スーパーマーケット、コンビニ、ショッピングモールなどなど、複合した商業施設が発展していったのが現代の特徴だ。特徴なんだからしかたない。
スーパー銭湯もその一つだが、さいきんはハイパー銭湯というものも出てきており、銭湯に定住する銭湯族を生み出していて社会問題になっている。
銭湯族の始まりは、スーパー銭湯を職場にする人があらわれたことだ。ノマドワークや遠隔作業が話題になってきたころから、スーパー銭湯で長時間の滞在をしてシェアオフィスのように使うというスタイルが少数だが出てきた。
さてそうなるとスーパー銭湯側もこの手のユーザー向けのサービスを開始した。始めはせいぜい個室や机を使えるとか事務用品販売程度だったが、そのうち貸し会議室や本格的なオフィスサービスまで提供した。顧客を個人から企業向けにして、セミナーなんぞやらせたのである。ここから地獄がはじまる。始まるんだからしかたない。
スーパー銭湯ではお客の管理に腕輪みたいなのが利用されるのをご存知だろう。あれが首輪になり、外せなくなり、探知機と爆弾がついた。ついたんだからしょうがないでしょうが。
そう、企業が労働者をとじこめて働かせることのできるサービスをスーパー銭湯は提供し始めたのであった。え? 人権? 何ですかなそれは?
もともとメシも風呂も仮眠施設もあるサービスだから、労働者を閉じ込めるのにうってつけなのだ。おもにIT系の企業をターゲットに、スーパー銭湯は労働者お仕事超効率パックとして営業をかけた。労働者が逃げても探知できるし、最悪は爆弾を起動できる。
鬼かな?
ネカフェ難民とか言われた時代が懐かしかった。それよりもっと悪いやつだ。なにしろネットカフェは企業と組んで労働者を四六時中監視することはしなかったのだから。スーパー銭湯では、家族連れの横で疲れた労働者がもそもそとメシを食んでいる光景が見られるようになった。
銭湯側にも多大なメリットがあった。なにしろストレスがたまった労働者に、ビールやらマッサージやらアイスクリームを売りつけられますからね。一般客よりよく消費したほどだ。
この「ゆるいタコ部屋」システムは大ヒット、求人に「宿泊施設提供」と書いてあったら気をつけろと言われるようになった。
企業もこのタコ部屋代金を「福利厚生費」にできるので都合が良かった。なにしろ人間に首輪をつけて福利厚生費にできるんだからたまりません。
政府はこれを黙認。
国連はこれに猛抗議したが、日本が拠出金の削減をちらつかせると「スン……」と黙り、スーパー銭湯をユネスコの文化遺産に推薦してくれた。
そしてたまに反乱が起きた。最大のものはのちに令和スパ銭の乱と呼ばれる。令和スパ銭の乱では、労働者たちが抜いたカミソリの刃や文房具などでこっそり密造した剣を振り回し、従業員を人質にとって立てこもった。
爆弾はアルミホイルを巻いて無効化されていたので、最終的には警察の特殊チームが出張る大事件になった。最後の攻防「血のサウナ事件」では犠牲者60名だ。
事態を重く見た政府は、スーパー銭湯に労働者を閉じ込めることを禁止……しなかった。もはやその時には、日本の産業はスパ銭なしでは成り立たなかったのだ。仕方ないのでスパ銭内で労基署が監査したりスパ銭警察が配置されたりした。そう。政府が奴隷制を容認したのである。
それが歴史だ。そうなんだよ。君たちはこのスーパー銭湯で生まれたから、外の世界なんか知らないだろうがね。
この建物の奥には街があって、空が広がってるんだ。
ああ坊や。空には端なんてないんだよ。天井とは違ってね。
もう行きなさい。もう少ししたら、私の首輪が爆発するから。





