海外で日本人が助け合わないとか、日本人の敵は日本人みたいなポストでXは賑わってるんですよ。僕も過去にそういうポストをしたことはあるんだけど、皆それぞれ違う生き方と言うか、階層にいるので同じ言葉を使っていても、イメージしているものは全然違うのでは?と思うようになった訳です。
加えて、日本在住の人たちまで、「日本人は海外で助け合わない」とか、そういうことを仰る訳ですよ。特に気になってしまったのは「アメリカでも日系人は日本文化を捨ててアメリカ社会に同化した。華僑を見習ってほしい」みたいな意見。
で、アメリカで日本人が助け合ってきた歴史は無いのか?ということをまず語りたい。ナショナルジオグラフィックは去年特集を組んでいたので、読んで欲しい
"第2次世界大戦以前、米国には80を超える日系人コミュニティがあり、そのうち少なくとも40カ所がカリフォルニアにあった。1942年2月19日、日系人コミュニティの発展は急に止まることになる。フランクリン・D・ルーズベルト大統領が大統領令9066号に署名し、日系人は強制収容に向けて立ち退きを命じられたからだ。"
戦前まではアメリカ西海岸における日系コミュニティはかなり大きかった。そして、経済力も相当にあった。でも、強制収容によって全て失ったという歴史がある。
これちょっと想像してみて欲しいんだけど、家族総出で毎日必死で働いて、数年、数十年かけて築いた資産、つまり家、土地、現金などの金融資産、思い出の品々などを「日本人の血をひいている」という理由で一瞬で失う、ということを。ある日突然、数日以内に荷物をまとめて、家を引き払えと言われ、どこに行くかも告げらずに列車に乗せられて、荒野に作られた強制収容所のバラックに押し込まれた。1942年から1946年の約5年もの間ね。
憲法違反の強制収容をやっておきながら、アメリカは日系1世と市民である2世達にアメリカへの忠誠を問うて、Yesと答えた若者たちはヨーロッパ戦線に送られた。そして、日系アメリカ人二世の若者たちは第442連隊戦闘団に配属されアメリカ史上もっとも勲章を受けた部隊になる訳だけど、それって尋常じゃない負傷と戦死の引き換えだから。
若者たちは自分達自身や、親達がアメリカで生きていくための「居場所」を命をかけて維持したってこと。名誉とかプライドとか、そういうのもあったかもしれないけど、自分たちが命を張らないと「世界中のどこにも居場所がなくなってしまう」という極限状態だったとしか思えないんだよね。
ちなみに、忠誠の質問にNoと答えた人たちはもっと過酷な収容所に投獄され、その後の裏切者というレッテルを張られて苦しい人生を送った人が多かった。
戦争が終わり、日系人は強制収容から解放されるんだけど、家も何もかも全部失っている状態。そこからの生活の立て直しなんて僕には想像も出来ない。また、相当長い間トラウマに苦しんだだろうな、とも思う。一度権力にすべてを奪われた人達は、そんなに簡単に権力を信頼できないだろうし、いつまた同じように迫害されるかわからない、という恐怖の中で何十年も過ごすことになった。
強制収容にあった一世と二世はこの収容所での出来事を、誰にも語らず、アメリカ社会の中でおとなしく、黙って努力を続けていった。だから、二世には有名な政治家も出ている。とにかく強制収容の当事者たちは「仕方がない」という言葉をかみしめて、黙っていた。80年代に入り、ようやく日系人の名誉回復のための社会運動「リドレス運動」が起こるのだけど、それは孫の代にあたる三世達のムーブメントだった。
僕は「日系人は日本文化を捨てた」という言葉は凄く残酷だな、と思った。戦前、日本人は日本人同士で助け合いながら日本人らしい生活をしていた。結果、アメリカの主に白人のコミュニティから「あいつらはアメリカに同化しようとしない」と言って嫌われた。経済的にも成功してた日本人達は尚更嫌われ、憎まれた。日米が開戦し、その憎悪は行動を伴い止められないものになった。そして、日系人は人権を失い、資産も失った。ちなみに、日系一世はアメリカに帰化していないから国籍は日本人のまま。当時、アメリカは日本人がアメリカ人に帰化できないように法律を変えていたから。
この歴史を踏まえて、想像して欲しいのだけど、強制収容から戻って日系人たちが、またコミュニティを大々的に作って、日本文化を全面に押し出した生活が出来ると思います?無理でしょ、どう考えても。。。日本人として目立ちたい訳無いもの。自分たちは強制収容でボロボロになり、母国日本は敗戦で焼け野原になり頼ることは出来ない。(というか、日系人たちは日本に支援物資を送り続けた)とにかく、アメリカの中で目立たないように慎ましく生きていく、という選択肢しか取りようがない。
戦前にアメリカに移住した日系人の子孫たちっていうのは、この歴史を背負って今も生きている。全米にいくつかある日系アメリカ人の博物館でも日系人の子供たちへの歴史教育も日系人研究も継続的に行われている。
で、戦後の好景気を経てからアメリカに来ている日本人達って留学とか駐在とか遊学とか、言ってみれば余裕がある人達な訳で。その人達と古い日系人が嚙み合わないというか、交流が難しいのは今の日本人が日系アメリカ人の歴史を知らないからだと思うんだよね。そして、知らないがゆえに「日本文化を捨てて同化した」とか言ってしまう。「いやいや、戦中に何があったかわかって言ってんの?」と言いたくなるだろうと思う。まぁ、もともと戦前に外国に移民した人たちが本国で見下されていたというのもあると思うけど。
ちなみ、比較として良く言われる華僑とか印僑はどうなのか?っていう話だけど、華僑やインド系移民にも、排斥法や人種差別、暴力、土地所有規制など、それぞれ苛烈な歴史がある。ただ、日系の場合は出自を理由として西海岸の日系社会そのものが国家の政策によって解体された、という固有の歴史がある点が大きく違う。
ということで、長々書いてきたけど「アメリカで日本人が助け合わない理由」が書けていないのはわかっている。だって、助け合っている人たちはいるし、助け合っていない人にはそれが見えないだけだから。でも、アメリカにおいては他の国のコミュニティと比べて日系コミュニティが弱いとか、助け合わないってバッサリ切っちゃうのは歴史を踏まえてなさすぎでは?と思った次第。





