中学2年生になったわたしは律儀にも、厨二病患者となった。ありきたりに眼帯に憧れ、デスノートのLのようにだるそうに歩き、少し背伸びをして洋楽を聴き始めた。
あの頃、突然眼帯をして現れた同級生はほんとうに目を患っていたのだろうか。3日後にはもう外していたし、何よりデフォルトが銀魂のキャラクターと同じ口調だったので、わたしは未だに少し疑っている。
お小遣いが週300円だったため、わたしは近所の図書館で洋楽のCDを借りることにした。払っていない税金も取り戻せて、大変よろしい。
とりあえず名前を聞いたことがあるバンドから借りることにしたのだが、ビートルズやカーペンターズなどはバラエティ番組で聴きすぎて、その印象が強いので避けることにした。有名すぎる曲は、たまにこれがあるから厄介だ。未だに小さな恋のメロディの曲を聴くと、オセロ松嶋と世界の朝ごはんの映像が頭に浮かぶ。
そうして知っているアーティストの中から手に取ったのはレディオヘッドの『Amnesiac』と、U2の何かのアルバムだった。図書館においてあるという点を踏まえると、おそらく代表作の『The Joshua Tree』なのではないだろうか
帰宅後、プレーヤーにレディオヘッドのCDをセットし、ワクワクしながら再生してみた。中学2年生の頃のわたしの素直な感想は、
「えっ、イントロキモ」「暗っ」「どこがサビ?」「全部何の音?」「絶対に運動会ではかからない」
だった。なぁ、トム・ヨーク。そんなに悲しそうな顔でこちらを見ないでくれよ。
そもそもレディオヘッド自体がそこまでわかりやすい音楽性のバンドではないのに、その中でもわかりにくいアルバムを選んでしまっている。
もし、今あの頃の自分にオススメするのであれば『Pablo Honey』か『The Bends』にする。名盤とされている『OK Computer』でギリ、『Kid A』はもう全然中学生には難しいと思う。
U2に関しても同じく「やっぱり暗い」「聴き方がわからない」「全体的にぼんやりしている」「楽しいと思えない」という感想だった。大名盤に対して、あまりにも失礼すぎる。
大塚愛、湘南乃風、ヘキサゴンファミリーという手拍子入れ放題の曲ばかり地元で聴かされてたわたしには、洋楽はあまりにも難解だった。
今思うと、アヴリル・ラヴィーンやグリーン・デイであれば、親の車でかかっていたFMでよく流れていたので、すぐに馴染めたのではないだろうか。しかし、当時はそれが誰の何の曲か全くわかっていなかったし、スマートフォンもShazamもGoogle音声検索もなかったので、どうしても辿り着くことができなかった。手元にあるのはぎゃおッPiみたいな名前の偽物のたまごっちだけ。
洋楽とのファーストコンタクトに失敗したわたしは、そこからしばらく洋楽を聴かなかった。
高校生になったわたしは、邦楽を聴き漁るようになった。そこでASIAN KUNG-FU GENERATIONに出会い、ボーカルの後藤さんがWeezerというバンドが好きであることを知った。
早速、TSUTAYAへ行き、1stアルバムの『Weezer』と3rdアルバムの『Weezer』を借りてきた。この2つのアルバムはジャケットの色から「ブルー・アルバム」「グリーン・アルバム」と呼ばれているが、あんま我々の手を煩わせないでほしい。
この2つのアルバムを聴いた感想は、
「わかる!!」
だった。明らかに普段聴いている音楽とも共通点があり、耳馴染みがよかった。
しかし、あいかわらず他の洋楽を聴いてみても、「わからない!」という感想にしかならなかった。ずっとわかるだのわからないだの言っていないで、早く良し悪しを判断する段階まで行ってほしい。林修が何かを知ってるかどうかだけで1時間耐える謎の番組じゃないんだから。
そのまま大学生になってしまったわたしは『ダンサー・イン・ザ・ダーク』というビョーク主演の映画がきっかけで、ビョークに興味を持ち、3度目の洋楽チャレンジをすることとなった。
しかし、CDショップに行って買ってきたのは『Biophilia』という、当時から現在に至るまでかなり微妙な評価のアルバムだった。「もうこの頃にはスマートフォンがあるんだから、ちゃんと調べてくれよ」とも思うし、「調べないのがお前の輝き」とも思う。
こちらを聴いてみた感想は、
「音スカスカだな」「歌うまっ」「やっぱりよくわからない」「でもキラキラした音の感じがちょっと好きかも」
だった。時代を先取りした一人賛否。しかし、新品で買った分はどうにか取り返そうと、寝る前に毎日聴いているうちに徐々に好きになってきた。サブスクだったら絶対にスキップしていたので、お金を払ってしまった悔しさで好きになるものがたくさんあったのが、この時代の良いところである。
だからと言って、自分から洋楽を積極的に聴きたいとは思わなかった。ちゃんと聴いていたのは好きなアーティストがオススメしていたエイフェックス・ツイン、スクエアプッシャー、ザ・クリブス、ザ・リバティーンズ、エマーソン・レイク・アンド・パーマー、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインぐらい。バラバラすぎる。
ちなみにわたしは未だにこういうヤンチャな音楽の聴き方をするので、好きな音楽のジャンルを聴かれると「全部」と言う。J-POPから金網を殴っている音まで、気持ちいい音が鳴っていたら、割となんでもいい。
ディスクガイドを参考に聴いていこうと思ったことも何度かあったが、だいたい年代順で掲載されているせいで、毎回初期のロックンロールを聴いては「なんか全部、横浜銀蝿みたいだな~」と思って履修を諦めるのを繰り返していた。音楽に対する解像度が、コピーされすぎた生駒里奈の自筆メッセージ画像ぐらいガビガビ。

ファンには何が書いてあるのか、わかる
そんなこんなで、わたしはあいかわらず邦楽を聴き漁っていた。
当時、聴いたアルバムのタイトルを自分のブログにひたすらに記録していたのだけど「洋楽聴かないんですね(笑)」「いかにもサブカル大学生(笑)」というコメントを何度もいただいて、誠にありがたかった。
あの時、誰かに冷笑されていた音楽がわたしを形作っているし、それがわたしだけの個性になっているので、誰かにすり寄って全員から評価されている音楽ばかりを聴かなくて、ほんとうによかった。
今ではYouTubeの違法アップロードやサブスクのおかげで、当時聴いていた邦楽が海外で評価されだし、そういう人たちが「当時から好きでしたが?」みたいな顔をしていて、正式に「はぁ?」と思う。
そうして「わからね~、しばらく聴くのやめよ」と「なんとなくわかるかも、もうちょっと聴いてみるか」を繰り返している間に、いつの間にか海外の音楽も当たり前に聴くようになり、今では月100枚ぐらいCDを買う生活をしている。100枚は少ないよという方へ。もうお前が勝ちでいいので、どっか行ってください。
ただ、それがリスナーとして優位であるとは未だに思えなくて、日本にはあまりないジャンルの音楽にも慣れたり、知識によって補強されたおかげで聴きやすくなっただけなのだと思う。そもそも、全部ただの趣味なのだから、好きなものを好きなように聴けばいい。
みんな素直になってほしい。あの頃最初に触れた洋楽ってほんとうによくわからなくなかったですか?なんならわたしは自分の中のプログレ観が凝り固まっていたせいで、ピンク・フロイドの『狂気』を理解するのに、結構最近までかかった。絶対に各々こういうのはあると思うので、音楽ファン全員でよくわからなかった名盤の話をして、大爆笑したい。
https://x.com/natsui_tanoshi/status/2084995746663989321
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※サブカルに関するエッセイ本を出していて、こんな話もたくさんしています!都合がいいですね。
このエッセイは宣伝の為の書き下ろしです!最近発売した本の宣伝の為に、異常な量のエッセイを書き続けています!とにかく本をお願いします!過去記事も読んでね! これの300倍ぐらいの時間をかけて書いたエッセイが、24本も収録されている本です。
1人暮らしの話やバイト先の話やコーヒーのシンプルなエッセイも書いてるので、ワッハッハとウケることも出来ます!
サブカルの話も、事前知識があまり必要ないように作っています! 最近ありがたいことに重版しました!少し前までネット在庫が切れていたのでお早めに是非~! こちらの売れ行きが更に伸びると記事も本に出来る可能性が大です!!
https://x.com/natsui_tanoshi/status/2089334755997417698
https://x.com/natsui_tanoshi/status/2087842128395444397
最近、憧れの宇垣美里さんとお話しました。今なら聴き逃がし配信でこの人が愉快にしゃべっているところも聴けます。





