先日、40歳を迎えた。
ここ数年で、体力の衰えを如実に実感するようになった。少し無理すると、すぐ疲れる。夜に予定を入れるだけでしんどい。休日も、楽しむより回復で終わる日がある。
一方で、30代でバリバリ仕事をこなし、家庭もプライベートも充実している「体力お化け」みたいな人がいる。
ああ、人生の土台はやはり体力なんだなと思った。
私は幼少期からアトピーで体が弱く、いじめられっ子でもあった。正直、体力がある側の人間ではなかった。だからどこかで、体力は才能みたいなものだと諦めていた。
でも38歳ごろから、少しずつ考えが変わった。体が弱いなりに、「疲れずに体力をつける」という現実的なラインが見えてきたからだ。
ストイックに筋トレして朝活バキバキ、みたいな話ではない。虚弱な人間が、虚弱なりに出力を上げるための工夫の話だ。
今回目指すのは、生まれつきの“本物の体力お化け”になることではない。
あくまで“擬似体力お化け”を目指す方法だ。
虚弱な私が、試行錯誤と実験を通して、人並み以上の行動力を手に入れるために組み立てたノウハウでもある。
体力お化けに見える人の正体は、「自分のエネルギー管理がうまい人」だと思う。目に見えないところでちゃんと抜いている。余計に疲労をためない。崩れても回復が早い。だから、ずっと動けるように見える。
つまり、体力の総量だけで勝っているのではない。使える体力を、必要な場所に残すのがうまい。
30代で体力の差が開くのも当然で、若い頃の“貯金”を少しずつ吐き出す時期だからだ。20代までは、多少の無理も気合いで押し切れる。1日ぐらい夜更かししても回復する。食生活がジャンクでも、なんとなく動ける。
でも30代に入ると、話が変わってくる。悪い習慣のダメージが蓄積する。回復にも時間がかかる。気づいた時には、疲れやすい、太りやすい、集中できない、休日が回復で終わる、みたいな状態になる。
かなりマズい。体力をつけるための体力が、ない……。実際、私自身も陥った罠だった。
それを回避して「擬似体力お化け」を目指す考え方は3つある。
**① ダメージを抑える。まずはエネルギー流出を減らす
② エネルギー消費を抑える。燃費を良くし、無駄に疲れない状態を作る
③ 体力のストックを増やす。予備タンクを持ち、多少の無理でも落ちにくい体にする**
つまり、無理してガッツで強くなるのではなく、
削られにくく、疲れにくく、少し無理が効く自分を準備するプロセス。
それが、「擬似体力お化け」を目指す方法だと30代後半の時期を通じてわかってきた。
今日はそんな「30代で擬似体力お化けになるための小さな習慣」を、10個に絞って言語化してみたい。
1.とにかく睡眠を最優先にする
結局、これが土台だ。
メンタルもモチベも、かなり睡眠に左右される。睡眠不足になると判断も鈍る。しかも怖いのは、寝不足の時ほど、自分のパフォーマンス低下に鈍感になることだ。
Van Dongenらが健康な成人を対象に行った実験では、睡眠時間を1日4時間または6時間に制限すると、14日間にわたって認知機能の低下が蓄積した。一方で、本人が感じる眠気は、実際の能力低下ほど増えていなかった。
つまり脳の働きは落ちているのに、自分では「慣れてきた」と勘違いしやすい。
さらにいろいろなところで、擦られているDawsonとReidの研究では、17時間連続で起きていた時の認知・運動能力の低下が、血中アルコール濃度0.05%付近の状態に相当すると報告されている。
寝不足は、本人の気合いとは関係なく、判断力と反応速度を削る。
寝不足の時ほど「まだいける」は信用しない方がいい。
睡眠不足になる。仕事に時間がかかる。終わらない。寝るのが遅くなる。またパフォーマンスが落ちる。このループがヤバい。
疲れずに体力のベースラインを上げるには、まず睡眠の確保が大事だ。睡眠時間を犠牲にして頑張るのではなく、何がなんでも睡眠時間を確保する。これぐらいでちょうどいい。
擬似体力お化けは、睡眠を削って長く働く人ではない。よく寝ることで、起きている時間の出力を高く保てる人だ。
2.腸内環境を大事にする
腸内環境は超大事だ。
ダジャレではない。
腸と脳の間には、神経・免疫・内分泌などを介した双方向の連絡経路があり、「腸脳相関」と呼ばれている。気分やストレスと消化器症状が互いに影響し合うこと自体は、研究でも支持されている。
ただし、人間の腸内細菌を変えれば、すぐメンタルや集中力まで改善する、と言える段階ではないので注意が必要だ。
Gastroenterology誌のレビューでも、動物研究では有望な結果がある一方、人間の診断や治療へ応用するには、まだ検証が必要だと整理されている。
とはいえ私個人は、この影響をかなり実感している。体が重い。頭がぼんやりする。謎に不安定になる。そういう時、腸の状態が悪いことが多い。
35歳の時にアレルギーをかなり改善できたと感じた時期があったが、あの時はひたすら腸内環境を整えることを2カ月ほどやった。今でも悪化したら、まずそこを見直す。
しかし、長く続く腹痛や下痢、強い疲労があるなら、自己流で食材を抜き続けるより、医療機関で原因を確認した方がいい。
日常でできるのは、食物繊維をとる、食べすぎを減らす、発酵食品を試す、同じ食品ばかりに偏らない、といった地味なことだ。気になる人は、パレオダイエットや地中海式ダイエットを調べてみるとヒントが得られる。
擬似体力お化けを目指すなら、ハードなトレーニングより先に腸内を見る。
腸が乱れると、人生まで乱れていく。
3.毎日汗をかく
最近、汗をかいていないなら、たぶん日常の活動量が落ちている。
ここで言う汗は、サウナで受け身でかく汗ではない。体を動かしてかく汗だ。駅で階段を使う。一駅分歩く。少し早歩きする。たまに階段を上がる。
ハードな運動をいきなり習慣化するのは難しい。でも、毎日少し体を使う生活は作れる。
体力が落ちる人は、運動不足というより、日常で体を使わなくなっていることが多い。ジムで意識高く鍛える前に、座りっぱなしを減らし、移動の中へ活動を戻す方が始めやすい。
大事なのは、汗そのものではない。汗をかく程度に、心拍数と活動量を上げることだ。
毎日の生活の中で少しずつ汗をかくようになるだけで、体力の底はかなり変わる。
4.週に1回は息が上がる運動をする
毎日動くことは大事だ。でも、それだけだと体力が伸びきらない部分もある。
だから、週に1回は息が上がるレベルの運動を入れる。これは心拍数を上げ、心肺機能に少し強めの刺激を与える取り組みだ。
といっても、ガンガン走らなくていい。激しい部活みたいにやる必要もない。早歩きの散歩20分、エアロバイク、バーピー、強度を調整したHIIT。このあたりからでいい。
ちなみに私は2日に1回くらいHIITをやっている。初心者なら、タバタ式の時間構成を参考にしつつ、最初から全力で追い込まず、息が弾む程度から始めた方がいい。(YouTubeでタバタ式と検索するのがオススメ)
WHOは成人に対して、週150〜300分の中強度運動、または75〜150分の高強度運動、もしくは両者の組み合わせを推奨している。
だから「週1回」は完成形というより、動いていなかった人が心肺へ刺激を戻す入口だと思ってほしい。
日常の活動量を増やすことと、たまに心肺に刺激を入れること。この両方があると、体力はかなり変わる。
擬似体力お化けは、毎日限界まで追い込む人ではない。日常で汗をかき、無理のない範囲で心肺へキツめの刺激を入れる人だ。
5.ストレスの原因を排除する
ストレスは、実用上2種類に分けて考えている。
ひとつは、良いストレス。主体的で、終わりがあり、達成感につながるものだ。(ゲームとかに近い)
もうひとつは、悪いストレス。受動的で、慢性的で、終わりが見えず、じわじわ削ってくるものだ。(クソ上司の理不尽とか)
この悪いストレスは、本当に危ない。心をむしばみ、悪い習慣を増やす。夜更かし、暴飲暴食、だらだらスマホ、逃避。こういうものが増えているなら要注意だ。
自分ではメンタルが強いと思っていても、生活が壊れているなら、もう壊れかけている。
だから必要なのは、対処療法だけじゃない。
根源を断つことだ。
おすすめは、まず紙に書き出すこと。何がしんどいのか。何が気になっているのか。何にメンタルが削られているのか。それを見える化して、深掘りして、対策を考える。
転職を決めた人のパフォーマンスが急に上がることがあるのも、根源を断つからだ。ストレス源そのものが消えていなくても、「ここから離れられる」と出口が見えた瞬間、使えるエネルギーが戻ることがある。
体力づくりというと運動をイメージしがちだが、ストレス源を減らすだけで、実質的に使える体力はかなり増える。
6.疲れる条件を知っておく
これも個人的にはかなり役立つ。
自分が何で疲れるタイプなのか。何をすると一気に体が重くなるのか。これを知っているだけで、だいぶ違う。
たとえば、
**・睡眠不足の翌日に予定を詰めると終わる
・人と長時間過ごすと疲れる
・会食が続くと起きられなくなる
・MTGを1日5時間すると脳が熱を持つ
・食べすぎると翌日使いものにならない**
こんな感じだ。
自分の削られポイントを知っておくのはかなり大事だ。体力がない人ほど、強い人の真似をすると崩れる。
だから必要なのは、自己否定ではなく自己理解だ。
「私は何で疲れるのか?」を知っておくと、体力はかなり守りやすくなる。おすすめは、疲れた日の前日を3行だけ記録することだ。睡眠、食事、予定。この3つを見るだけでも、自分を削るパターンが見えてくる。
擬似体力お化けは、自分の弱点を知って、先回りで対策できる人でもある。
7.心の洗濯場所を確保する
どうしようもなく疲れた時、嫌になった時、心の洗濯をしに行く場所を持っておく。これは現代人に必須だと思う。
家庭を持ったり、役職を持ったりすると、こういう場所は意識しないと消える。サウナブームも、この一因はある気がする。
私で言えば、
**・サウナ
・スーパー銭湯
・漫画喫茶
・個室で静かに過ごせる場所
・行きつけの中華料理屋
・お気に入りの大型書店**
このへんがかなり効くとわかった。
外界を遮断できる場所。何も考えなくていい場所。誰にも期待されない場所。こういう場所があるだけで、体力だけじゃなく、気力も戻りやすい。
大事なのは、「何をすれば元気になるか」を、疲れ切ってから考えないことだ。疲れる前に、自分の回復場所を登録しておく。
頑張る技術だけじゃなく、ちゃんと戻る場所を持つ。鍛えるだけでなく、リフレッシュできる時間を確保する。これが大事だ。
8.サプリをいろいろ試してみる
サプリは、あくまで補助だ。けど、結構効く。
実は、不足している栄養を補う時に、いちばん効果を感じやすい。
生活が崩れているのに、サプリだけで何とかしようとするのは違う。でも、土台を整えたうえで使うなら、役立つこともある。しかも、人によって不足しているものや相性のいいものは違う。
たとえば私の場合、集中力を上げたい時は、テアニンをカフェインとセットで使う。
アレルギー体質には、高吸収タイプのクルクミンが体感しやすかった。
やる気が出ない時は、クレアチンが効いた。寝つきが悪い時は、マグネシウムが助けになることがある。
ただし、これはあくまで私自身の体感で、全員に同じ効果が出るという話ではない。
「いろいろ試す」といっても、同時に何種類も入れると、何が効いたのか、何が合わなかったのかわからなくなる。使うなら成分量や薬との相互作用を確認し、ひとつずつ試す方がいい。
そして、強い疲労が長く続くなら、サプリ探しの前に原因を確認する。貧血、睡眠時無呼吸、甲状腺の問題など、生活改善だけでは解決しない疲労もある。
主役は生活。サプリは補助輪。
この順番は忘れない方がいい。擬似体力お化けは、魔法のサプリで作るものではない。
生活の土台に、足りない成分を少し足して作るものだ。
9.たまにデトックスする
ここで言うデトックスは、謎のスピリチュアルな話ではない。体内の毒が都合よく抜ける、という話でもない。
単純に、食べすぎや荒れた食生活で重くなった体を、一度軽い状態へ戻す感覚の話だ。
私の場合、
ファスティングや、いわゆる四毒断ち
のようなことを、たまにやる。ただし、これらが万人に必要な医学的デトックスという意味ではない。長期間の断食や、理由なく幅広い食品を抜く方法は、人によっては逆に体調を崩す。
大事なのは、極端な健康法の名前ではない。
**・食べすぎをやめる
・間食と酒を一度減らす
・荒れた食事をシンプルに戻す
・自分が不調になりやすい食べ方を見直す**
このくらいからで十分だ。
ずっと食べる。ずっと刺激物を入れる。ずっと内臓を働かせる。これを続けて重くなっているなら、一度休ませる。リセットする。
毎日完璧にやる必要はない。でも、崩れた時に戻せる方法を持っていると強い。
体力がある人は、いつも万全なわけじゃない。崩れることをわかっていて、必要に応じて戻し方を知っている。ここがかなり大事だと思う。
10.疲れてる自分を基準に予定を組む
最後に、個人的にかなり大事なのがこれだった。
疲れてる自分を基準に、予定を組む。
私たちは、100mを15秒で走れるから、10kmもその延長で1500秒、つまり25分で走れる、みたいな予定を立てがちだ。
でもそれだと、フルマラソン日本記録ペースみたいな無茶になる。
だから、100mを1分ぐらいの、疲れてる自分でもいけるペースで予定を組むべきだ。これなら、途中で歩いてもいいし、多少ブレても崩れにくい。
特に体力がない人がやりがちなのが、体力をつけようとして疲弊し、むしろ前より動けなくなることだ。
私も何度もあった。生産性で言えば、むしろマイナスだ。
だから、元気な日の自分を基準にしない。疲れてる日でも回る設計にする。予定を8割まで埋めるのではなく、最初から余白を残す。夜に重要な判断を置かない。重い予定の翌日は軽くする。
体力は結局、行動力でしかない。だから予定は、理想の自分ではなく、疲れてる自分でも回る形にしておく。
擬似体力お化けは、崩れにくいペース設計がうまい人なんだと思う。
疲れているあなたへ最後に伝えたいこと
30代で体力の差が大きくなるのは、若い頃の貯金を少しずつ吐き出す時期だからだ。悪い習慣のダメージも蓄積する。気づいた時には、疲れやすく、太りやすく、集中も切れやすくなっている。
だから必要なのは、無理して強くなることじゃない。
ダメージを抑える。エネルギー消費を抑える。体力のストックを増やす。
この3つを地味に積み上げることだ。
具体的には、
**・睡眠を最優先にする
・腸内環境を整える
・毎日少し体を動かす
・息が上がる運動を入れる
・ストレスの根源を断つ
・疲れる条件を知る
・心の洗濯場所を持つ
・サプリを補助として使う
・崩れた食生活をリセットする
・疲れてる自分を基準に予定を組む**
こういう小さなことを積み重ねる方が、結局いちばん良かった。
擬似体力お化けは、目に見えないところで抜き、余計に削られることを避け、戻る仕組みを持っている。体力が無限にあるのではない。有限の体力を、無限っぽく見せる運用がうまい。
私もまだ道半ばだ。でも、虚弱寄りでも少しずつ変われることは実感している。
だからまずはひとつでいい。
体力をつける前に、体力を削る習慣を減らすところから始めるのがいいと思う。
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