対やるべき①。チャットにしか無い成果物を回収する
一番即効性があるのは、過去の会話からの回収です。
私が実際に「消えかけた」話
6月末、私はAIと一緒に「e-learning動画の作り方」を検証していました。
私は仕事で研修用の解説動画を制作しているのですが、どの工程をAIに任せられるか、品質をどう安定させるか。
分担表と手順を固めるところまでやったんです。
その結論は、会話の中にだけ存在していました。
昨日、別の作業でフォルダを点検していて、それに気づきました。7月はこの手順で動画を量産する予定だったのに、手順書がどこにもない。
もし会話ごと忘れていたら、ゼロから検証し直しでした。
回収は簡単でした。Fable 5に過去の会話を読ませて、手順書として1ファイルにまとめさせただけです。数分でした。
あなたにも、こういう会話が必ずあります。
・何度もやり取りして、やっと完成した文章
・「今後はこの方針でいこう」と決めたこと
・試行錯誤の末にうまくいった手順
・AIが整理してくれた、自分の仕事や事業の全体像
これらは、その会話を開けば残っています。でも会話は流れていきます。1ヶ月後、どの会話だったか思い出せるでしょうか。
やり方
過去1〜2ヶ月にAIとやった仕事をざっと思い出して、「消えたら困る順」に並べます。そして、その会話を開いてこう頼みます。
1この会話には、今後も使いたい大事な結論が含まれています。2会話全体を読み直して、以下を1つのファイル(Markdown形式)に3まとめてください。45・完成した成果物(文章・構成・コードなど)の完成版6・決定した方針と、その理由7・確立した手順(別の人や別のAIでも再現できる具体度で)8・注意点、失敗と対策9・未解決のまま残っていること1011ルール:12・会話に存在しない内容を補って創作しない13・要約しすぎない。手順と成果物は省略せず全文残す14・冒頭に「どの仕事のときに参照するファイルか」を1行で書く
出てきたものを保存します。
この段階では、保存場所はどこでもいいです。
ファイルとして存在していることが最優先です(ちなみに私はObsidianというメモアプリに入れています。理由は第5章で話します)。
コツは、完璧を目指さないこと。
全部の会話を回収する必要はありません。
「消えたらまた何時間もかけて作り直しになるもの」から、拾えるだけ拾ってください。
3つ回収できただけでも、かなり救われます。
第3章:絶対やるべき②。「察してくれていたこと」を引き継ぎ書にさせる
この記事で一番伝えたいのは、この章です。
Fable 5と快適に仕事ができているなら、その裏には「明文化されていないルール」が大量に溜まっています。
あなたの文体の癖。「これはやらないで」の境界線。成果物の合格ライン。よく使う資料の場所。
これを自分で書き出そうとすると、ほぼ失敗します。
自分にとって当たり前すぎて、言語化できないからです。
でも、AIから見たあなたは観察対象です。
外から見ているからこそ、言語化できます。だから、Fable 5自身に書かせます。
一番長くやり取りしている会話で、これを貼ってください。
1あなたはもうすぐ、この仕事から離れることになりました。2後任のAI(あなたより「察する力」が弱い前提)への3引き継ぎ書を作ってください。45これまでの会話から、あなたが私について学んだことを、6以下の項目で書き出してください。78・私の仕事の全体像(何をしている人か)9・私の好み(文体、トーン、成果物の形式)10・私がよく出す指示と、その本当の意味11 (例:「いい感じに」と言われたら、実際には何を指すか)12・絶対にやってはいけないこと13・成果物の合格基準(私が「OK」を出すのはどんなときか)14・私がよく言い忘れることと、その補い方1516ルール:17・実際の会話で確認できたことだけを書く。推測で埋めない18・確信が持てない項目は「未確認」と明記する19・後任のAIがこのファイルだけを読めば、明日から同じ品質で20 仕事を始められる具体度で書く
出てきた引き継ぎ書は、必ず自分で読んで確認してください。
AIの観察が間違っていることもあります。
でも、それでいいんです。
「ここは違う」と直すこと自体が、自分の仕事のルールを確定させる作業になります。
もう一つ。毎週・毎月繰り返している仕事があるなら、その会話で「この作業を、別のAIでも同じ品質で再現できるように、コピペで使える指示文にして。あなたの今回の実際の出力を見本として1つ添えて」と頼んでおいてください。
ポイントは「見本を添えさせる」ことです。
手順書だけだと仕上がりが揺れますが、見本つきの手順書なら、察する力が弱いモデルでも見本に寄せてきます。
第4章:絶対やるべき③。引き継ぎの「リハーサル」をする
ここが、期間中にしかできないことです。
第2章と第3章で作った引き継ぎ書や指示文が本当に機能するかは、実際に別のモデルで動かしてみないと分かりません。
そして今なら、これができます。
- 作った指示文を、SonnetやOpusに貼って実行させる
- 仕上がりを見て、ズレたところ・質問されたところをメモする
- そのズレを持ってFable 5に戻り、「ここが伝わらなかった。指示文を直して」と修正させる
この3番が重要です。
期間が終わった後だと、指示文がうまく動かなくても、直せる側のAIが(追加課金しない限り)手元にいません。
「賢いAIに引き継ぎ書を作らせて、弱いAIでテストして、賢いAIに直させる」という往復は、両方が手元にある今しかできないんです。
全部の指示文でやる必要はありません。一番よく使う仕事を1つ選んで、1往復だけでもやっておくと、引き継ぎの精度がまったく変わります。
ついでに、この比較はもう一つの成果を生みます。
「この仕事はSonnetで十分」「これは追加課金してでもFable 5」という線引きが、実物ベースで分かることです。終了後の課金判断に、そのまま使えます。
第5章:これからの仕事が自動で残る、2つのルール
最後は、今後の仕事が「チャットに出して終わり」にならない仕組みです。ルールは2つだけです。
ルール1:会話の最後に「今の結論、ファイルにして保存して」と言う。
Claude CodeやCoworkのようにAIがファイルを直接作れる環境なら、保存先フォルダを決めてそこへ書かせる。
通常のチャットなら、Markdown形式で出させて自分で保存する。これだけで、成果物が会話と一緒に流れていくことが構造的になくなります。
ルール2:ファイルが増えてきたら、目次を1枚作らせる。
フォルダの入り口に、「どのファイルに何が書いてあって、いつ読むべきか」を1行ずつ並べた目次ファイルを置きます。
作るのはAIに「このフォルダの索引を作って。初めて来たAIが最初に読むべきファイルを先頭に明記して」と頼むだけです。
なぜ目次が大事かというと、AIに毎回すべてのファイルを読ませると、遅いうえに、関係ない情報が混ざって精度が下がるからです。
目次だけ渡して「必要な場所だけ読んで」と言える状態にする。新しいAIが来ても、この1枚から数分で全体を把握できます。
私の場合。1年運用してきたObsidianを、Fable 5に「点検」させた
ちなみに私は、約1年前からObsidianという無料のメモアプリで、仕事の情報をすべて管理しています。
アカウントの設計、商品の資料、過去の原稿、日々のログ。全部ここに溜めてきました。
そして、このObsidianをClaude Code、Cursor、Codexといった複数のAIに読ませて仕事をする形も、ずっとやってきました。
記事の下書きを頼めば、過去の原稿の型と文体ルールを勝手に参照してくる。
商品の説明文を頼めば、商品資料を読んでから書いてくる。
モデルを乗り換えても仕事が回ってきたのは、AIが賢いからではなく、この「AIが読めるナレッジ」が手元にあったからです。
この章で書いた仕組みの効果は、1年分の実体験として言えます。
じゃあ昨日復活したFable 5に、まず何をやらせたのか。
「点検」です。
Obsidian全体とこれまでの作業を読ませて、足りないもの・古くなったもの・散らばっているものを精査させました。
先に評価から言うと、Fable 5の判定は「この仕組みは9割方できあがっている。ここまで作り込めている人はほとんどいない」でした。
1年コツコツ溜めてきたものが、ちゃんと形になっていたみたいです。
でも、大事なのはここからです。
その「9割できている」Obsidianからでも、漏れが見つかりました。
それが導入で書いた「会話の中にだけ残っていた制作手順」です。
ほかにも索引の穴や、二重管理になりかけていた資料がいくつも出てきました。
9割できていても、漏れるんです。
賢いモデルの使いどころは、まさにここだと思っています。
大量のファイルと長い会話ログを横断して「何が欠けているか」を見つける仕事は、モデルの賢さの差がそのまま出ます。
すでに仕組みを持っている人は点検に、これから作る人は最初の土台づくりに、Fable 5がいるうちに使ってください。
AIの出力の精度を決めるのがナレッジの質だというのは、ChatGPTが出てきた頃から変わらない話です。
だから昔は、みんな自分の知識や前提を、毎回チャットに貼って説明していました。
Obsidianが変えたのは、そこです。
知識を毎回渡すのではなく、貯めておいて、AIに読みに来させる。私はその「置き場」を1年育ててきた、ということです。
この仕組みは、特定のAIに依存しない
そして、ここまで作ったものは全部ただのテキストファイルです。
Claude CodeやCursor、Codexのように、パソコンの中のファイルを直接読めるAIなら、「まずこの目次と引き継ぎ書を読んで」と言うだけで、そのまま働き始めます。
ChatGPTやブラウザ版のClaudeチャットのように、パソコンのフォルダを直接は読めないAIでも、ファイルを添付したり貼り付けたりすれば、同じように通じます(なお、Claudeのデスクトップアプリには、パソコンのファイルを直接読み書きできる機能もあります)。
特定のアプリでしか開けない形式ではない。
ここが大事なところです。
Fable 5がいなくなる対策として始めた作業が、結果的に「どのAIが来ても大丈夫」という状態を作ってくれる。
モデルの登場と終了に振り回されるのは、今回で最後にできるということです。
時間がない人へ。今日30分でやる3つ
全部やる時間がなければ、これだけやってください。
- 「消えたら困る会話」を3つ思い出す(スマホのメモに書き出すだけ)
- 一番困るものに、第2章のプロンプトを貼って回収する(まず1件、「回収できた」状態を作る)
- 引き継ぎ書を作らせる(第3章。あなたとの文脈を一番深く積んでいる今のFable 5にしか書けない密度があります)
逆に、やらなくていいこともあります。全部の会話の回収(キリがないので「困るもの」だけ)、きれいなフォルダ設計(あとで直せます)、新しい自動化への挑戦(期間内に手を広げると中途半端になります)。
なお、この抜き取り作業自体は、重い制作作業と比べると利用枠の消費は控えめです。読んでまとめる作業が中心だからです。
制作系の仕事の合間に差し込んでください。
まとめ。AIの賢さは借り物。ファイルにしたものだけが残る
AIの賢さには、「その場の賢さ」と「残る賢さ」があります。
その場の賢さは、期間が終われば返す借り物です。でも、残る賢さは、ファイルにすれば自分のものになります。
・チャットにしか無い成果物を、回収する
・察してもらっていたことを、引き継ぎ書にする
・両方のAIがいる今のうちに、引き継ぎのリハーサルをする
・「保存して」と「目次」の2ルールで、これからの仕事を残す
昨日の記事では「期限までに、重い仕事を完成させよう」と書きました。
今日はその続きで、完成させたものと、完成までに生まれた「仕事のやり方」を、期間の後に持ち越す話です。
使い倒すことと、残すこと。この2つがそろって、今回の期間限定は本当に元が取れると思います。
私も終了まで、Fable 5に仕事をさせながら、並行して引き継ぎを進めていきます。
未来の自分のために、まずは今日の30分から始めてみてください。
最後に、お願いというより提案です。
この記事も、タイムラインに流れたら消えていきます。
「あとでやろう」と思った方は、消える前に保存しておいてください。
配布したプロンプトは、期限が過ぎたあとも、どのAIにでも使えます。
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あなたのタイムラインにも、7月8日に「しまった」となる人がきっといるはずなので。その人に届いたら、この記事の役目は果たせたことになります。
主な公式参照元
Fable 5の復活・対象プラン・提供期間
https://www.anthropic.com/news/redeploying-fable-5
Fable 5のプロモーション利用条件
https://support.claude.com/en/articles/15424964-claude-fable-5-promotional-access





