―2026年、巨人左腕の中身をデータで読む
(5/15登板中の投稿のため5/15成績は入っていない)
2026年の井上温大は、表面成績だけ見ても十分に良い。
5登板、5先発、29 2/3回、防御率2.12。奪三振33、与四球7、WHIP1.01。K%は28.0%、BB%は5.9%、K-BB%は22.0%。
ただし、この記事で見たいのは「防御率2点台前半だから良い投手」という話ではない。
NPB Scholarの個票でも、井上の2026年はかなり強く出ている。Overall Stuff+は103.4、Location+は106.6。球そのものの強さも平均以上だが、それ以上に投げる場所の評価が高い。さらにPRVは+4.0、xERAは2.57、FIPは2.25、xFIPは2.09。つまり、単に防御率が良いだけではなく、「球質」と「ロケーション」と「実力推定」が同時に上を向いている。
井上の面白さは、2024年に一軍先発としてブレイクし、2025年に壁へ当たり、2026年に同じ投手として戻ってきたのではなく、投球の作り方そのものを変えて戻ってきている点にある。
結論から言えば、2026年の井上は「ストレートとスライダーで勝つ左腕」から、「速球帯のまま打者の角度を壊す左腕」へ変わろうとしている。本格派左腕に見えて、技巧派左腕の要素・ポテンシャルも持ち合わせている
これは単なる球速アップではない。
ストレートの質、フォークの決め球化、2シームとカットボールの増加、そしてゾーンの使い方まで、かなり一貫した設計変更が見える。

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1. 2024年の井上は、すでに一度「答え」を出していた
井上温大の一軍でのブレイクは2024年だった。
101回を投げ、防御率2.76。FIPも2点台中盤で、内容面でも十分に優秀だった。K%は24.0%、BB%は6.5%、K-BB%は17.4%。この時点で、若い左腕先発としてはかなり強い数字である。
この年の井上を支えていたのは、ストレートとスライダーだった。
球種別のピッチバリューを見ると、2024年はストレートが+1.5、2シームが+3.1、スライダーが+8.2。特にスライダーの貢献が大きい。使用率もスライダー26.9%で、ストレート44.3%に次ぐ第2球種だった。
つまり2024年の井上は、ストレートで押し込み、スライダーで仕留める投手だった。
これは非常に分かりやすい成功形だ。左腕として平均以上のストレートがあり、そこからスライダーで空振りと凡打を取れる。若い投手が一軍でローテに入るには、十分すぎる武器構成だった。
だが、2025年に問題が起きる。
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2. 2025年の失速は「球が悪くなった」より「角度を作られた」
2025年の井上は、107回を投げた。稼働量だけ見れば、2024年の101回からむしろ伸びている。
しかし内容は落ちた。
防御率3.70、FIP3.58。被本塁打は2024年の5本から15本へ増えた。K%は22.1%、BB%は4.2%で、三振・四球のバランス自体はそこまで悪くない。むしろ四球は減っている。
では、何が悪くなったのか。
答えは打球だ。
2024年のゴロ率は50.7%。2025年は40.9%。逆にフライ率は39.3%から47.2%へ上がった。本塁打/フライも4.7%から10.0%へ跳ねた。
つまり2025年の井上は、打者に角度を作られていた。
ストレートの平均球速は146.7km/hまで上がっていた。球速そのものが大きく落ちたわけではない。にもかかわらず、打球は上がり、長打化し、本塁打になった。
ここが重要だ。
2025年の井上の問題は「力がない」ではない。「打者が学び、井上の攻略法を確立してきた」ことだった。これがプロの世界である。常に同じ位置にいては淘汰される。上昇する者のみが生存を許される世界だ。
スライダーのピッチバリューも象徴的だ。2024年に+8.2だったスライダーは、2025年に-4.9まで落ちた。スライダーの使用率は20.7%まで下がったが、それでも第2球種としては大きい。前年の成功球が、翌年にはむしろ足を引っ張る球になった。
さらにフォークは+1.7とプラスを保った一方、ストレートは-0.2でほぼ中立、2シームは-2.5、カーブは-3.1。全体として、「これで押し込める」という明確な球が薄くなっていた。
この流れを踏まえると、2026年の井上が何を変えたのかが見えてくる。
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3. 2026年、まず変わったのはストレートの質

2026年の井上の最大の変化は、ストレートである。
平均球速は148km/h台に入った。公開データではストレート平均148.1km/h、最高152km/h。5登板の試合別平均を見ても、148.3、148.3、147.9、148.0、148.1km/hと、かなり安定している。
単発で速い球を投げたのではない。登板ごとに148km/h前後を維持している。
2025年のストレート平均は146.7km/hだったので、約1.4km/hの上昇。左腕先発でこの上積みは大きい。
ただし、球速だけなら「速くなった」で終わる。
本当に重要なのは、ストレートの結果が変わっていることだ。
NPBデータストアの球種トレンドでは、2026年のストレートは投球数232、使用率50.5%、平均148.11km/h。Whiff%は20.56%、CSW%は36.64%、ゴロ率は57.1%。
NPB Scholar側の分類でも、フォーシームは223球、使用率48.6%、平均148.4km/h。Stuff+は105.7、Location+は107.7、Zone%は59.2%、Whiff%は18.8%、Called Strike%は26.0%。球速だけでなく、球質評価とロケーション評価の両方が平均を上回っている。
2025年のストレートは、Whiff%14.14%、CSW%26.30%、ゴロ率42.1%、フライ率53.7%だった。
つまり2026年のストレートは、前年より空振りが取れ、見逃しも取れ、しかも打球が上がらなくなっている。
これはかなり大きい。
普通、ストレートの改善というと「空振りが増えた」に目が行く。もちろんそれも正しい。だが井上の場合は、ストレートのゴロ率が42.1%から57.1%へ上がっている点の方が、投球設計としてはより重要だ。
2025年に課題だったのは「打球が上がること」だった。2026年の井上は、その課題をストレート自体で修正し始めている。
ピッチバリューでも同じだ。
2026年のストレートは+6.2、100球あたり+2.87。2025年が-0.2だったことを考えると、ほぼ別物である。
今年の井上の投球は、まずストレートが主役に戻った。
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4. ただし、ストレート一本槍ではない。むしろ「速球帯」が増えた
2026年の井上を「ストレートが速くなった投手」とだけ見ると、少し浅い。

本質は、速い球の種類が増えたことにある。
2025年の球種構成は、ストレート47.7%、スライダー20.7%、フォーク14.0%、2シーム6.6%、カットボール4.7%、カーブ6.2%。
2026年は、ストレート50.5%、フォーク14.2%、スライダー12.2%、2シーム10.5%、カットボール10.2%、カーブ2.2%。
NPB Scholarでは、フォーシーム48.6%、フォーク14.8%、シンカー12.4%、スライダー11.8%、カットボール9.8%、カーブ2.4%という分類になる。細かな分母や球種名はサイトごとに揺れるが、見えている構造は同じだ。ストレート系を軸に、フォーク、シンカー系、カット、スライダーをほぼ10%台で並べている。
大きく変わったのは3つ。
スライダーが減った。
カーブが減った。
2シームとカットボールが増えた。
つまり、遅い球や大きく曲げる球に寄せたのではなく、ストレート近辺の速度帯で細かくズラす方向へ寄せている。
これは2025年の課題への回答としてかなり自然だ。
打者に角度を作られたなら、単にもっと落とす球を増やすのではなく、速球に見える球で芯をズラす。打者がストレートにタイミングを合わせた瞬間に、2シームで詰まらせる。カットでバットの芯を外す。フォークで下へ逃がす。
井上は、球速差の大きい緩急型へ行ったのではない。
速い球のまま、打者のスイング軌道からズラす方向へ行っている。
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5. フォークは「落とす球」ではなく、決め球としてかなり強い

2026年の井上のフォークは、かなり見逃せない。
公開データでは、フォークは65球、使用率14.2%、平均131.4km/h。被打率.100、奪三振9。Whiff%は58.0%、SwStr%は30.77%。
NPB Scholarでも、フォークは68球、使用率14.8%、平均132.0km/h。Stuff+は114.0で、井上の主要球種の中では最も高い。Zone%は20.6%と低い一方、Chase%は53.7%、Whiff%は48.8%。これは「ゾーンでカウントを取る球」ではなく、「振らせて終わらせる球」として非常に分かりやすい。
これは明確に決め球である。
ストレートが148km/h台、2シームが147km/h台、カットが134km/h台、フォークが131km/h台。井上のフォークは、極端に遅い球ではない。ストレートから約17km/h落ちるが、左腕のフォークとしては十分に速い。
そして、この球が振られたときの空振り率が非常に高い。
ただし、ここには注意点もある。
フォークのStrike%は21.54%と低い。これは、ゾーンに投げ込んでカウントを取る球ではなく、打者に振らせて初めて価値が出る球だということを意味する。
つまりフォークは、単独でカウントを整える球ではない。
ストレートとカット、2シームで打者の目線とスイング開始のタイミングを強制的にポイントを前に引きずり出し、最後にフォークで下へ落とす。その前段が成立しているから、フォークの空振りが生まれる。
ここが2026年井上の構造だ。
フォークが良いから抑えているのではない。
ストレートが強くなり、速球帯の選択肢が増えたから、フォークがより決め球として機能している。

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6. カットボールは「未完成だが、必要な球」
2026年の井上で最も評価が難しいのがカットボールだ。

使用率は2025年の4.7%から2026年は10.2%へ増えた。平均球速は134.3km/h。Whiff%は46.88%、SwStr%は23.40%、Chase%は51.72%。
NPB Scholarでもカットボールは使用率9.8%、平均135.0km/h、Chase%51.7%、Whiff%42.3%。一方で、wOBAは.434、xwOBAは.416とかなり重い。つまり、振らせる力はあるが、打たれた時のダメージが大きい。
振らせれば、かなり空振りが取れている。
一方で、被打率は.294、被本塁打1。ピッチバリューも-3.9、100球あたり-8.14と大きくマイナスだ。
つまりカットボールは、現時点で「結果が出ている球」ではない。
しかし、だから不要という話ではない。
カットボールの役割は、ストレートのすぐ下にある速い横ズレを作ることだ。井上のストレートは148km/h台。フォークは131km/h台。スライダーは126km/h台。ここに134km/h台のカットボールがあることで、打者は「速球に近い球速で、でも芯を外される」選択肢を考えなければならない。
2025年の井上は、スライダーとフォークが大きな変化球として見えやすくなり、ストレートに合わせられたときに打球が上がった。
2026年の井上は、その間にカットを置いている。
だからカットボールは、単体のピッチバリューだけで評価しきれない。もちろん、現状の-3.9は改善が必要だ。被打率も高い。失投すれば長打になる。
ただ、投球設計上は必要な球だ。
この球がゾーンの端に安定して決まるようになれば、井上のストレートはさらに生きる。
現時点のカットボールは、完成品ではなく、2026年井上の伸びしろそのものだ。
そしてそのピッチデザインを行うならば提言したい言葉があるのだが、
本人から質問されたら答えるが、今はまだ公開は差し控えておく
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7. ツーシームは「結果が悪い球」ではなく、「ゴロ設計のための球」

2シームも同じだ。
2026年の2シームは48球、使用率10.5%、平均147.2km/h。ストレートとほとんど同じ速度帯にある。
NPB Scholarではシンカー表記で、57球、使用率12.4%、平均147.6km/h。縦変化量は+44.1cm、横変化量は-30.6cm。フォーシームの縦変化量+51.4cm、横変化量-17.3cmと比べると、同じ速球帯でありながら、よりアーム側へ走る球になっている。
Whiff%は30.43%、ゴロ率は100.0%。もちろん打球数が少ないため、100%という数字をそのまま大きく扱うべきではない。それでも、狙いははっきりしている。
この球は、空振りを取る球というより、ストレートに見せて芯を外し、ゴロを打たせる球だ。
ただし、課題も明確だ。
被打率は.500、与四球4。ピッチバリューも-1.7。まだ制球と使いどころに粗さがある。
それでも井上がこの球を増やしている理由は分かる。
2025年の井上はフライ率47.2%、本塁打15本。打球が上がることが最大の課題だった。そこから2026年、全体のゴロ率は大きく上がっている。NPBデータストアの球種トレンドでは、全体GB%が2025年49.0%から2026年65.4%へ上昇。別集計でもゴロ率は約6割まで上がっている。
これは偶然ではない。
ストレートの出力を上げるだけでなく、同じ速球帯に2シームを混ぜることで、打者の打球角度を下げている。
だから2シームも、現時点では「未完成だが必要な球」だ。
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8. スライダーは消えたのではなく、役割が変わった
2024年の井上を支えたスライダーは、2026年に使用率が下がっている。

2024年は26.9%。
2025年は20.7%。
2026年は12%前後。
この数字だけ見ると、スライダーを捨てたようにも見える。
だが、そうではない。
2026年のスライダーは、56球、平均126.2km/h。Whiff%29.17%、CSW%50.0%。データで楽しむプロ野球の球種別表でも、スライダーの見逃率は39%台と高い。
NPB ScholarでもスライダーはLocation+111.2、Called Strike%40.7、CSW%50.0。Stuff+は94.8で突出していないが、投げる場所と使い方で価値を作っている球だ。
つまり、空振りだけでなく、見逃しを取る球として機能している。
2024年のスライダーは主役級だった。2026年のスライダーは、ストレート・フォーク・速球帯の横ズレを支える補助線に近い。
この変化は悪いことではない。
むしろ2025年にスライダーのピッチバリューが大きく落ちたことを考えると、井上がスライダー依存から脱却しようとしているのは自然だ。
今の井上に必要なのは、スライダーを2024年のように戻すことではない。
ストレートとフォークを軸に、カットと2シームを実用化し、そのうえでスライダーを「見逃しも取れる第4の球種」として使うことだ。
スライダーは主役から脇役になった。
ただし、その脇役はかなり重要である。
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9. ゾーン設計 ― Heartを減らし、Shadowで勝負する
井上の2026年を理解するうえで、ゾーン周りも重要だ。

アタックゾーンの投球割合を見ると、2026年はHeartが21.8%、Shadowが47.6%、Chaseが25.8%、Wasteが4.8%。
NPB ScholarのLocation+は106.6で、パーセンタイルでも上位に入る。ここが2026年井上の肝だ。球が強くなっただけならStuff+の話で終わるが、井上の場合はLocation+の方がさらに強く出ている。
Heart、つまり真ん中付近への投球比率が低く、Shadow、つまりゾーンの境界線への投球が非常に多い。
2025年はHeart24.2%、Shadow42.9%、Chase28.3%、Waste4.7%。2026年は、Heartをさらに減らし、Shadowに寄せている。
これは現在の球種構成と整合する。


ストレートで押し込む。
2シームでアーム側へ動かす。
カットで逆方向へズラす。
フォークで下へ落とす。
スライダーで見逃しと横幅を作る。
この構成は、真ん中に投げ込んで力でねじ伏せるより、境界線で打者に判断を迫る方が合っている。
実際、ゾーン別の得点価値でも、2026年の井上はShadowでプラスを作っている。Heartではスイング時の価値がマイナスに出ている一方、Shadowではスイング、見逃し、全投球の合計でプラス。つまり、甘いところで勝つ投手ではなく、境界線で価値を作る投手になっている。
NPB Scholarの指標解説でも、Location+は単なるゾーン内投球率ではなく、どのコースへ投げたか、追い込んでから外せているか、使うべき場面でボール球を使えているかを見るものだと説明されている。
この観点で見ると、井上の2026年は「ストライクを多く投げている」ではなく、「境界線で勝負できる球種構成へ変えた」と読む方が近い。
ここも、先程の記事より強調したいポイントだ。
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10. 2026年井上の最大の変化は、空振りよりも「コンタクトの質」

2026年の井上は、三振が増えている。
K%28.0%はかなり高い。NPBデータストアのパーセンタイルでも、K%は上位寄りに出ている。K-BB%22.0%も優秀だ。
だが、井上の変化を三振だけで語ると見誤る。
本質は、コンタクトのされ方が変わったことだ。
NPBデータストアの球種トレンドでは、全体のContact%は2025年71.60%から2026年66.24%へ低下。Whiff%は28.40%から33.76%へ上昇。CSW%は29.56%から36.38%へ上昇している。
つまり、振られたときに空振りになりやすく、見逃しストライクも増え、打者のコンタクト自体が苦しくなっている。
さらに全体GB%は49.0%から65.4%へ上昇。フライ率は46.5%から32.7%へ低下している。
これは、2025年の弱点に対するほぼ直接的な回答だ。
2025年の井上は、打者に角度を作られていた。
2026年の井上は、空振りを増やしながら、同時に打球角度も下げている。
この両立が大きい。
空振り型の投手は、ゾーンに入った球を強打されることがある。ゴロ型の投手は、三振が少なく、守備やBABIPに左右されやすいことがある。
だが2026年の井上は、三振率28.0%で、なおかつゴロ率が高い。
この組み合わせは、先発投手としてかなり価値が高い。
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11. では、何がまだ足りないのか
ここまで見ると、2026年の井上はかなり良く見える。
実際、内容は良い。
ただし、完成形と呼ぶにはまだ早い。
理由は、増やした球の単体価値がまだ安定していないからだ。
2シームはピッチバリュー-1.7。
カットボールは-3.9。
フォークも公開サイト上では被打率と空振りは優秀だが、別集計のピッチバリューでは小幅マイナス。
つまり、2026年の井上は「新しい球種設計が完成した」のではない。
ストレートの出力が上がり、その周辺に新しい球を置いたことで、投球全体の形は良くなっている。しかし、2シームとカットが単独でプラスを作る段階にはまだ来ていない。
ここが今後の分岐点だ。
もし2シームがストライクゾーンの端に安定し、カットボールが甘く入らず、フォークを振らせる前段として機能し続けるなら、井上はかなり強い。
逆に、相手打線が2シームとカットを見極め始め、ストレートとフォークの二択に戻されると、2025年のように打球が上がるリスクは再び出てくる。
今の井上は、完成されたエースというより、エース級へ向かうための設計変更をかなり良い形で進めている段階だ。
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12. 井上温大の投球哲学
整理しよう。
2024年の井上は、ストレートとスライダーで一軍先発としての答えを出した。
2025年の井上は、打球が上がり、本塁打で苦しんだ。三振・四球のバランスが極端に悪かったわけではない。問題は、打者に強い角度を作られたことだった。
2026年の井上は、その課題に対して、かなり明確な回答を出している。
ストレートの平均球速を148km/h台へ上げる。
そのストレートで空振りと見逃しを増やす。
2シームとカットを増やし、速球帯のまま芯を外す。
フォークを決め球として使う。
スライダーを主役から、見逃しと横幅を作る補助線へ移す。
Heartを減らし、Shadowで勝負する。
これは「球種を増やした」ではない。
投球のOSを入れ替えた、という表現の方が近い。
今の井上温大は、ただの速球派左腕ではない。本格派左腕に見えて、技巧派左腕の要素・ポテンシャルも持ち合わせている、スーパーピッチャーになれる存在なのだ。
だから、2026年の井上を見るときに重要なのは、防御率2.12という表面ではない。
ストレートのWhiff%とCSW%が上がったこと。
ストレートのゴロ率が上がったこと。
全体のフライ率が下がったこと。
2シームとカットが増えたこと。
Shadowで価値を作り始めたこと。

この5つを並べると、井上の現在地はかなりはっきりする。
彼は復調したのではない。
別の投手になろうとしている。
そして、その方向性はかなり現代的だ。
遅い変化球でかわすのではなく、速球帯の中でズラす。
空振りだけを追うのではなく、打球角度も壊す。
真ん中で力勝負するのではなく、境界線で判断を迫る。
これが2026年の井上温大の投球哲学である。
まだ完成ではない。
だからこそ、ここからが面白い。
2シームとカットが本当に武器になったとき、井上温大は2024年のブレイクを超える。
その時の彼は、単なる「巨人の若い左腕」ではなく、リーグ上位の先発左腕として語られる投手になっているはずだ。
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参照メモ
2026年5月13日時点の集計を中心に参照。球種分類やFIPなどはサイトにより定義差があるため、本文では複数ソースで方向性が一致する変化を優先した。NPB Scholarの個票では、井上温大、2026年シーズンの集計を参照。
主な参照元:
・NPBデータ系公開ページ
・NPBデータストアの球種トレンド、球速トレンド、セイバーメトリクスページ
・データで楽しむプロ野球の球種別空振率・見逃率ページ
・NPB Scholarの井上温大ダッシュボード、Stuff+ / Location+ 指標解説





