同じ無料のAIを使っているのに、なぜあの人だけ仕事が速いのか。
答えは能力の差ではなく、「開き方」の差です。
多くの人は、用があるときだけAIを開きます。
調べたいことができたら聞く。要約してほしい文章があったら貼る。
それでも便利です。ただ、それだとAIの一番おいしい部分を、手つかずのまま残しています。
その「おいしい部分」を徹底的に使っているのが、DeNA創業者の南場智子会長です。
元マッキンゼーの経営者が、AIに賭けている理由
南場さんは、マッキンゼー出身のコンサルタントからDeNAを立ち上げた、論理とスピードの人です。
そのDeNAは2024年、AIを事業成長の柱の一つに据えると公式に打ち出しました。
注目すべきは、その中身です。
AIを専門部署だけの道具にせず、全社員が日常業務で使いこなす前提で組織を動かすと、南場さんはインタビューで繰り返し語っています。
つまり「たまに頼る便利ツール」ではなく、仕事の土台そのものを組み替える存在として扱っている。
この向き合い方を貫いているのは、たった2つの原則です。
1つは、判断を止めないための「速さ」。
もう1つは、号令をかける前に自分が使う「率先」。
どちらも、予算ゼロで今日から真似できます。
ここからは、それを5つの習慣に分解して紹介します。
習慣①:「わからない」を、その日のうちに消す
会議で飛び交う専門用語。取引先の資料に並ぶ横文字。
わからないまま頷いて、家に帰る頃には調べる気も失せている。
この放置が、じわじわ仕事を遅くします。
南場さんは、圧倒的な学習スピードで知られてきた経営者です。知らない領域に直面したら、まず概要をつかみに行く。その初速を、いまAIが支えています。
コツは、聞き方を2段階に分けることです。
「この技術を、新人に教えるつもりで、例え話を入れて説明してください」
まず平易な理解を取る。そのうえで、実務に引き上げます。
「では、この技術を仕事に導入するとき、失敗しやすいポイントを3つ挙げてください」
やさしい説明から実務判断まで、5分で登れます。
ひとつだけ注意を。AIの説明は入口であって、最終回答ではありません。大事な判断に使うなら、一次情報での確認をワンセットにしてください。
習慣②:最初の60点は、AIに書かせる
企画書、報告書、メールの下書き。
この手の作業で一番重いのは、内容を考えることではありません。
白紙に最初の一行を置くことです。
南場さんの信条であるスピード経営は、まさにここに直結します。人間が唸っている時間を、AIの叩き台で消してしまう。
たとえば、こう投げます。
「明日の打ち合わせのアジェンダ案を5つ。それぞれの狙いを1行ずつ添えてください」「この報告の骨子を、結論・理由・裏づけ・次の一手の4部構成で書いてください」
出てきたものは60点で構いません。
そこに「この理由は弱い」「順番を入れ替える」と赤を入れていくのが人間の仕事です。
0を1にするのはAI。1を10に磨くのが人間。
この分担を逆にしないことが、速さの正体です。
習慣③:わざと反対させる
一人で考えたアイデアは、一人分の視野しかありません。
「これで本当にいいのか」と思いながら、確かめる相手がいない。
そこで、AIを賛同者ではなく反対者にします。
論理の穴を突く思考は、コンサルタント時代からの南場さんの武器です。その役回りを、AIに演じさせるイメージです。
ポイントは、立場を指定すること。
「あなたがこの提案の決裁者なら、却下する理由を3つ挙げてください」「一番厳しいお客さんの立場で、この企画の引っかかる点を指摘してください」
返ってきた反論に、再反論する。この往復を数回まわすだけで、提案の穴は目に見えて埋まります。
立場を「上司」「競合」「初めて読む人」と替えれば、一人で会議を一周できます。
ただし、AIの指摘はあくまで論点の洗い出し。採用するかどうかの最終判断は、必ず自分が握ってください。
習慣④:AIが先に動き、人間が後から仕上げる
多くの人は、いまのやり方の一部だけをAIに置き換えようとします。
それだと効果は限定的です。
南場さんがDeNAで進めているのは、AIを後から足すのではなく、業務の順番そのものをAI前提で組み直す発想です。
大げさに聞こえますが、個人でやることはシンプルです。
まず、自分の1週間の仕事を書き出す。
そして、それぞれにこう問いを立てます。
「調べる・まとめる・訳す・下書きする・仕分ける」のどれかに当てはまるか?
当てはまる作業は、ほぼAIに寄せられます。
そのうえで、順番を入れ替えます。人間が最初に手を動かすのではなく、AIが下ごしらえを済ませてから人間が仕上げる流れに変えるのです。
議事録なら、録音をAIに要点整理させてから、人間は確認と配布だけ。
考える仕事は人間が、整える仕事はAIが。
この線を1本引くだけで、1日の可処分時間が変わります。
習慣⑤:チームで一番AIを使う人になる
最後は、個人技というより広げ方の話です。
会社でAIツールを導入しても、現場が使わない。よくある光景ですが、理由は単純です。
上が使っていないからです。
南場さんの姿勢が示しているのは、トップ自らが日常で使い倒すという原則です。経営者が「AIの叩き台をベースに議論しよう」と言えば、現場は一気に動く。
これは役職に関係なく応用できます。
たとえば、朝いちばんに開くアプリをAIにすると決めてしまう。
メールの返信は、必ずAIの下書きから始めると決めてしまう。
「AIを起点にする仕事」を毎日の中に固定するのです。
号令ではなく、率先。
正直、5つの中で一番地味です。そして一番効きます。
「経営者だからできる」ではありません
ここまで読んで、「リソースがあるトップの話でしょ」と感じた方へ。
逆です。
今日紹介した5つに、予算も専任チームも要りません。
わからないを消す。60点を書かせる。反対させる。順番を入れ替える。毎日使う。
全部、無料のAIとスマホ1台で今日から始められます。
南場さんの使い方が優れているのは、高価な道具を持っているからではなく、「速さ」と「率先」という誰でも真似できる原則を徹底しているからです。
まとめ
- 「わからない」をその日のうちにAIで消す(仕上げは一次情報で確認)
- 白紙に向き合わず、最初の60点はAIに書かせる
- 立場を指定して、わざと反対させる
- AIが下ごしらえ、人間が仕上げの順番に組み替える
- チームで一番AIを使う人になる
まずは今日、これを打ち込んでみてください。
「南場智子が私の上司だとしたら、今日の仕事の進め方にどんなダメ出しをしますか」
最後に
お知らせをひとつだけ。
このアカウントでは、一流の経営者や実践者から盗める「AIへの聞き方・使い方」を、こういう形で分解して発信しています。
次の記事を見逃したくない方は、このタイミングでフォローしておいてください。
参考文献
- 南場智子『不格好経営——チームDeNAの挑戦』(日本経済新聞出版、2013年)
- 株式会社ディー・エヌ・エー 公式発表・IR資料(2024年、AI活用方針に関する記載)
- 南場智子氏 各種メディアインタビュー(生成AIの全社活用・スピード経営に関する発言、2023〜2024年)





