2026年9月3日、OpenAIがGPT-6 Astraを公開しました。
ここで多くの人が、Codexのモデル設定をAstraに切り替えて、それで終わりにしています。
ただ、OpenAIが同じ日に更新したのはモデルだけではありません。公式発表には、Astraと合わせてCodexのハーネスも更新した、と明記されています(出典:OpenAI「GPT-6 Astra: A new generation of intelligence」https://openai.com/index/gpt-6-astra/ )。
頭脳と、頭脳が働く環境。OpenAIは両方を同時に作り替えました。
ただし、不明瞭な指示や矛盾したルールが残っていると、Astraが確認を求めたり、作業を途中で止めたりする場合があります。
この記事で渡すのは、この3つです。
・Codexハーネスを構成する8要素の全解説(優先度つき)
・そのままコピーできる診断・棚卸しプロンプト4本
・今日30分でどこから手をつけるかの実行順序
もったいぶってもしょうがないので、いちばん重い1本を先に置きます。あなたのプロジェクトが今どういう状態か、Codexに自己申告させるプロンプトです。
▼ここからコピー
あなたはCodexのハーネス設計者です。
このプロジェクトでGPT-6 Astraが「毎回細かく指示しなくても、安全かつ再現性高く、最後まで仕事を完了できる状態」を作ることが目的です。
まず変更は一切行わないでください。現在のプロジェクト構成・設定ファイル・利用可能な機能を確認したうえで、以下を診断してください。
- AGENTS.md:目的、守るべきルール、禁止事項、完成条件、参照先が明確か
- docs / context:必要な情報をあなた自身が探せる構造になっているか。古い・重複・矛盾した記述はないか
- Skills:繰り返している作業のうち、Skill化すべきものは何か。逆に不要なSkillはどれか
- MCP / Plugins:不足している外部ツール・データ接続は何か
- Environment:依存関係、セットアップ、テスト実行をあなた自身が再現できるか
- Permissions / Sandbox:必要以上の権限を与えていないか。逆に承認待ちが多すぎて作業が止まっていないか
- Hooks / Tests:実行前チェック、秘密情報の検知、テスト、完了時チェックを自動化できないか
- Browser / Computer Use:完成物を実際に操作して確認すべき作業はないか
- Subagents:調査、レビュー、テストなど並列化した方が速い作業はないか
- Feedback Loop:過去の失敗や修正指示が、AGENTS.md / docs / Skill / Hook / Testへ戻る仕組みがあるか
出力形式: A. 各項目を5点満点で評価 B. 現在の重大な不足トップ5 C. 今日30分で直せること D. 1週間で仕組み化すべきこと E. 作成・変更すべきファイルと、その具体的な変更案 F. セキュリティ・権限上のリスク G. 着手の優先順位
推測で設定をでっち上げないでください。現在利用できるCodexの機能とバージョンを確認してから判断してください。Experimental / Beta / Deprecatedの機能は必ずその旨を明記してください。
この診断結果を私が確認するまで、ファイルの変更、権限の拡張、外部サービスへの接続は行わないでください。
▲ここまで
読み終わるより先に、これを流しておくと後が早いです。
この記事の対象と使い方
対象は2026年9月7日時点のCodexです。Codexは更新が速いので、日付を確認してから読んでください。
収録しているのは、ハーネス構成要素8つ、成熟度7段階、コピペできるプロンプト・テンプレート4本です。
想定読者は「Codexは触っているが、AGENTS.mdを書いたあたりで止まっている人」。エンジニアでなくても読めるように、専門用語には初出時に注釈をつけます。
全部読まなくても価値が出るように、要素ごとに「優先度」を書きました。優先度が高いものだけ拾えば、それで最低限は動きます。
そもそも「ハーネス」とは何なのか
ハーネスとは、モデルとツールと人間をつないで仕事を進める仕組みのことです。
OpenAIの技術ブログ「Unrolling the Codex agent loop」(2026年1月、Michael Bolin氏)では、Codexハーネスを「すべてのCodex体験の土台となる、中核のエージェントループと実行ロジック」と説明しています(https://openai.com/index/unrolling-the-codex-agent-loop/ )。
エージェントループというのは、この繰り返しのことです。
・ユーザーの入力を受け取る
・モデルに問い合わせて考えさせる
・モデルが選んだツールを実行する
・結果を見せて、また考えさせる
このループを回しているのがCodex側であって、モデルではありません。
会社に例えるなら、こうなります。
Astra=ものすごく優秀な社員の頭脳。ハーネス=その社員が働く会社そのもの。就業規則、社内Wiki、業務手順書、社内システムへのアクセス権、決裁ルール、検品工程、そして同僚。
ここで気をつけたいのが、「AGENTS.md=ハーネス」と雑にまとめてしまうことです。AGENTS.mdはハーネスの一部でしかありません。就業規則を配っただけでは会社が回らないのと同じです。
なお実務では、AGENTS.md、Skills、MCP、Hooks、権限設定、実行環境、ブラウザ、Subagentsといった要素を組み合わせて「働きやすい環境」を作る営み全体を、ハーネス設計(Harness Engineering)と呼びます。この記事も後者の意味で使います。
Astra公開で、実際に何が変わったのか
3つあります。どれもOpenAI自身が公式に言っていることです。
- OpenAIは頭脳と環境を同時に改良した
Astra発表時、OpenAIはCodexのハーネスも更新したと明記し、Mind2Webというブラウザ操作のベンチマークで、GPT-5.6 Sol環境と比べてタスク完了が1.9倍速くなったと報告しています。
OSWorld 2.0では、Astraが72.6%、GPT-5.6 Solが65.7%でした。また、所要時間のシミュレーション評価では、1タスクあたり約75分から約40分へ短縮したと報告されています。
ここは注意が必要で、これらはOpenAI自身が公表した数値であり、条件つきのベンチマーク結果です。あなたの環境でそのまま1.9倍になる保証はありません。
それでも読み取れることははっきりしています。速度を稼いだのはモデル単体ではなく、モデルと実行環境の組み合わせだということです。
- Astraは「周りに置いてある指示」をよく読むようになった
これがいちばん実務に効きます。
OpenAIのモデルガイダンスには、Astraは指示追従が従来より強い一方で、SkillsやAGENTS.mdといったファイルに含まれる指示にも、より敏感になりうると書かれています。そして、モデルからアクセスできるSkillsやその他のファイルを監査することを強く推奨する、と続きます(https://developers.openai.com/api/docs/guides/latest-model )。
同じドキュメントには、もっと具体的な警告もあります。skillファイルの中に不明瞭な指示や矛盾した指示があると、モデルが早い段階で作業を止めてブロックすることがある、という記述です。
つまり構図はこうです。
頭脳が賢くなった。だから良いルールにも、悪いルールにも、前より忠実になった。
去年からずっと足し続けてきたAGENTS.mdの中に、もう意味のない一文が残っていたとします。Solは適当に無視していたかもしれません。Astraは律儀に従います。
- 委任と、記憶の持ち方が変わった
公式発表によると、AstraはCodexの中でコンテキストウィンドウをまたいでメモを保持でき、蓄積した詳細を毎回ひとつの要約に圧縮し直さずに済むようになりました。長時間タスクでの情報の目減りが減る、という話です。
ただし、2026年9月7日時点ではこれは実験機能です。config.tomlで明示的に有効化する必要があり、デフォルトではオフになっています。OpenAIは今後数週間でAstraのデフォルト機能にすると発表していますが、現時点では自分で設定を足さない限り動きません。
一方でモデルガイダンスは、Astraについて「Subagentへの委任が、あなたのワークフローが期待するほど頻繁ではないかもしれない」とも書いています。並列化させたいなら、ハーネス側でいつ委任するかを指定しろ、ということです。
同じくガイダンスには、Astraは詳細で整形された応答に寄る傾向があるので、必要な文体と構造を指定せよ、という項目もあります。
いずれも「モデルが賢いから放っておけばいい」ではなく、「賢いぶん、指定した通りに動くから指定を整えろ」という方向を向いています。
ハーネス8要素の全体マップ
ここから並べる8要素と、後述する成熟度の7段階は、OpenAIが公式に定義している分類ではありません。ここまで見てきた公式情報をもとに、この記事が独自に整理したものです。実務で押さえておくと動きやすい切り口として使ってください。
先に地図を出します。会社の比喩と、優先度をつけました。
- AGENTS.md|就業規則・基本方針|優先度:最高
- docs / Context|社内Wiki・マニュアル|優先度:高
- Skills|業務手順書|優先度:高
- MCP / Plugins|社内システムへの接続|優先度:中
- Environment|PC・机・業務環境|優先度:高
- Permissions / Sandbox|権限・決裁ルール|優先度:最高
- Hooks / Tests|自動チェック・検品|優先度:中
- Browser / Subagents|目・手・部下|優先度:中
初心者がまず触るべきは、1と6です。理由は単純で、この2つを整えるだけで、他の要素の土台が固まるからです。ただし、これは1と6以外を確認しなくていいという意味ではありません。MCPで繋ぐ外部サービスの権限、Skillsに書かれた手順、Hooksが実行するスクリプトも、それぞれが安全確認の対象です。特にMCPは外部への接続そのものなので、繋ぐ先が信頼できるか、渡す権限が最小限かは別途見てください。
以下、1つずつ解説します。
指示と知識の層|AGENTS.md・docs・Skills
AGENTS.md|毎回同じ説明をするのをやめる
これは何か:リポジトリのルートに置くマークダウンファイル。Codexが作業開始前に読み込み、プロジェクト固有のルールとして扱います。
何ができるか:「テストは必ずこのコマンドで走らせる」「このディレクトリは触るな」といった前提を、毎回のプロンプトに書かずに済ませられます。
ここでほぼ全員がやる失敗が、詰め込みすぎです。
OpenAIの技術ブログ「Harness engineering: leveraging Codex in an agent-first world」(2026年2月11日、Ryan Lopopolo氏)に、社内での失敗が書かれています。巨大なAGENTS.mdを試した結果、コンテキストを圧迫し、古いルールが残り、何が重要なのか分からなくなったというものです(https://openai.com/index/harness-engineering/ )。
そこでチームが切り替えたのが、AGENTS.mdを約100行の「地図」として運用する方法でした。詳細はdocs以下に置き、AGENTS.mdからはそこを指し示すだけにする。
優秀な新人に1,000ページの就業規則を丸暗記させるのではなく、「困ったらこの棚を見ろ」という案内図を渡す。この差です。
コンテキストは有限の資源です。巨大な指示ファイルは、タスクそのものや、読むべきコードの居場所を押し出してしまいます。
地図型のAGENTS.mdは、だいたいこの形に収まります。
▼ここからコピー
AGENTS.md
このプロジェクトは何か
(1〜3行。何を作っているか、誰が使うか)
最初に読むもの
- 設計方針:docs/architecture.md
- ディレクトリ構成:docs/structure.md
- 用語集:docs/glossary.md
- 過去の失敗と対処:docs/postmortems.md
必ず守ること
- テスト:(実際のコマンド) で全件実行し、失敗を残したまま完了報告しない
- 触ってはいけない場所:(パスを列挙)
- コミット前に必ず:(linter / formatter のコマンド)
完了の定義
以下をすべて満たしたときだけ「完了」と報告する。
- テストが通っている
- 変更の意図が1段落で説明できる
- 想定外の副作用がないか自分で確認した
判断に迷ったとき
勝手に仮定を置かず、選択肢を2つ以上示して私に聞くこと。
指示の優先順位
- 私(ユーザー)のその場の指示
- このAGENTS.md
- Skillsに書かれた手順 上位と矛盾する下位の指示は無視してよい。読み飛ばした指示があれば、その名前を報告すること。
▲ここまで
最後の「指示の優先順位」は、Astra以降だと特に効きます。モデルガイダンスが、ユーザー指示とskill指示のどちらが上かを明示せよと書いているのは、まさにここです。
docs / Context|Codexが自分で調べられる状態を作る
これは何か:AGENTS.mdから参照される、実際の知識の置き場。設計書、構成図、用語集、過去の判断記録などです。
何ができるか:Codexが必要になったときだけ読みに行けるので、常時コンテキストを消費しません。
Harness engineeringの記事で印象的なのは、初期に進みが遅かった理由の説明です。Codexに能力がなかったからではなく、環境の記述が足りていなかった(the environment was underspecified)と書かれています。
足りていなかったのは、ツール、抽象化、内部構造、そしてCodexが読める形の情報でした。
だから何かが失敗したとき、チームの反応は「もっと頑張らせる」ではありませんでした。「どの能力が欠けているのか、それをどうやってエージェントに読める形かつ強制力のある形にするか」を考える方向に進んだ、とあります。
これがハーネス設計の本質です。プロンプトを直すのではなく、環境を直す。
補足すると、この事例はOpenAI社内の1件です。3人のチームが5か月で約100万行、約1,500件のプルリクエストを、人間の手書きコード0行で出したという規模の話であり、一般ユーザーが同じ結果を再現できるという意味ではありません。
Skills|プロンプトを「仕事の型」として保存する
これは何か:SKILL.mdという形式のファイル。指示と参考資料、必要ならスクリプトをまとめて、特定の作業を毎回同じ手順で実行させる仕組みです。
何ができるか:良いプロンプトを毎回コピペする段階から、仕事そのものを保存する段階へ移れます。
たとえば「記事を作る」を1つのSkillにするなら、中身はこうなります。
・調査
・ファクトチェック
・タイトル案
・構成設計
・執筆
・NG表現チェック
・最終レビュー
Astra以降の注意点は、増やしすぎです。Skillは名前と説明文がコンテキストに読み込まれるので、数が増えると説明文が切り詰められ、どれを選ぶべきか判断しづらくなります。説明文どうしが矛盾していたり、どれも「私を使え」と主張していたりすると、タスクに合わないSkillを読み込んでしまいます。
Skillは「毎回必要な指示」ではなく「特定のタスクのときだけ必要な手順」を入れる場所です。ここを取り違えると、全部AGENTS.mdに書くのと同じことになります。
手と足の層|MCP・Plugins・Environment
MCP / Plugins|Codexに社内システムのIDを渡す
これは何か:MCPはCodexを外部のツールやデータにつなぐ規格で、CLIとIDE拡張の両方で使えます。PluginsはSkillsやConnector、MCPツールなどをまとめて配布できる仕組みです。CodexではChatGPTデスクトップアプリとCLIで利用でき、IDE拡張では利用できません。
何ができるか:外部ドキュメント、ブラウザ、デザインツールなどにCodexからアクセスさせられます。
Astraがどれだけ賢くても、必要な情報に手が届かなければ意味がありません。超優秀なのに社内システムのアカウントを持っていない社員と同じです。
ただし優先度は中にしています。MCPを増やすほどツールの選択肢が増え、コンテキストも消費します。「今この瞬間に手が届かなくて困っているもの」だけを足すのが正解です。
Environment|Codexが自分で環境を再現できるか
これは何か:依存関係、セットアップ手順、テストの実行方法、作業用のディレクトリ構成など、実際に手を動かすための足場です。
何ができるか:Codexが「動かして確かめる」ところまで自走できます。ここが欠けていると、Codexはコードを書くだけの存在に戻ります。
チェックの仕方は簡単で、まっさらな状態から「セットアップして、テストを通して、結果を報告して」と投げてみることです。途中で止まったら、止まった箇所がそのまま不足箇所です。
Git worktreeを使って作業ごとにディレクトリを分けておくと、複数の作業を並行させたときに衝突しにくくなります。
安全と検品の層|Permissions・Sandbox・Hooks
Permissions / Sandbox|「何を勝手にやってよいか」を先に決める
これは何か:Codexがどこまで自動で実行してよいかを決める2つの独立した設定です。サンドボックスがファイルとネットワークの届く範囲を決め、承認ポリシーがどこで人間に確認を取るかを決めます。
Codex公式ドキュメントによると、CLIとIDE拡張の初期設定では、ネットワークアクセスなし、書き込みは作業中のワークスペース内のみに制限されています(https://developers.openai.com/codex/sandbox )。
サンドボックスは3段階です。
・read-only:読めるが書けない。相談・計画づくり向け
・workspace-write:作業フォルダと一時ディレクトリ内なら書ける。通常はここ
・danger-full-access:どこでも書ける。サンドボックスを事実上外す設定
日常的に使うAutoプリセットは、workspace-writeと「必要なときだけ承認を求める」の組み合わせです。ワークスペースの外を編集しようとしたときや、ネットワークに触ろうとしたときに、Codexが止まって確認してきます。
セッションの途中で切り替えたいときは、/permissions コマンドが使えます。計画段階はread-only、実行段階はAutoという運用が現実的です。
ここで押さえてほしいのは、自律化イコール全部許可ではないということです。
承認が煩わしいからといってdanger-full-accessに逃げるのは、いちばんもったいない解き方です。特定のディレクトリに書き込む必要があるだけなら、その場所だけ許可すれば済みます。
▼ここからコピー
【Codex CLI:計画用と作業用の設定例】
対象はCodex CLI 0.134.0以降です。
設定は「共通設定」「計画用」「作業用」の3ファイルに分けて保存します。
以下の説明文全体を、1つの設定ファイルに貼り付けないでください。各保存先に、対応する設定だけを書きます。
保存先は、Codexの標準設定を使っている場合のものです。
■ 1.共通設定
保存先:~/.codex/config.toml
既存の設定を丸ごと消さず、以下の項目を追加・変更してください。同じ [sandbox_workspace_write] がある場合は、その中を編集し、見出しや設定項目を重複させないでください。
[sandbox_workspace_write]
network_access = false
必要な場合のみ、許可する追加ディレクトリを指定する。
writable_roots = ["/absolute/path/to/approved-directory"]
追加の書き込み先が必要な場合だけ、writable_roots の行の先頭にある # を外し、例のパスを実際に許可するディレクトリの絶対パスへ置き換えてください。
■ 2.計画用の設定
保存先:~/.codex/plan.config.toml
共通設定とは別のファイルに、以下の2行を保存します。
approval_policy = "on-request"
sandbox_mode = "read-only"
■ 3.作業用の設定
保存先:~/.codex/work.config.toml
計画用とも別のファイルに、以下の2行を保存します。
approval_policy = "on-request"
sandbox_mode = "workspace-write"
■ 使うとき
起動コマンドは設定ファイルに書かず、作業するプロジェクトのフォルダでターミナルから実行します。
計画用で起動する場合:
codex --profile plan
作業用で起動する場合:
codex --profile work
共通設定に、選択したプロファイルの設定が重ねて読み込まれます。
プロジェクト側の設定や組織の制限も影響するため、起動後は /permissions で実際の権限を確認してください。
なお、network_access = false はサンドボックス内で実行するコマンドの通信設定です。MCPなどの外部接続の権限は、別途確認してください。
▲ここまで
境界を1つ広げるのと、境界そのものを捨てるのは、まったく別の話です。ネットワークアクセスも同じで、依存パッケージを本当に取りに行くプロジェクトでだけ有効にする判断であれば妥当です。
Hooks / Tests|「気をつける」を「仕組みで止める」に置き換える
これは何か:Codexの処理の途中に、自前のスクリプトやMCPツールを差し込める仕組みです。Stable機能として標準で有効になっており、追加の有効化設定は不要です。
何ができるか:たとえばこういう自動化です。
・ツールを実行する直前に、危険なコマンドを止める
・APIキーのような秘密情報が混ざっていないか検査する
・ファイルを編集した直後に、linterを走らせる
・作業終了時に、テストが通っているか確認する
「ミスしないように気をつけて」と書くのではなく、「ミスしたら仕組みが止める」に変えるためのものです。
ただしOpenAI自身が、Hooksを完全な強制境界ではなく、あくまでガードレールとして扱うよう注意しています。Codexは別のツール経路から同等の作業を実行できてしまうことがあるためです。
本当に止めたいものは、Hooksではなくサンドボックスと権限設定の側で止めてください。Hooksは、その上に重ねる二枚目の網です。
目とチームの層|Browser・Subagents
Browser / Computer Use|完成物を自分の目で見せる
Webサイトを作らせて「コードを書きました、完了です」で終わらせるのは、かなりもったいない使い方です。
なお、この章で説明するComputer Use(画面を実際に操作する機能)は、現時点ではデスクトップアプリ版のCodexで使う機能です。この章で扱う組み込みBrowser / Computer Useは、ChatGPTデスクトップアプリで利用します。Codex CLIとIDE拡張では組み込みBrowserは利用できません。CLI / IDEでブラウザ操作を行う場合は、MCPやPlaywrightなど別の仕組みを用意します。
やらせるべきはここまでです。
・ブラウザを開く
・実際の画面を表示する
・操作してみる
・崩れている箇所を見つける
・直す
・もう一度確認する
Astraはコンピュータ操作のベンチマークで大きく伸びた世代なので、この工程を任せる価値が上がっています。OSWorld 2.0で所要時間が約75分から約40分に縮んだという報告は、まさにここの話です。
Harness engineeringの事例でも、Chrome DevTools Protocol、DOM、スクリーンショット、ログやメトリクスをCodexから扱えるようにして、バグの再現から修正、検証まで回せる環境を作ったとされています。
Subagents|1人の天才を、チームに変える
これは何か:Codexが作業を複数のサブエージェントに分担させる仕組みです。それぞれが独立したコンテキストを持ちます。
何ができるか:調査、テスト、ログ分析、要約のような、読み取り中心で独立して進められる作業を並列化できます。
注意点は2つあります。
1つは、複数のエージェントが同時に同じコードを書くと衝突することです。書き込みを伴う作業の並列化は慎重に。
もう1つは、単純にトークン消費が増えることです。速くはなりますが、安くはなりません。
そしてAstra特有の話として、モデルガイダンスは委任の頻度が期待より少ない場合があると書いています。並列化させたいなら、AGENTS.mdなりプロンプトなりで「調査系のタスクは分割して並列で走らせてよい」と明示的に指定してください。放っておくと1人で全部やろうとします。
Astra時代の逆転ポイント|足すのではなく、棚卸しする
ここまで8要素を並べてきましたが、この記事でいちばん伝えたいのは逆の話です。
Astraに合わせてまず行いたいのは、既存の指示の棚卸しです。OpenAIも、SkillsやAGENTS.mdなど、モデルが参照する指示の監査を推奨しています。必要な指示は残し、不足は補い、古い・矛盾した指示は検証したうえで修正・削減します。
OpenAIのモデルガイダンスが推奨しているのは、追加ではなく監査です。使われている動詞はauditing、つまり「監査せよ」であって「追加せよ」ではありません。
Astraを事前検証したチームからも同じ方向の報告が出ています。AIコーディングツールを提供するKiloは、公開したレビュー記事の中で、Astraは必要とするAGENTS.mdの足場が明らかに少なく、この1年かけて積み上げてきた「モデルを脱線させないための指示」の大半が不要になったと書いています。膨れ上がったagentsファイルがあるなら、半分消してからもう一度試してみろ、とまで書いています(https://blog.kilo.ai/p/gpt-6-astra-what-we-learned-previewing )。
これは1社の検証所感であって、公式見解ではありません。ただ、公式ガイダンスの「矛盾した指示があると早期に停止しうる」という記述と、方向はぴたりと一致します。
賢くなったモデルほど、古い指示に足を取られる。逆説的ですが、そういうことです。
棚卸しはCodex自身にやらせるのが速いです。
▼ここからコピー
このリポジトリのAGENTS.md、docs配下、および読み込まれるすべてのSkillファイルを読んでください。変更はまだ行わないでください。
GPT-6 Astraで作業することを前提に、以下を分類して報告してください。
【残す】 今も有効で、あなたの判断を実際に改善している指示。なぜ有効か1行で。
【削除候補】 以下のいずれかに当てはまるもの。該当箇所を原文で引用し、理由を添えてください。これは削除の決定ではなく、人間が検討するための候補出しです。
- 前世代のモデルを軌道修正するために書かれた、今は不要な指示
- すでに変わった仕様・パス・コマンドを指している指示
- あなたが指示されなくても自然にやることを、わざわざ命じている指示
- 他の指示と矛盾している指示
ただし、その指示が安全・セキュリティ・過去の事故やインシデントを理由に追加された可能性が少しでもある場合は、【削除候補】に分類せず、【要人間判断】として別枠に出し、なぜその可能性があると考えたかを添えてください。あなた自身の判定だけで「不要」と結論づけないでください。
【書き換える】 意図は正しいが、曖昧・冗長・優先順位が不明な指示。書き換え案も出してください。
【疑問】 あなたがこれまで読んでいて、意味を判断しかねた記述。
最後に、次の2点を必ず報告してください。
- あなたが実際にブロックされた、あるいは判断に迷った指示があれば、その正確な行と、なぜ迷ったか
- AGENTS.mdを100行程度の索引に縮めるとしたら、どの構成にするか
▲ここまで
出てきた「削除候補」リストは、そのまま全部消してよいわけではありません。まず、なぜその指示が追加されたのか、追加された経緯と、消した場合にどこへ影響するかを確認してください。過去の事故やインシデントを受けて追加された確認手順は、Codexが「今の自分なら不要」と判定しても、それだけでは外してよい証拠にはなりません。特に安全やセキュリティに関わる指示は、なぜ追加されたのか経緯を知っている人が最終判断し、【要人間判断】に分類されたものは、判断者を1人決めてから動いてください。追加理由が確認でき、影響も限定的だと判断できたものだけ、削除に進んでください。判断に迷う指示は削除せず保留してください。docsへ移す場合は、AGENTS.mdから必要な場面で確実に参照できる導線を残してください。
成熟度|あなたは今どこにいるか
自分の段階を確認してください。
Lv.0:毎回プロンプトを書いている。優秀な社員に毎朝ゼロから説明している状態
Lv.1:AGENTS.mdとdocsがある。会社にルールとマニュアルがある状態
Lv.2:Skillsがある。定型業務の手順まで決まっている状態
Lv.3:MCPやPluginsがつながっている。必要なシステムに自分でアクセスできる状態
Lv.4:Permissions、Hooks、Testsが機能している。自動実行と自動検品がある状態
Lv.5:BrowserとSubagentsを使っている。自分で確認し、仕事を分担できる状態
Lv.6:フィードバックループがある。失敗するたびに仕組み自体が更新される状態
多くの人はLv.1にいます。そしてLv.1のまま、AGENTS.mdを厚くすることで前に進もうとします。それはLv.2ではなく、Lv.1の肥大版です。
Lv.6だけ性質が違うので補足します。ここは新しい機能を足す段階ではありません。「同じ失敗を2回されたら、その修正をAGENTS.mdかSkillかHookかTestのどこかに戻す」という運用ルールがあるかどうか、それだけです。
Harness engineeringの記事で、OpenAIが「1回だけ検証するのではなく、継続的に是正する」方向へ進んだのもここです。
実行順序|30分、1日、1週間
優先順位をつけます。上から順にやってください。
最初の30分
- この記事の冒頭にある診断プロンプトを流す
- /permissions で現在の権限設定を確認する。danger-full-accessで常用していたら、まずworkspace-writeに戻す
- AGENTS.mdを開いて、中身に目を通す。重複した記述、矛盾する記述、すでに古くなった記述がないか確認する。約100行はOpenAI社内の一事例での結果であり、絶対的な基準ではありません。行数よりも、中身が整理されているかどうかを見てください
1日
- 棚卸しプロンプトを流す。【削除候補】は追加理由と影響を確認できたものから削除し、【要人間判断】は経緯を知っている人に確認してから決める
- 削った内容のうち、残す価値のあるものはdocs配下に移す
- AGENTS.mdの末尾に「指示の優先順位」を追記する
- まっさらな状態から「セットアップしてテストを通して」と投げ、止まった箇所を記録する
1週間
- 週に2回以上やっている作業を1つ選び、Skill化する
- 手が届かなくて毎回困っている外部データが1つあれば、MCPでつなぐ
- 秘密情報の混入チェックか、編集後のlinter実行、どちらか1つをHookにする
- 失敗の記録をどこに戻すか、置き場所を1つ決める
ここまでで、Lv.1からLv.4の入口までは到達します。
逆引き|やりたいこと別の索引
毎回同じ説明をしているのをやめたい → AGENTS.md
Codexが古い情報を参照してくる → docs / Context の棚卸し
同じ作業の品質がぶれる → Skills
必要なデータに手が届いていない → MCP / Plugins
コードは書けるが動作確認まで進まない → Environment
勝手にやられるのが怖い、または承認待ちが多すぎる → Permissions / Sandbox
同じミスを何度もされる → Hooks / Tests
見た目の崩れに気づかない → Browser / Computer Use
調査に時間がかかりすぎる → Subagents
Astraにしてから途中で止まるようになった → まず停止通知・承認要求・エラーを確認する。必要に応じて、CLIの/statusで設定や使用量を確認する。指示の矛盾が疑われる場合は、AGENTS.mdとSkillsを棚卸しする。
次に競うのは、頭脳ではなく環境
モデルを選ぶゲームは、ほぼ終わりました。
Astraは十分に賢く、そして指示された通りに動きます。だからこそ、何を指示として置いてあるかがそのまま結果になります。
プロンプトを上手く書くゲームから、仕事環境を上手く設計するゲームへ。Astraはその移行を決定づけたモデルです。
今日やることは1つだけで構いません。AGENTS.mdを開いて、中身に目を通してください。そこがスタート地点です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ChatGPT・Claude・Copilotを使った業務時短やAI副業の具体例を、無料オープンチャットで発信しています。 「AIを使える側」に回りたい方は、今ここで参加してください。





