人類史上空前の規模となるSpaceX社のIPOとその目論見書が話題です。中身をよく読むと「インターネット産業30年史」の次に来るものが明確に提示されている事に気がつきます。
私の初の著作である
7つの激変: いかがわしい者たちが主役の「インターネット産業」30年史で、
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がどのように産業化していったのか、そして、来るべきAI駆動型社会への心構えを書きました。

予約段階にも関わらずAmazon「ビジネス書」カテゴリで1位にもなった本著。
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この本を書き終えてこの30年を振り返るに、孫さんのヤフーBB!然り、
「情報を扱うコストをいかに下げるか」
の歴史でした
SpaceXの目論見書
を読むと、そこに書かれているのは地球における人間社会の情報革命の続きの話ではない印象です。
もっと大きい。これは、
「物理世界のコストをソフトウェア化する革命」
の宣言書に見えて来るのです!
以下、その根拠を著作同様、7点に渡り、徒然なるままに書いていきます。
①SpaceXはロケット会社ではない
多くの人はSpaceXを
「ロケット会社」
だと認識しています。
しかし目論見書を読むと、その認識は正しくない事が分かります。
SpaceXが作っているのはロケットではない。
彼らが作った、作ろうとしているのは、
地球規模を超えた太陽系内インフラ
なのです。
ロケットはその手段に過ぎない。
インターネット企業に例えるなら、
Googleが検索エンジンを作っていたのではなく、
「世界中の知識へのアクセス基盤」
を作っていたのと同じことです。
②Starlinkこそ本体
目論見書を読むと驚きます。
収益の中心はロケットではない。
Starlinkなのです。
Starlinkは、私も狩猟や釣りなど僻地での通信で既に利用しているし、ウクライナ戦争初期での戦況に大きく影響を与えた事は有名な話です。
要するに、Starlinkは単なる衛星通信サービスではない。
本質的には
宇宙版インターネット
を構想しているように思えます。
1990年代、インターネット企業は回線会社に依存していました。通信が遅くて細いナローバンドのままではYahoo!等の投資先サービスのトラフィクも伸びないと悟った孫さんは自らヤフーBB!をはじめて通信業界に後に参入しました。NTTの回線を借りて。
しかしSpaceXは違う。
通信網そのものを所有している。
あの時のYahoo!が電話会社を持っていたらどうなったか。
Googleが海底ケーブルを全部持っていたらどうなったか。
その答えがStarlinだと思うのです。
③新しい垂直統合のカタチ
インターネット産業の30年は分業の歴史でした。
サーバー会社
通信会社
OS会社
検索会社
EC会社
それぞれ別でした。
そして、一周回ってGAFAMらは垂直統合に向かっている意味合いを「7つの激変」では最終章で解説しています。
しかしSpaceXは違う。
彼らは
- ロケットを作る
- エンジンを作る
- 衛星を作る
- 通信網を作る
- ソフトウェアを書く
- AIを作る
すべて自前でやることを初めから目論見書に書いています。
これは20世紀型の垂直統合ではない。
21世紀型、確信犯の垂直統合。
ソフトウェアの力によって、巨大企業病を起こさずに垂直統合を成立させるチャレンジに思えます。
④発射回数が意味するもの
2012年に新体制となる前のヤフーの主要KPIは月間のユーザー数とインプレッション数でした。それを新体制で宮坂社長と副社長となった私はDAU(Daily Unique Browser)とスマホのアプリのDL数に瞬時に切り替えました。
スペースXの目論見書にはロケットの打ち上げ回数の数字が並びます。
普通の読者はここを飛ばします。
しかし実はここが重要。
なぜなら、
ロケットの価値は打ち上げそのものではないから。
重要なのは
打ち上げ頻度。
かつてインターネット企業は
「アクセス数」
を競った。
クラウド企業は
「サーバー台数」
を競った。
AI企業は
「GPU数」
をいま競ってます。
SpaceXは
打ち上げ頻度
を競っている。
つまり**ロケットを製品ではなく
インフラとして扱っている**のです。
**
⑤AIと宇宙の融合
目論見書の本当の読みどころはここからです。
多くの人は
AI企業と宇宙企業を別物だと思っている。
しかしSpaceXの世界観では違う。
AIに必要なのは
- 計算資源
- 通信網
- データ
です。
Starlinkは通信網になる。
衛星はデータ取得装置になる。
宇宙は巨大なセンサーネットワークになる。
つまり、
SpaceXは宇宙産業をやっているのではない。
AI時代の太陽系インフラを作っている
と自己認識しているのです。
**
⑥国家と競争する会社
これが最も衝撃的でした。
SpaceXの競争相手は他の民間企業ではない。
国家である、としています。
NASA
ESA
ロシア
中国
本来なら国家しかできなかったことを、
民間企業が行っている。
これはインターネット黎明期とよく似ています。
1995年、
国家や通信事業者が支配していた情報流通を、
ベンチャー企業が奪った。
SpaceXは今、
宇宙で同じことをしている。
ベンチャーとしてこれほど痛快な志もないでしょう。
イーロン・マスクがIPOでやろうとしていること。
多くの人は
イーロン・マスクはロケットを作った
と思っています。
が、彼が作りつつあるのは、
コスト削減の新しい方程式
です。
Amazonが物流コストを下げた。
Googleが情報探索コストを下げた。
OpenAIが知的労働コストを下げた。
SpaceXは
太陽系における宇宙輸送コスト
を下げている。
歴史を変える企業は
必ず巨大なコストを下げている。
SpaceXも例外ではないのです。(目論見書には、AIの"1トークンあたりコスト"という概念も書かれています)
⑦『7つの激変』の次に来るもの
インターネット産業30年史は、
人類が情報をデジタル化する物語でした。
しかしSpaceXが示している未来は違います。
次の30年は
- エネルギー
- 輸送
- 製造
- 通信
- 宇宙
そのすべてがソフトウェア化される。利用したい時にのみ利用できる様になる。
検索エンジンは知識を民主化した。
スマートフォンは情報端末を民主化した。
生成AIは知的生産を民主化しつつある。
そしてSpaceXは
宇宙そのものを民主化しようとしている。
結論、
SpaceXの目論見書はただのIPO資料ではないです。
これは
「地球を覆い尽くしたインターネット後の世界はこうなる」
という未来宣言書でもあると思います。これが「アメリカ独立宣言」みたいに国家の宣言ではなく、イチ民間企業の宣言である点が時代を象徴しているなと思えます。
『7つの激変』が描いたのは、情報革命の30年でした。
SpaceXのIPO目論見書が描いているのは、
情報革命が物理世界へ侵食していく最初の30年
の夢を描いているように思います。
だからこの目論見書は、
ロケット企業の財務資料として読むより、
「次の激変の設計図」
として読む方が面白いでしょう。
Space Xの目論見書を読んだら、温故知新で「7つの激変」もお読みください!
あ、あと、投資は自己責任でお願いしますね。
7つの激変: いかがわしい者たちが主役の「インターネット産業」30年史
川邊健太郎著
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