立地 、 新築 、 広さ : 何を諦めるべきか ? 共働き夫婦でもすべてを手に入れるのは難しい時代

@myhomefp
日本語2026年9月05日
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TL;DR

ファイナンシャルプランナーのタカユキ氏が 、 日本の住宅価格が高騰する中で 「理想のマイホーム」が現実的に難しい理由を分析 。 住宅ローンに縛られず 、 夫婦の人生を優先するための考え方を提案します 。

「これって、うちだけなんでしょうか」

家を探し始めたご夫婦から、本当によく聞く言葉です。

共働きで、ふたりともちゃんと働いている。

それなのに、気に入った家の値段を見ると、とても手が出ない。

「私たちの収入が、少ないんでしょうか」

そう聞かれるたびに、いつもお伝えしています。

それは、あなたたちのせいじゃありませんよ、と。

どういうことかというと.....

その「足りない」、責める相手が違うかもしれません

「うちの収入が、足りないのかな」

そう感じている人が、本当に多いです。

でも、それはたぶん、違います。

正確に言うと、責める相手を間違えている。

足りないのは、あなたたちの収入じゃないんです。

家が買えないのは、あなたのせいじゃない

数字を見るとその理由がよくわかります。

首都圏の新築マンションは、2026年の上半期、平均で1億円を超えました。半年の平均が1億を超えたのは、初めてです。

バブルのころ、1990年の東京23区の新築マンションは、平均6,220万円でした。

当時ですら「高すぎる」「もう普通の人には買えない」と言われた価格です。

今は、その倍近くまで来ています。

首都圏は極端ですが、これは都会だけの話じゃありません。

全国でも新築マンションは平均5,900万円ほど、戸建ても調査開始以来の最高値。

程度の差はあれ、同じ流れが全国で起きています。

かつては地方の住宅市場の主役だった、年収500万円台の共働き世帯が、いまや「家を買う側」からこぼれ始めている、とも言われます。

これは、一部の特別な人の話じゃない。

まじめに働く、ごく普通の家庭に起きていることです。

いっぽうで、働く人の給料はどうか。

物価の上昇を差し引いた「実質賃金」は、2025年度まで4年連続でマイナスでした。

額面のお給料は上がっても、物価の上がり方に追いついていない。

2026年に入って少し持ち直しましたが、この秋以降、また水面下に沈むかもしれないと言われています。

やっかいなのは、額面の給料は増えていること。

数字だけ見ると上がっているから、「増えてるのに買えないのは、うちのやりくりが下手なのかな」と、また自分を責めてしまう。

でも、増えた額面以上に、物価と家の値段が上がっている。

物価の上がり方まで考えると、実際に使えるお金は、むしろ減っているくらいなんです。

ここを、取り違えないでください。

つまり、家の値段は1億円に届くほど上がったのに、みなさんの手取りは、それにまったく追いついていない。

しかも、価格が上がっている理由は、建設費の高騰、職人さんの不足、都心の土地の希少性、そして海外マネーの流入です。

どれも、みなさんが毎日がんばって働いていることとは、まったく関係のない話です。

家が買えないのは、みなさんの収入が少ないからじゃありません。

家の値段が上がるスピードに、お給料のほうが追いつけていない。

ただ、それだけなんです。

だからうちだけの問題、ではないんです。

同じ世帯年収でも、10年前・20年前に買えた家と、今買える家は、まるで違います。

収入は変わっていないのに、同じお金で買える家が、ひとまわりもふたまわりも小さくなった。

みなさんの努力が足りないんじゃなくて、家の値段だけが、どんどん先に上がっていっただけなんです。

たかゆき@🏠マイホームお金の相談窓口 on X — cover

「でも、周りは普通に買ってるよね?」

ここで、もやっとする人もいると思います。

「そうは言っても、友だちも同僚も、普通に家を建ててるけど…」と。

でも、その普通に買えてるように見える人の中身は、たいてい、こんな感じです。

親から数百万〜1,000万円の援助を受けている。

どちらかが、かなりの高収入。

あるいは、無理を承知で目一杯まで借りている。

もしくは、あなたが選ばないようなエリアで買っている。

SNSに並ぶ新築の写真は、その裏側までは映してくれません。

だから「うちだけ買えない」と感じてしまうけど、実際は、多くの家庭が、みなさんと同じところで立ち止まっています。

ぼくの相談でも、「高すぎて買えないのは、うちだけなんでしょうか」という声を、本当によく聞きます。

うちだけじゃないんです。

ただ、ここで安心して終わると、危ないんです

「そっか、時代のせいか」

そう思って、ほっとした人もいるかもしれません。

気持ちはわかります。

でも、ここで終わってはいけないんです。

「時代のせい」は、事実です。でも、それだけでは、1円も解決しません。

むしろ、そこで止まってしまったご夫婦が、2つの後悔のどちらかに進んでしまいます。

ひとつは、それでも欲しくて、背伸びして買うパターン。

「二人で稼いでるんだから、なんとかなる」と、ペアローンを目一杯まで組む。

でも、金利はこれから上がっていく時代です。

どちらかが体調を崩す、育休に入る、時短にする、転職して一時的に収入が落ちる。

二馬力が一馬力になった瞬間、その返済が、家計を一気に圧迫します。

しかも、片方が時短や休職になりやすいのは、たいてい子育ての時期。

それは、教育費が増え始める時期とも重なります。

収入が減る時期と、出ていくお金が増える時期が、ぴったり重なる。

ここで、目一杯まで借りたローンが、一気に重くのしかかってきます。

もうひとつは、諦めて、動くのをやめるパターン。

「今は高いから、様子を見よう」

これも気持ちはわかります。

でも、待っているあいだも、家賃は払い続けているし、その家賃も上がってきています。

数年後に価格が下がる保証はどこにもなくて、減っていくのは、あなたの年齢と、ローンを組める残りの年数だけ。

35年ローンは、35歳で組めば完済は70歳。

40歳まで待てば、75歳です。

待てば待つほど、返済が老後に食い込んでいきます。

背伸びして詰まるか、待っているあいだに、もっと届かなくなるか。

「時代のせい」って考えるのをやめると、だいたいこのどちらかになってしまいます。

そして、この2つの後悔の根っこは、同じです。

「全部を、なんとかしようとした」こと。

酷な話かもしれませんが、この時代、全部はもう無理です

じゃあ、どうすればいいのか。

ここから、少しきつい話をします。

この時代、「全部入り」の家は、もう無理です。

みなさんの親世代は、年収の数倍で、「都心寄り・新築・そこそこ広い・家計にも余裕・子ども二人・片方は専業でもOK」

こういう全部が、わりと普通に手に入りました。

でも、今は違う。

1億円の時代に全部を手に入れようとすると、

どこかに必ず、無理が出ます。

たいていは、家計か、家族の暮らしのどちらかです。

誤解しないでほしいのは、親の世代が特別すごかったわけじゃない、ということ。

当時は、家の値段が、今よりずっと給料に見合っていた。

ただ、それだけです。

同じだけ努力しても、時代が違えば、手が届く範囲はまるで変わる。

みなさんが親と同じようにいかないのは、自分の責任じゃなくて、当たり前のことなんです。

だから、これから家を買う人に本当に必要なのは、「いくらまで借りられるか」を知ることじゃない。

「何を一番大事にして、何をあきらめるか」を、夫婦で先に決めることです。

何をあきらめるか、その選択肢を挙げてみます。

どれも、簡単な話じゃありません。

でも、「全部は持てない」という前提で、読んでみてください。

・立地をあきらめる

都心や人気の駅を、郊外や各駅停車の駅、あるいは隣の県に。

価格がいちばん大きく動くのは、ここです。

はっきり言えば、「その街は、今のうちの年収では、もう無理」と認めることでもあります。

しんどいけど、ここを認めた夫婦から、選択肢が広がります。

・新築をあきらめる

中古を買って、必要なところにだけ手を入れる。

新築の新しさは数年で当たり前になるのに、新築と中古の価格差は、35年ずっと返済にのしかかります。

新築へのこだわりは、今いちばん高くつく見栄かもしれません。

・広さ・部屋数をあきらめる

子ども部屋は、大きくなってから仕切っても間に合います。

狭さは間取りの工夫で吸収できるけど、借りすぎた返済額は、工夫では減りません。

・終の住処をあきらめる

一生モノ、という幻想を手放す。

ライフステージが変われば住み替える、という前提に立てば、1軒目は小さく、安く始められます。

・今、買うこ自体を、いったんあきらめる

買わない、という選択も、立派な戦略です。

高い時期に無理して買って詰まるくらいなら、しばらく賃貸で身軽にしておく。

「賃貸は家賃を捨ててるだけ」ともよく言われますが、高値をつかんで金利上昇で苦しくなるほうが、よっぽどもったいない。

そのうえで、ぼくがいいと思うのは、頭金にするはずだったお金や、毎月の余りを、コツコツと積立投資(インデックス投資)に回しておくことです。

理屈はシンプルです。

物価が上がり続けるということは、世界中のモノやサービスの値段が上がっていく、ということ。

だったら、世界全体に薄く広く投資しておけば、特別な知識やテクニックがなくても、その値上がりの波に、自分のお金も乗せておけます。

現金のまま置いておくと物価に負けて目減りしていくけれど、投資に回しておけば、インフレと一緒に育っていく可能性がある。

そうやって時間をかけて育てたお金で、たとえば子育てが一段落したころに、郊外や、少し小さめの「終の棲家」を、無理のない形で買う。

若いうちに背伸びして35年ローンを組むより、こっちのほうが性に合っている、という家族も、これから増えていくと思います。

もちろん、投資なので増える保証はないし、値下がりする年もあります。

だから「当面使わない余裕のお金を、長い時間をかけて」が大前提。

一発当てる話じゃなくて、物価の上昇に置いていかれないようにする話だと思ってください。

・自分たちだけで買う"をあきらめる

親から援助を受ける、という手もあります。

ただ、これにも引き換えがある。

お金を出してもらうと、多かれ少なかれ、口も出されます。

住む場所や間取り、ときには名義にまで。

援助はありがたいものですが、「夫婦だけで決める自由」と引き換えになることは、頭に入れておいてください。

たかゆき@🏠マイホームお金の相談窓口 - inline image

そして、いちばん厳しくて、いちばん大事な話をします。

住居費を上げるということは、子どもの数や、教育にかけてあげられるお金や、老後の備えや、どちらかが働き方を変える自由を、そのぶん削る、ということです。

家というのは、家族が暮らすための「器」です。

その器を大きく立派にするために、中身である家族の暮らしや、これから選べるはずだった選択肢を削ってしまう。

それは、順番が逆なんじゃないかと思うんです。

立派な家に住んでいるのに、毎月の返済に追われて、旅行にも行けない。

二人目も迷う。

しんどくても、共働きをやめられない。

器は手に入れたのに、中の暮らしのほうが、どんどん苦しくなっていく。

これでは、なんのために家を買ったのか、わからなくなります。

「この家のローンがあるから、子どもはひとりにしよう」

「この返済が終わるまで、仕事は絶対に辞められない」

それを、2人が納得ずくで選んだのなら、いい。

それも立派な決断です。

でも、なんとなく家を優先して、気づいたら他のものを諦めていた。

これは、あとからじわじわ効いてきます。

あきらめることを、決められない。全部欲しい。

これが、この時代のいちばんの落とし穴だとぼくは思っています。

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じゃあ、何を"最優先"にすればいいのか

「あきらめろと言われても、何を残せばいいのか分からない」

そうですよね。

ひとつ、やってみてほしいことがあります。

夫婦それぞれが、紙に「これだけは譲れない」を、3つだけ書く。

立地でも、広さでも、新築でも、子どもにかけるお金でも、なんでもいい。

そして、その紙を、見せ合ってみてください。

たいてい、ズレます。

夫は立地、妻は広さと子どものこと、みたいに。

でも、そのズレが見えることが、スタートなんです。

全部は無理だと分かったうえで、「じゃあ、うちが最後まで守るのは、これだね」を、2人で1つか2つに絞っていく。

順番は、いつも同じです。

物件を探す前に、まず"何を守るか"を決める。

探しながら決めようとすると、目の前のきれいな家に気持ちを持っていかれて、いつのまにか、また全部を追いかけてしまいます。

「あきらめる」は、負けじゃない

「あきらめる」と何度も書きました。

負けたみたいで、嫌ですよね。

わかります。ぼくも、できることなら全部そろえてあげたい。

でも、この時代に全部を求めるほうが、かえって家族を苦しめます。

何を一番大事にして、何を手放すか。

それを2人で選び切れた家族が、この「高すぎる時代」でも、ちゃんと笑って暮らしています。

逆に、全部を欲しがったまま走った家族が、あとで苦しくなっていく。

ぼくは、その両方を見てきました。

背伸びをやめて、郊外の中古を選んだ夫婦が、そのぶん浮いたお金で、毎年、家族で旅行に行けている。

都心の新築じゃないけれど、そっちのほうが、ずっと幸せそうに見える。

そういうことが、よくあります。

器の大きさじゃなくて、中身の暮らしを選んだ結果です。

家が買えないのは、みなさんが頑張っていないからじゃない。

だから、自分を責めなくていいんです。

そしてあきらめる前に、まずは2人で話してみてください。

「うちが、いちばん大事にしたいものって、なんだろう」と。

そこさえ決まれば、この高い時代でも、みなさんにとっての正解の家は、ちゃんと選べます。

話し合いのきっかけが欲しいご夫婦へ

ただ、この「2人で話す」が、いちばんモメるところでもあります。

意見が割れたときのすり合わせ方は、前に1冊にまとめました。

『家を買うかどうかで夫婦がモメたら読む本』

うまく話せないときに、よかったらどうぞ⤵️

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