20代の頃、「何言ってるかわからない」の指摘は日常茶飯事だった。
自分ではちゃんと説明したつもりなのに、相手の顔が曇る。途中で「あ、これ伝わってないな」と気づく。でも、上司が怖い。止まるのも怖い。沈黙も怖い。だから補足する。
すると、もっと伝わらない。
控えめに言って地獄。
しかも厄介なのは、こういう経験をすると、説明はうまくなるどころか、どんどん下手になることだ。
また伝わらなかったらどうしよう。怒られたらどうしよう。変に思われたらどうしよう。
その焦りで脳のキャパがさらに埋まり、ますます言葉が渋滞する。
昔の私は、まさにこれだった。
でもその後、説明がうまい人たちと出会った。で、「この人たちは何が違うんだろう?」をかなり観察した。本も読んだ。言語化も鍛えた。
10年ぐらいかけてようやく、ああ、こういうことかと気づいた。
結論から言うと、違いはこの3つだった。
**・話す前にまず書き出す
・説明の目的を決める
・目的に合わせて並べ替える**
説明がうまい人は、口がうまいんじゃない。
口を開く前に、情報を一回こねくり回している。
最初は準備が必要。
でもこれを繰り返すと、だんだん脳内で自然にできるようになる。
つまり、抜群に説明が上手い人は、話す前の脳内処理が違う。
自分自身が、意識して取り組み、説明のコンプレックスを払拭することができた。
今日はその入口を言語化してみたいと思う。
1. まず書き出す
説明が下手な人は、頭の中で全部やろうとする。
整理して、順番を決めて、言い回しも考えて、相手の反応も予測して、抜け漏れも防ごうとする。
無茶だ。
脳のタブを30枚開いたまま、さらに会議を始めてるようなものだから。
そりゃ固まる。
だから最初にやるべきことは、うまく話そうとすることじゃなかった。
一旦、思考を外に出すことだ。
ここで大事なのは「綺麗なメモ」じゃない。雑でいい。箇条書きでいい。単語の羅列でもいい。とにかく一回、頭の中のデータを外に出す。
説明が下手な人ほど、脳内の倉庫をそのまま相手に見せる。なんなら全部見せようとしちゃう。
説明がうまい人は違う。
一回、机の上に全部出して、仕分けしてから渡す。
だから伝わる。
仕事の相談でもそう。
頭の中だけで喋り始めると、
「えっと、まず背景として…」
「いや、その前に経緯があって…」
「ていうか前提から言うと…」
と、入口が3つある迷路になる。
でも一度書き出すと、見える。
何が論点か。何がノイズか。何が重要か。
説明がうまい人は、話し始める前に準備してるだけだ。
最初からすらすら喋れているように見えても、実際には情報の下ごしらえが入っている。
料理でも、包丁も入れずに鍋に全部放り込んだら事故る。
説明も同じだ。
抜群に説明が上手い人は、話す前に脳内の材料を一度外に出している。
これが1つ目の違いだと思う。
2. 目的を決める
次に大事なのは、何のためのコミュニケーションかを決めることだ。
ここが抜けると、説明はすぐズレる。
同じ出来事を話すとしても、
・理解してほしいのか
・判断してほしいのか
・共感してほしいのか
・動いてほしいのか
で、必要な説明は全部変わる。
ここを決めずに話す人は、トッピング全部盛りマシマシで出す羽目になる。
背景も、時系列も、感情も、解釈も、懸念点も、伏線回収も、全部入れる。
それ、親切そうに見えて、ただの過積載です。事故ります笑。
例えば上司への相談なら、目的はかなり明確。
上司に必要なのは、あなたの脳内ドキュメンタリー全12話ではない。
判断材料だ。
この場合は、前提、現状、問題、結論、その根拠、どうしてほしいか。このあたりが大事になる。
逆に、恋愛相談やパートナーとの会話は違う。
ここで求められているのは、必ずしも正しい分析じゃない。
「わかるよ」「それ嫌だったよね」と、感情を受け止めてもらうことがゴールだったりする。
このズレ、よくある。
男性側は「解決しよう」として話し、女性側は「共感してほしい」として話している。
すると会話が噛み合わない。
相手は「しんどかった」を言ってるのに、こっちは「それなら次はこうすればいい」と改善案を出してしまう。
でもその瞬間、会話は問題解決じゃなくて、事故処理に変わる。
だから目的が大事って話。
上司なら、決断できるように。奥さんやパートナーなら、気持ちよく話せるように。
この目的が決まるだけで、選ぶ言葉も、情報量も、順番も変わる。
説明とは、知ってることを全部出すことじゃない。
相手に何を持ち帰ってほしいかを決めて、必要な部品だけを選ぶ作業。
抜群に説明が上手い人は、話す前に「この説明で何を起こしたいのか」を決めている。
これが2つ目の違いだった。
3. 目的に合わせて並べ替える
最後は、目的に合わせて並べ替えること。
ここができると、説明は一気にうまくなる。
説明が下手な人は、1と2をすっ飛ばして、いきなり並べ替えようとする。
でも、材料も散らかったまま、目的も曖昧なままでは、順番なんて決められない。
するとどうなるか?
漏れるのが怖いから、時系列で全部話し出す。
「最初にAさんから連絡が来て、そのあとBの件も重なって、もともと前から少し気になっていて…」みたいなやつだ。
本人は安心する。全部話してるから。
でも聞く側はしんどい。
なぜならそれは、
情報の交通整理を、相手の脳に丸投げしているだけだからだ。
これはかなり負荷が高い。
二流のコミュニケーションと言っていい。
相手のワーキングメモリに、土足で上がり込んでる。
大事なのは、自分が話しやすい順じゃない。
相手が理解しやすい順で届けること。
しかも、その順番は目的で変わる。
たとえば上司に相談するなら、前提、結論、問題、根拠、提案。この順の方が良かったりする。
上司は「で、何を判断すればいいの?」を早く知りたいからだ。
一方で、奥さんやパートナーに話す時は違う。
ここで最優先なのは、論理の美しさではなく、関係性の平和だったりする。
だからまず、感情を受け止める。共感する。相手の話を飲み込む。必要なら最後にだけ意見を足す。この順になる。
ここでいきなり正論を出すと終わる。
和平条約を結ぶ場で、宣戦布告が始まってしまう。
説明がうまい人は、相手や場面に応じて、情報を自由自在に圧縮できる。
抽象にも具体にも行ける。長くも短くもできる。
つまり、
情報をZIPファイルにできる人なんですよね。
そのままのデータを渡すんじゃない。
相手のパソコンで開ける形に、圧縮して渡してる。
だから伝わる。
抜群に説明が上手い人は、情報を時系列で垂れ流さない。
目的に合わせて並べ替え、相手が開ける形にして渡している。
これが3つ目の違い。
まとめ
説明が下手な人は、語彙が足りないわけでも、表現力が弱いわけでもない。
多くの場合、問題はもっと手前にある。
脳内のデータの扱い方をミスってる。
整理できていない。目的が決まっていない。周りを見る余裕がない。
結局これは、センスの問題というより、脳のキャパの使い方の問題なんですよね。
逆に言えば、ここを整えるだけで、説明にはかなり余裕が出る。
**・まず書き出す
・で、目的を決める
・それから、目的に合わせて並べ替える**
この3つをやるだけで、脳内の渋滞が減る。
すると、相手も見えるようになる。会話の空気も読めるようになる。結果として、説明もうまくなる。
説明とは、知識の披露や情報量アピールではない。
相手の頭の中に、無駄なく景色を再現し共有する技術だと思う。
もっと雑に言えば、自分の脳のUSBメモリから、相手の脳のパソコンに、ちゃんとデータをダウンロードできれば勝ちである。
その時に必要なのは、データ量を増やすことじゃない。
相手が開ける形にして渡すこと。
つまり圧縮だ。
説明がうまい人は、情報を自由自在に圧縮できる人。
抽象と具体を行き来しながら、相手に合わせてサイズを変えられる人だ。
昔の私は、それができなかった。
でも、やり方を知ってからかなり変わった。
だから、説明が下手だと思っている人も、才能がないわけじゃない。
まだ、脳内データの扱い方を知らないだけだ。拡張子を間違うと開けなくなるのと同じ。
今日の内容を意識して、まず自分の脳内データの整理から始めてみて欲しい。
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**参考書籍+オススメ書籍 『考える技術・書く技術』バーバラ・ミント 著/グロービス・マネジメント・インスティテュート 訳/ダイヤモンド社 『1分で話せ』伊藤羊一/SBクリエイティブ 『説明の一流、二流、三流』桐生稔/明日香出版社**





