先日、DeNAの正捕手である山本祐大選手がトレードされるという球界にとって非常に大きな「事件」がありました。
ファンからは様々な声(というかDeNAファンの嘆きの声)が挙がっていますが、データで読み解くと、両チームとも優勝を目指した非常に理にかなった「現在」と「未来」の交換であることが見えてきます。
なぜ、このトレードは成立したのでしょうか?
データなどを見ながら探っていきたいと思います。(データは5/11~5/12時点のもの)
①ソフトバンクの狙い
まず、ソフトバンク側の狙いから見ていきます。

現在のソフトバンクは、捕手陣のマイナスがリーグでもワーストに沈んでおり、間違いなく捕手陣は補強対象だったと言えるでしょう。

個別で見ても最も多く打席に立った海野選手は守備がいいものの打力不足。他の二人も悪くはないものの決定打に欠ける、ということが分かります。
山本祐大選手の獲得はこの点からも戦力の底上げを狙った、ということが伺えます。
ただそのために尾形崇斗選手を放出したことはソフトバンク側もそれなりにリスクを伴うものです。

というのも画像の通りソフトバンクの投手陣は先発も救援も今年は苦戦気味で、総合ではワーストの数値にこちらもなっているからです。
後述しますが「現在」の数値はそれなりでも数値面ではかなり強いものを持っていた尾形崇斗選手の放出は、「将来」よりも「現在」を見ているように映ります。
②DeNAの狙い
ではDeNAは山本祐大選手を放出し、尾形・井上選手を獲得して何を狙っているのでしょうか?
ここでは今年の1軍実績がしっかりある尾形選手に絞ってお話します。
まず尾形選手の獲得に際してのコメントで「先発を考えている」という旨のものがありました。

実際に貢献度表を見るとDeNAは先発陣が大きくマイナスであることが良く分かります。
そのため先発ができる可能性のある選手を獲得するのは十分な理由があります。
しかし捕手は放出して大丈夫なのでしょうか?

率直に言えば「現在」は大丈夫ではないでしょう。
というのも画像の通りDeNAの捕手としてのプラスを出しているのは山本祐大選手であり、期待される松尾汐恩選手も「現在」は苦戦していることが伺えるからです。
では次に各選手のポテンシャルなどを見ながらさらにこのトレードについて深堀りしていきます。
③各選手のポテンシャル
山本祐大
まずは今回の目玉である山本祐大選手からです。

wRC+(総合打撃力、捕手なら100あれば優秀)やWAR(総合貢献度、2以上あれば優秀)などから見ても非常に優秀であることが分かります。
守備能力に関しても今年は少しマイナスがでていますが例年はしっかりプラス。
攻守両面で貢献できる期待値が高い選手であることは間違いないでしょう。
松尾汐恩選手との比較で見ても安定感があることが分かります。

Hard-hit%とボール球スイング率を両立しており強い打球と選球眼を両立した「現在」の総合力の高さがこちらでも伺えます。
27歳と野球選手としても全盛期の年齢でもあり、「現在」の力は十分すぎるほどあるでしょう。
一方松尾汐恩選手は三振率の低さやバレル率の比較では山本祐大選手に勝っているもののボール球スイング率が顕著に高く「現在」はやや苦戦していることが伺えます。
松尾汐恩
では「未来」ではどうでしょうか?
ここは明言できますが松尾汐恩には未来をかける価値があるというのは間違いありません。

彼の1軍・2軍の成績を見てみると高卒1年目である2023年からファーム平均を上回る打力を発揮。
昔から三振率(K%)の低さは健在で守備能力も十分。3年目の2025年からはもうやることがなくなったため1軍にいるという状態です。
今年はまだ成績は残っていませんが三振率は低く、打撃が崩れている様子もありません。
ポテンシャル、「未来」という要素では山本祐大選手に勝っていると判断するのは誤りとは言えないでしょう。
尾形崇斗
では続いて尾形崇斗選手について見ていきます。
彼は今年の1軍では救援で登板していました。

彼の投球プロファイルを見ると項目的には多くが赤く、少なくとも救援登板時には内容面で圧倒していたことが伺えます。
特に直球の空振り率は25%を記録。これは平均のおおよそ3倍で異次元の球威があることが分かります。
ただ、DeNAは先発として彼を考えているようです。
先発は実際にできるポテンシャルはあるのでしょうか?
先発をするにあたってスタミナなど色々と大事なものはありますが、その中でも球種配分はかなり重要です。
近年で先発転向に成功していると言える平良海馬・モイネロ・栗林良吏なども例に漏れず、
「主要球種に頼りすぎず」「緩急を使える」という点は共通しています。

では実際に尾形崇斗選手はどうか?
当てはめてみると主要2球種の割合は現在68%とギリギリながら水準を切り、カーブも精度には疑問があるものの実践でしっかり使えています。
球種面という観点から見るとかなり可能性を感じる内容と言えるでしょう。
「未来」があると言えます。

井上朋也
最後に井上朋也選手について見ていきます。
といってもあまり1軍実績がある選手ではないので、彼に似ている選手ということで水谷瞬選手との比較を紹介します。

水谷瞬選手は2023年に現役ドラフトで日本ハムに移籍した選手ですが、そこでの覚醒は記憶に新しいでしょう。
そんな水谷瞬選手と井上朋也選手の2軍成績は非常に酷似しています。
打率や出塁率、K%やBB%などといった指標、そして移籍する年齢(23歳)まで同じです。
これだけでポテンシャルは測るのは乱暴ではありますが、水谷選手のような覚醒も無いわけではなさそうということが伺えます。
こちらも「未来」があるといって差し支えないでしょう。
④その他副次的作用
では最後にこのトレードを後押しすることになったと思われる別の要素について見ていきます。
まずDeNA側で考えられるのが2軍での捕手の活躍です。

特に昨年、桑原将志選手の人的保証で獲得した古市尊選手がファームで素晴らしい活躍をしており1軍での第2,3捕手としての役割を果たせそうなのは大きな後押しになったでしょう。
四球を選べるタイプで、どちらかというと選球眼に課題がある松尾汐恩との差別化もできます。
ソフトバンク側としても2対1の非対称のトレードであるため支配下枠が1つ空くことになります。
WBCで出場したアルメンタ選手やファームでOPS.900を超える大泉選手など有望と言える選手の支配下登録がこれから考えられる、柔軟性の向上も見過ごせない点でしょう。

⑤なぜ「現在」と「未来」の交換をしたのか
ここまでをまとめ、球団の最終目標を優勝と以下のようなことが言えると思います。

ソフトバンクは今の弱点を補強し今年優勝するために将来性を差し出した。
DeNAは現在の安定を放出する代わりに未来に、将来の優勝にかけた。
では両チームともなぜそのようなことをする必要があったのでしょうか?
それは両チームの根本的な戦力の違いによるものと思います。
戦力を図る手段は色々とありますがここはわかりやすく得失点差で見ていきましょう。

まずソフトバンクですが、「このチームは掛け値なしに強い」です。
2年前は歴史的な得失点差を記録し、現在も得失点差ペースで行けば+50ともう少しのパワーがあれば優勝水準(+100)に届きます。
つまり「現在」を手に入れれば優勝が現実的なのです。
ではDeNAはどうでしょうか?

こちらはソフトバンクが異常というだけですがベースが優勝ラインには到達していません。
近年で得失点差+100に迫ったこともなく、現有戦力では2~3位が精一杯という得失点差です。
つまり優勝をするためには「現在」にベットするのではなく「未来」にベットするほうが、総合的には優勝確率が高くなる
というふうにも考えることが出来ます。

⑥まとめ
まとめると以下のように言えるでしょう。
どちらのチームも優勝を目標に掲げ、異なるが最適と思われるアプローチをした結果が今回のトレードを生んだと思われます。
「現在」と「未来」で勝者が変わっているかもしれないこのトレード、うまくいけばどちらの球団も利益を得ることができるかもしれません。
なかなか日本では見られない形式のトレードでしたが、個人的にはフロントの意図は納得できるところがあるなと思いました。
皆さんはどう考えますか?

※この記事の数値データは
NPB+
のデータを使用、再計算しています。
数値などは確認をしましたが結果的にデータがかなりチャンポンしているので間違えていればご指摘ください。





