自信満々なのに、よく聞くと中身が薄い。
なのに、なぜか評価され、出世していく人がいる。
普通は「実力以上に見せているだけ」と思う。
でも仕事では、評価される位置に立った人が、あとから実力をつけていくことも多い。
つまり、あの人たちは単に「自分を大きく見せている人」ではなく、実力がつく場所に先に立っている人でもある。
【自信過剰は、バレたら終わりなのか】
この現象に近いことを、組織の中で「誰が地位を得るのか」という観点から調べた研究がある。
Kennedy、Anderson、Mooreの研究だ。
これは自己啓発的な「自信を持とう」という話ではない。周囲が誰を有能だと見なし、誰に影響力や地位を与えるのかを見た論文である。
問いはシンプルだった。
自信過剰な人は、あとから実力がバレたら評価を失うのか。
普通に考えれば、評価は下がりそうだ。
口だけだった。
調子に乗っていた。
自分を過大評価していた。
そう見られて、地位を失いそうに思える。
しかし、結果は違った。
研究では、参加者に集団で話す人物の動画を見せ、その人がどれくらい影響力や尊敬を集めそうか、リーダーらしく見えるかを評価させた。
最初は、観察者はその人物の実力を知らない。
次に、本人の自己評価と実際の成績を知らされる。
つまり、「この人は実力以上に自信を持っていた」とわかる状態になる。
実力を知る前、自信過剰な人の評価は4.78点だった。
正確に自己評価している人は3.96点、自信不足の人は3.83点。
ここまではわかる。堂々としている人を、人は有能そうに感じる。
問題は、そのあとだ。
「実力以上に自信があった」と知られても、自信過剰な人の評価は4.74点だった。
正確に自己評価している人は4.24点、自信不足の人は4.21点。
ほとんど下がっていない。
むしろ、正確に自己評価している人や自信不足の人より、なお高く見られていた。
別の実験でも、同じ実力なら、自信を強く見せた人のほうが高く評価された。
つまり、自信過剰は「バレたら終わり」とは限らなかった。
同じ実力でも、見え方が評価を動かすことがある。
ただし、これは実験室での研究だ。
動画を見て評価することと、実際の昇進は同じではない。
中身のない自信だけで走り続ければ、どこかで信頼は削れていく。
だから、これはハッタリをすすめる話ではない。
【人は、実力より先に“動き方”を見る】
それでも、ここから読み取れることはある。
人は、実力そのものだけを見ているわけではない。
堂々と話す。
先に判断を置く。
迷いすぎずに前へ進む。
場に出る量が多い。
その振る舞いが、「この人は使えそうだ」という印象をつくる。
そして、その印象が機会を呼ぶ。
実力があるから任される。
これは正しい。
でも、それだけではない。
任される場所に先に立ったから、実力がつく。
これも現実に起きている。
【安全圏にいる人が失っているもの】
仕事で成長が止まる人は、能力が低いというより、ずっと安全圏にいることが多い。
安全圏とは、「失敗しないで済む範囲」のことだ。
会議で発言せずにメモ役に回る。
自分の意見を出さずに、上司の判断を待つ。
提案書に選択肢だけ並べて、おすすめは書かない。
少し難しい仕事を「まだ自信がないので」と断る。
これらは全部、安全だ。
恥をかかない。
突っ込まれない。
責任も軽い。
その代わり、「この人に任せてみよう」と思われる機会も減る。
コンフォートゾーンの外に出るとは、いきなり大勝負をすることではない。
会議で一度だけ仮説を出す。
報告に一行だけ自分の提案を入れる。
少し難しい仕事を「やってみます」と受ける。
このくらいでいい。
小さく前に出る。
足りなさを知る。
あとから調べる。
次は少しうまくやる。
実力は、この小さな背伸びのあとについてくる。
「自分にはできそうだ」という感覚も、ここに近い。
単なるポジティブ思考ではない。
「完璧ではないけど、やってみれば形にできそうだ」と思える感覚のことだ。
この感覚がある人ほど、動き始めやすい。
努力を続けやすい。
失敗したときも踏みとどまりやすい。
だから、実力がついてから前に出る、では遅いことがある。
多くの人は、こう考える。
実力がつく
↓
自信がつく
↓
前に出る
でも仕事で伸びる人は、順番が違う。
少し前に出る
↓
責任が生まれる
↓
足りなさが見える
↓
修正する
↓
実力がつく
↓
本物の自信に変わる
【実践は3つでいい】
だから実践は、次の3つで足りる。
1つ目。
会議で最初に仮説を出す。
正解である必要はない。
「現時点ではA案がよさそうです」
「まだ粗いですが、方向性としてはこちらです」
停滞している場に、最初の判断軸を置ける人が評価される。
2つ目。
報告で終わらず、提案まで置く。
「調べました」だけでは弱い。
「選択肢は3つありますが、今の状況ならCです」
機会を取るのは、情報を集める人ではなく、判断を置ける人だ。
3つ目。
6〜7割できそうで、3〜4割怖い仕事を取りに行く。
小さな進行役。
一次提案。
改善提案。
説明役。
このくらいがちょうどいい。
怖すぎると潰れる。
でも、怖くなさすぎると伸びない。
そのうえで、動作だけ先に変える。
結論から話す。
語尾を濁しすぎない。
不要な前置きを減らす。
わからない時は「確認します」で止めず、「確認して◯時までに戻します」と言う。
そして、前に出たあとに必ず実力を回収する。
ここを抜かすと、ただの薄っぺらい自信家になる。
言ったことを調べる。
弱点を潰す。
型を学ぶ。
フィードバックをもらう。
先に自信を出す。
あとから実力を追いつかせる。
この順番を回せる人だけが、評価だけで終わらず、本当に伸びる。
【まじめな人ほど、先に前へ出たほうがいい】
自信満々で中身が薄い人が評価されるのは、腹が立つ。
でも、そこから学べることもある。
人は、実力そのものだけを見ていない。
前に出る姿勢。
判断する態度。
場を動かす力。
そういうものも見ている。
まじめな人ほど、覚えておいたほうがいい。
実力がつくまで黙っていると、実力がない人ではなく、存在しない人になる。
完璧にできるから任されるのではない。
任される場所に立つから、できるようになる。
自信は、実力の後払いでもいい。
評価されたい人は→@nakemono_shikou
【参考文献】
Kennedy, J. A., Anderson, C., & Moore, D. A. (2013). When overconfidence is revealed to others: Testing the status-enhancement theory of overconfidence. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 122(2), 266–279. doi: 10.1016/j.obhdp.2013.08.005
Bandura, A. (1977). Self-efficacy: Toward a unifying theory of behavioral change. Psychological Review, 84(2), 191–215. doi: 10.1037/0033-295X.84.2.191
Stajkovic, A. D., & Luthans, F. (1998). Self-efficacy and work-related performance: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 124(2), 240–261. doi: 10.1037/0033-2909.124.2.240





