「AIなら毎日使っていますよ」
そう答える人の画面を見せてもらうと、中身はだいたい同じです。
要約、リライト、ちょっとしたアイデア出し。
もちろん、それも役には立ちます。
ただ、その使い方は誰が打ち込んでもほぼ同じ答えが返ってきます。差がつかないんです。
一方で、孫正義がAIと向き合っている場所は、そこではありません。
学ぶべきは「投資額」ではなく「毎日の習慣」
孫正義とAIの組み合わせで真っ先に語られるのは、ソフトバンクグループの巨大投資でしょう。
ArmやOpenAIへの出資を通じて、AIインフラに数兆円規模の資金を投じてきた。2024年以降は「ASI(人工超知能)」の到来を、公の場で何度も口にしています。
事実です。
でも「兆円単位のお金がある人の話でしょ」と結論づけた瞬間、ここから学べるものはゼロになります。
注目すべきは金額ではなく、習慣のほうです。
孫氏は自身のXで、ChatGPTをほぼ毎日使い、思いついたアイデアを片っ端から試していると明かしています。
AIを「調べ物の道具」ではなく「毎日議論する相手」に据えている。
この部分だけなら、予算ゼロで今日から輸入できます。
ここからは、そのやり方を5つに分けて紹介します。
手法①:AIを「格上の相手」として扱う
多くの人は、AIを部下のように扱っています。
上から指示を出して、出てきたものを添削する。
この関係性のままだと、AIの回答も無難な優等生コメントで止まります。
孫氏はAIを「人間の知能をはるかに超える存在になる」と語り、対等どころか格上として向き合う姿勢を隠しません。
相手を格上だと思えば、聞き方が変わります。
「この考えの穴を、容赦なく列挙してください」「私が疑いもせずに信じ込んでいる前提はどれですか」
自分の弱点を指摘させる質問です。
耳の痛い指摘を24時間くれる相談役が、隣の席に座ってくれている。そう考えると、この聞き方をしない理由がなくなります。
手法②:30年後から逆算して聞く
AIへの相談が「今週のタスク」「今月の数字」だけになっていませんか。
それ自体は悪くありません。
ただ、孫正義の意思決定は時間軸がまるで違います。1995年の創業初期から「300年続く会社」を掲げ、遠い未来を先に置いてから現在の打ち手を決めてきました。
未来を固定して、現在を逆算する。
これはAIへの質問に、そのまま応用できます。
「この仕事が10年後に消えているとしたら、何がきっかけだと思いますか」「その前提で、今週から仕込めることを5つください」
時間軸を遠くへ飛ばすだけで、返ってくる答えの質が変わります。
そして不思議なもので、目先の不安が小さく見えてきます。
手法③:賛成と反対を、両方言わせる
「集客のいいアイデアをください」
こう聞いて、教科書どおりの答えにがっかりする。多くの人がここでAIを見限ります。
でも、悪いのはAIではなく質問のほうです。
孫氏は駆け出しの頃、1日1件の発明を考えることを自分に義務づけていたと語っています。数をこなす中で磨かれたのは、答えの量ではなく「問いの立て方」でした。
AIに聞くなら、立場と両面を指定します。
「孫正義になりきって答えてください。この計画に賛成する根拠を3つ、反対する根拠を3つ、両方出してください」
視点を借りて、賛否をセットで出させる。
ただの検索とは、まったく別物の答えが返ってきます。
手法④:ふわっとした言葉を、数字に翻訳させる
AIの答えには「効果的です」「重要です」といった、便利だけど中身のない言葉がよく混ざります。
読んで満足はできても、それでは何も決められません。
孫氏は会議の場で「それは何%か」「金額に直すといくらか」と即座に問い返すことで知られる、筋金入りの数字の人です。
同じ詰め方を、AIにもぶつけましょう。
「今の『効果的』を数字に直してください。何%で、いくらの話ですか」「かかる費用と見込めるリターンを、表で並べてください」
言葉が数字に変わった瞬間、ようやく判断できる材料になります。
手法⑤:1回の回答で引き下がらない
ここまでの4つを実践しても、1往復で会話を閉じてしまうと効果は半減します。
質問して、答えをコピーして、終わり。これでは一般論の域を出ません。
評伝『志高く 孫正義正伝』(井上篤夫著)で繰り返し描かれるのは、1つの仮説を角度を変えて何度も検証し続ける執念です。
AIとの対話でも、同じことをやります。
「その結論の根拠はどこにありますか」「この案に反対する人は、どこを突いてきますか」「5年後から振り返ったら、この判断はどう見えますか」
同じテーマに質問を重ねて、表面の一枚下を取りに行く。
深さは、往復の回数でしか手に入りません。
まとめ
5つを並べ直します。
- AIを格上の相手として扱い、自分の弱点を指摘させる
- 30年後・10年後から逆算して聞く
- 立場を指定して、賛成と反対を両方出させる
- あいまいな言葉を数字と表に翻訳させる
- 1往復で終えず、同じテーマを重ねて検証する
全部に共通するのは、資金力が1円も関係ないことです。
必要なのはスマホと、質問を1つ変えてみる気持ちだけ。
まずは今日、これを打ち込んでみてください。
「私の今の仕事の弱点を、孫正義の視点で指摘してください」
最後に
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参考文献
- 井上篤夫『志高く 孫正義正伝』(実業之日本社)
- ソフトバンクグループ 決算説明会資料および孫正義氏の公式発言(2024年)
- 孫正義氏 公式X(旧Twitter)での発信内容





