Don't Pollute the First Touch of Information: Lessons from "Kokuhou" and "Slam Dunk"

@you1026
日本語2 か月前 · 2026年5月31日
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TL;DR

This article explores the "no-advertising" marketing strategy used by films like Slam Dunk and Kokuhou, arguing that avoiding corporate hype preserves the "first touch" of information for more credible social proof.

映画「国宝」の大ヒットで考えたことがある。

それは映画の新しい広告手法が「これで完全に確立された」ということだ。

その兆しは2022年12月に公開された映画「THE FIRST SLAM DUNK」からはじまっている。

「THE FIRST SLAM DUNK」は、いきなり始まった

一部のファンの中では話題になっていたが、マスメディアには一切露出しなかった。

前評判を煽るTVCMや新聞広告、屋外広告もなく「いきなり公開した」という印象を持った人がほとんどだろう。

評判はじわじわ広がり、結果的に(2022年公開なのに)2023年の興行収入のトップになった。

当時、この「広告しない」という手法は話題になり、2023年のジブリ映画「君たちはどう生きるか」にも引き継がれていく。

映画「国宝」もそうだった。

私も含め、多くの人が「いきなり始まった」という印象を持ったと思う。

ではなぜ、この手法がヒットにつながっていくのか。

(もちろん作品自体が素晴らしいことは大前提として)マーケティングの観点からもう少しツッコんで考えてみたい。

キーワードは「情報のファーストタッチ」だ。

◾️異例の手法から企業の戦略へ

少し前のことだが思い出してほしい。

あなたは映画「国宝」をどうやって知っただろうか。

私の周りでは「SNSで友人が観ているのを見て、知った」という人が多かった。少なくとも私はそうだった。

フォローしている2〜3人が同じ映画を観ているものだから、ネットで調べてみた。

吉沢亮、横浜流星、渡辺謙、寺島しのぶ、田中泯、永瀬正、、、

という名だたるキャストを見て「なんでこのクラスの映画が、いきなり公開しているんだ」と驚いたことを覚えている。

それと同時に「大々的な事前広告をやらない」ということが、企業としての戦略であるようにも感じた。

「THE FIRST SLAM DUNK」は作者の井上雄彦先生、「君たちはどう生きるか」は鈴木敏夫プロデューサー、という強いカリスマの決定だったからこそ実現できたはずだ。企業側の「広告しないんですか・・・」という不安を押し切った異例の手法だったと思う。

しかし映画「国宝」が、企業戦略として大々的な事前広告をしていなかったとしたら、それはカリスマだからできた異例のやり方が「新しい企業のマーケティング戦略」に昇華した瞬間だった。

◾️情報のファーストタッチを汚さない

では、この時代になぜ「大々的な事前広告をしない」手法が有効なのか。それを説明するには、これまでの広告の常識をおさらいする必要がある。

かつての映画の広告といえば「いかに事前告知で煽るか」が重要だった。

この手法はティザー広告と呼ばれた。ティザー(teaser)には「焦らす」という意味がある。つまり公開前に焦らして焦らして、公開初日にピークを迎えるような設計が正攻法とされていた。

また映画は舶来品(洋画)が前提だったので、

「全米が泣いた」

的な煽りで、日本公開に期待を持たせる展開が当時の当たり前だった。

小島 雄一郎 - inline image

しかし「全米が〜」がもはやネタになるほど、この手法は陳腐化した。キャッチコピーの表現が古臭くなるだけならまだしも、戦略自体が古臭いものになった。

と言うのも、映画の広告が散々煽っていた時代は「口コミ」がなかった時代だ。評判がここまでリアルタイム性とスピード感を持って拡散することがなかった。

だから初速MAXでよかった。

中身はどうあれ「とりあえず煽っておけば評判になる」と考えて、戦略が設計されていた。期待外れだったとしても、それは見た人にしかわからない。1人の感想が、そこまで大きな影響力を持っていなかったのだ。

だから広告は「煽り」を続けた。そして煽り続けている間に、広告は自らの信用力を失っていった。

小島 雄一郎 - inline image

広告が信用力を失う間に、「口コミ」はその信用力を増していった。

企業の広告が言っているなら信頼できないけど、身近な友人が言っているなら信用できる。

いつしかそれが当たり前になった。

同時に重要になったのが、情報接触の順番だ。

つまり「最初に知ったのは誰からか?」

という情報のファーストタッチに重きが置かれるようになった。

これまでは企業(当事者)による広告が情報のファーストタッチになることが多かった。しかし前述のように広告は信用力を失っている。そんな時代に「最初に知ったのは企業の広告」という情報は信頼されにくい。

そんな時代に発明されたのが「広告しない」という広告手法だ。

公開前に企業(当事者)は情報を発信しない。これにより企業は情報のファーストタッチをコントロールすることができる。

小島 雄一郎 - inline image

企業が発信しなければ、自然と情報のファーストタッチは口コミになる。

これまでは「口コミが起こらなかったらどうしよう」という不安から企業は広告を行っていた。しかしそれによって情報のファーストタッチが広告になってしまい、結果的にマイナスからのスタートとなっていた。

だったらせめてフラットからのスタートになったほうがいい。そのために唯一企業ができることが「広告しない」ということなのだ。

小島 雄一郎 - inline image

この手法を取ると、企業は自らのハードルを下げることができる。

これまでは、公開前に散々煽っていたので期待値は募る一方だった。広告を始めた時にはまだ観られないので、生活者は「まだか…まだか…」と公開日を楽しみにしていた。

だからその分、内容が期待にそぐわなかった時にその落胆も倍増した。

しかし広告しない手法なら、それは起こりえない。

公開中の評判がファーストタッチで伝わるので「じゃあ明日行こっかな」と気軽な気持ちで臨むことができる。

そこまで煽られていない分、期待はずれでもガッカリ感は少ない。期待以上だったなら、その興奮がまたSNSの投稿につながるだろう。

私にとっての国宝がまさにそうだった。

広告のために広告しない。

これはシニカルなパラドックスのように思えるが、生活者の新鮮な感想を汚さない努力とも言える。

マークザッカーバーグは言った。

「広告費というのは、企業がつまらないサービスやプロダクトをつくったことに対する罰金である」

企業は広告宣伝に頼るのではなく、コンテンツの質を上げることに集中する。

そんな当たり前の戦略が、現代の企業が取りうる唯一真っ当なマーケティング戦略なのかもしれない。

小島 雄一郎 - inline image
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