「コードに書いてあること」「README にだけ書いてあること」「どこにも書いていない こと」に分けて整理します。
なぜこの記事を書いたか
5⽉15⽇、イーロン・マスクが X のアルゴリズムをGitHubで公開したと告知しまし た。その直後からXの新アルゴリズムの攻略法といった投稿が⼤量に出回り始めました。読んでいて気になったのは、「コードを読んだ」と⾔いながら、コードに書かれていない具体的なオリジナルルールを断⾔している投稿が散見されたこと。⾃分で確認しようと実際にGitHub のコードを(AIが)読みました。この記事では、確認でき たこと、できなかったことを整理して書きます。
この記事の構成
情報を3層にわけて書きます。
- コードで直接確認できたこと
- READMEには書いてあるがコードでは確認できなかったこと(「公式ドキュ メントによると」レベル)
- Xで広まっているがコードにもREADMEにも書かれていないこと
コードで確認できたこと
今回の更新は187 ファイル、18,000⾏以上の追加という⼤規模なものでした。1 ⽉の初回公開から4 ヶ⽉、中⾝はかなり変わっています。
Groxが投稿を「⾒て」品質を判定するようになった
今回の最⼤の変化は、Groxと呼ばれるコンテンツ審査サービスが丸ごと新設されたことです。1⽉時点の公開コードには存在しませんでした(X本番に同等の機能がなかったとまでは⾔い切れませんが)。Groxの中核にあるのがVLM(ビジョン⾔語モデル)です。VLMとは、テキストだ けでなく画像や動画フレームも⼀緒に理解できる AI のこと。「⽂章を読む」だけでな く「画像を⾒て判断する」ことができます。Groxがやっていることは主に 3 つ。
投稿の品質スコアリング(バンガースクリーン)
バンガースコアとは、投稿が「バズりそうな価値ある内容か」をAIが0~1で採点したスコアのこと。コードには「score >= 0.4」という閾値が書かれており、0.4以上でポジティブ判定されます。
スパム検出
低フォロワーアカウントの投稿を中⼼に、VLMがスパムかどうかを判定します。
安全性・規約違反の検出
以下の7カテゴリをGroxが判定します。
- 暴⼒的なメディア
- 成⼈向けコンテンツ
- スパム
- 違法・規制⾏為
- ヘイト・ハラスメント
- 暴⼒的な発⾔
- ⾃殺・⾃傷
コードには、暴力的なメディアと成人向けコンテンツに対して、より高精度な推論モデルで追加チェックする仕組みも存在します。ただし、どの投稿がその対象になるかは公開コードだけでは確認できません。
1 ⽉公開時点からすでにあった仕組み
ここからは「今回の新機能」ではなく、1⽉の初回公開時点からすでに存在していた仕組みです。X上の「最新アルゴリズム解説」の多くは、1⽉と5⽉のコードを区別せずにまとめています。GitHubをAIに要約させるだけだと、4ヶ⽉前からある機能も「今回の変更」として紹介されてしまいます。
ブロック‧ミュート・通報はスコアを下げる( 1 ⽉から)
コードの構造から、以下の⾏動が負のシグナルとして計算式に組み込まれていることが確認できました。
- 興味なし
- ブロック
- ミュート
- 通報
また、Home Mixerのランキングスコアラー(ranking_scorer.rs)には、同じアカウントの投稿がFor Youに並びすぎないよう偏りを抑える処理も含まれています。これも1⽉から存在する仕組みで、1⼈のフィー ドに同じアカウントの投稿が複数並ぶとき、2 件⽬以降のスコアが指数関数的に下がります。

これは「1⼈のタイムラインをあなたの投稿で埋め尽くさない」ための多様性確保であって、1⽇の総投稿数を制限するものではありません。
README には書いてあるがコードでは確認できなか ったこと
「⼿作りルールをほぼ全廃した」は半分本当
公式READMEには「⼿作りのフィーチャーとヒューリスティクスをほぼ全廃した」という設計原則が書かれています。これは5⽉に追加された記述ではなく、1⽉の初回公開時点からREADMEに存在していた主張です。
しかしコードを⾒ると、フィルタリング層(古い投稿を除外・ミュートキーワード を除外など)はルールベースのまま残っています。
「全廃した」のはランキング・スコアリングの判断基準であって、フィルタリングではない。そしてこの構造は今回の更新でも変わっていません。
5⽉のREADMEが公式に認めた変更点
5⽉15⽇のREADMEには「Updates — May 15th, 2026」という専⽤セクションが新設され、今回の変更が7項⽬で明記されました。Grox ・広告統合・ Query hydrators・Candidate hydrators・Candidate sourcesの追加はすべてここに記載されています。
つまり「何が今回の新機能か」についてはREADMEが答えています。1⽉から存在していた仕組みは、このセクションには登場しません。
バンガースコアがランキングに「どう影響するか」は⾮公開
「0.4以上でポジティブ判定」はコードで確認できました。しかし、その結果がランキングにどう影響するかを⽰すコードは、今回公開されたリポジトリには含まれ ていませんでした。「0.4未満は表⽰されない」「0.4以上はブーストされる」という断⾔は現時点ではできません。
エンゲージメントの重み数値は本番値ではない可能性がある
デモ⽤の推論パイプラインには以下の数値が書かれています。
- いいね: 1.0
- 返信: 0.5
- リポスト: 0.3
- 滞在時間: 0.2
ただし本番側のコードは動的パラメータ(A/Bテスト対応)で管理されており、数値はハードコードされていません。この数値が本番の実際の値かどうかは確認できま せん。
コードにも README にも書かれていないこと
X上で「新アルゴリズムの攻略法」として広まっている以下のような情報は、コードのどこにも書かれていませんでした。
- 1⽇4回以上投稿するとリーチダウン
- 投稿後30分以内に返信すると会話連鎖が爆発する
- 画像は3~5枚がベスト
- 動画は30~90秒が特に強い
なぜこういう情報が広まるのかというと、「5⽉15⽇にアルゴリズムが変わった」という事実と「⾃分が運⽤してきた経験則」を、同じ投稿の中で混在させているからです。読んだ人は「コードを読んでわかった」という権威付けのもとで受け取るため、個⼈の感想もアルゴリズムの仕様に⾒えてしまいます。
まとめ
5⽉15⽇の更新をひと⾔で⾔うと、こうなります。
「ランキングの仕組み」はほぼ変わっていない。「投稿の中⾝を読む仕組み」が丸ごと追加された。
誰の投稿をどの順番で出すかの根幹 — エンゲージメント予測・負のシグナル・アカウントの多様性確保—は1⽉から変わっていません。
今回追加されたのは、その投稿が何を⾔っているか・価値があるかを判断する「眼」の部分です。
だから「1⽇何回投稿すべきか」「何分以内に返信すべきか」という問いへの答えは、今回のコードにはありません。
あるのは「AIが投稿を⾒て、読む価値があるかどうかを判断する」という事実だけです。アルゴリズムの噂に惑わされて数字だけ追うより、「読んだ⼈に何かが残る投稿か」を問う⽅が、今のアルゴリズムには合っていると思います。
皆さんは『アルゴリズムの攻略法』ってどこまで信じてますか? 実際にコードを見てみてどう思いましたか?
僕は2017年からX(旧Twitter)を始めてもう10年目ですが、Xでの交流が大好きです。意味のわからない適当なことを言う人に騙されて「投稿は1日4回だけにしておこう」となってしまい、交流が阻害されてしまうことが悔しくて仕方ありません。
数字も大事ですが、交流も大切だと思いませんか?僕はこれからもアルゴリズムがどんなふうに変わろうとも、Xでの交流を楽しみながら取り組んでいきたいと思います。これからも引き続きXで楽しく交流いただけると嬉しいです。





