話が上手い人といえば、誰を想像しますか?
僕はもう芸人さんです。特に深夜ラジオ。伊集院光さん、爆笑問題さん、有吉弘行さん。あのあたりの人たちは、とにかく話が上手い。
すべらない話とかもそうですけど、面白い人の話って、聞いているうちに頭の中に映像が浮かぶんですよね。場所、表情、空気、間、気まずさ、変な人の立ち方まで見えてくる。
逆に話が下手な人は、聞いているこっちが一生懸命情報を追わないといけない。
「今なんの話?」
「それ誰の話?」
「つまり何が言いたいの?」
「この情報、覚えておいた方がいいやつ?」
こうなると疲れる。話を聞いているというより、散らかった部屋で落とし物を探している感覚に近い。
話が上手い人は、情報を渡しているんじゃない。景色を見せている。

『お笑い芸人に学ぶ ウケる!トーク術』の田中イデアさんも、お笑い芸人が普通の話をウケる話に変える技術をテーマに本を書いている。これはかなり本質だし面白いので読んで欲しい。面白い話って、才能だけじゃなくて、相手の頭の中に景色を作る技術なんですよね。
だから営業でも、セミナーでも、Xの発信でも、人に影響を与えたいなら、どれだけ相手の頭の中に景色を作れるかが大事になる。
僕も芸人さんのトークを聴いたり、文章術の本を50冊以上読んだり、自分で発信やセミナーをやりながら、どうすればもっと面白く、人を動かせる話し方ができるのかをかなり考えてきた。
今日はその中で、僕が大事にしている心理テクを6つ話します。
1つ目。パンチラインを作る。

芸人さんのトークには、必ず耳を引っ張る言葉がある。
「めちゃくちゃ汚いババアが出てきて」
「心霊スポットに行こうと思ったんですけど」
「その時点で、もう僕だけ冷や汗かいてたんですよ」
こういう言葉があると、続きを聞きたくなる。人は、日常から少し逸脱した言葉に反応するからです。
普通のことを普通に言っても、耳は止まらない。でも、少しだけ異物感のある言葉を入れると、相手の注意がこっちに向く。
Xなら、ワンスクロールかツースクロールに1回はパンチラインが欲しい。トークなら1分に1回は、耳が引っかかる言葉が欲しい。
パンチラインとは、要するに「脳が素通りできない言葉」です。
聞いたことのない組み合わせ。
日常からの逸脱。
強いギャップ。
ちょっと変な固有名詞。
思わず絵が浮かぶ一言。
これがあるだけで、話は一気に聞かれやすくなる。
2つ目。フリを作る。

パンチラインだけだと、話は成立しない。芸人さんがよく言う「フリとオチ」です。
オチを強くしたいなら、その前にちゃんとフリを置く必要がある。
たとえば「電車に乗り遅れたんですよ」だけだと弱い。でも、その前に「絶対に遅刻できない日だった」「前日に調子に乗って夜更かしした」「朝起きた瞬間、終わったと思った」みたいなフリがあると、乗り遅れたことに意味が出る。
フリがない話は、階段なしで2階に行かせようとしているようなものです。聞き手がついてこられない。
お笑いの世界では、オチだけを強くしても笑いにならない。オチを効かせるには、先にフリがいる。
つまり、話が下手な人はオチが弱いだけじゃなくて、オチが着地する地面を作れていない。
話が上手い人は、いきなり結論を投げない。ちゃんと相手の頭の中に前提を置いてから、最後に落とす。
だから面白い話をしたいなら、まず考えるべきは「何を言うか」よりも、「その言葉が効くように、何を先に配置するか」です。
3つ目。ギャップを作る。

話がつまらない人は、だいたいギャップがないです。
ずっとポジティブ。
ずっとネガティブ。
ずっと説明。
ずっと同じ温度。
これだと聞いている側の感情が動かない。
映画でも漫画でも同じで、面白いものには必ずギャップがあります。ピンチがあって、チャンスがある。落ち込んで、立ち上がる。弱い状態から、少しずつ強くなる。
鬼滅の刃でも、炭治郎が毎回ピンチになるから、乗り越える瞬間が気持ちいい。最初からずっと強かったら、たぶんあそこまで面白くない。
元芸人で、今は“笑い”をビジネスコミュニケーションに応用している中北朋宏さんも、笑いは「緊張」と「緩和」だと説明している。
これって、日常会話でも同じだと思う。ずっと平坦な話は、聞いている側の感情が動かない。少し緊張があって、少し裏切りがあるから、話にリズムが出る。
ずっと良い話をしているなら、途中で失敗談を入れる。
ずっと暗い話をしているなら、少し笑える視点を入れる。
ずっと真面目なら、急に生活感のある例えを入れる。
この上下があるから、景色になる。ギャップがない話は、ずっと白い壁を見ている感じになる。

4つ目。相手の言葉を使う。
相手が知らない言葉は、相手の頭の中で景色にならない。
たとえば「ポポチャペペンペンペンみたいなやつです」と言われても、何も見えない。こっちは「何それ?」で止まる。
でも、セパタクローを説明するときに「足でやるバレーボールです」と言えば、一発で景色が見える。サッカーもバレーボールも知っているから、「ああ、足でネット越しにやる感じね」と想像できる。
話がわかりやすい人は、相手の言葉に翻訳するのがうまい。
若い人が相手なら、若い人が知っている言葉を使う。
年配の人が相手なら、その人たちに通じる言葉を使う。
専門家ではない人に話すなら、専門用語を日常語に変える。
お笑い芸人さんも、寄席や営業で客層を見て言葉を変えると聞きます。若い人が多いのか、ご高齢の方が多いのか、会社員なのか、家族連れなのか。そこを見て言葉を選ぶ。
話が上手い人は、自分の言葉を押しつけない。相手の頭にある言葉で、こっちの景色を作る。
5つ目。概念は噛み砕く。
抽象的な言葉は、そのままだと景色になりにくいです。
「怖かった」
「すごかった」
「めちゃくちゃ大変だった」
「かなり努力した」
これだけだと、聞いている側はイメージできない。
たとえば「めちゃくちゃ怖かった」よりも、「リングの貞子が一気に3人出てきたぐらい怖かった」の方が、まだ絵が浮かぶ。しかも少し笑える。
「努力した」よりも、「大谷翔平ぐらい毎日ルーティンを崩さなかった」の方が、ストイックさが見える。
つまり、概念は固有名詞に置き換えた方が伝わる。
恐怖。努力。違和感。焦り。空気感。緊張感。
こういう抽象語をそのまま置くと、読み手はふわっと受け取るしかない。
でも、それを人・場所・物・場面に変えると、一気に見えるようになる。
強い言葉は、難しい言葉ではない。
見える言葉です。

6つ目。言葉で景色を作る。
ここまでのテクニックは、全部ここにつながります。
パンチラインで耳を引く。
フリで前提を置く。
ギャップで感情を動かす。
相手の言葉で翻訳する。
概念を噛み砕いて、具体に変える。
これを全部やると、言葉で景色が作れるようになる。
「怖かった」ではなく、貞子が3人出てくる。
「疲れた」ではなく、帰りの電車でスマホを持ったまま寝落ちする。
「緊張した」ではなく、自己紹介の前にペットボトルのラベルをずっと剥がしている。
こういうふうに言えると、相手の頭に映像が出る。映像が出ると、感情が動く。感情が動くと、話は記憶に残る。
話が上手い人は、語彙力がある人ではないと思う。
相手の頭の中に、ちゃんと場面を作れる人です。
逆に、自分は話が下手だと思っている人は、たぶん情報を渡そうとしすぎている。説明しようとしすぎている。正しく言おうとしすぎている。
でも、人が聞きたいのは、整理された情報だけじゃない。その場にいるような感覚です。
話が上手くなりたいなら、まずは「正確に伝える」よりも、「見えるように話す」を意識するといいです。
情報を渡すな。景色を見せろ。
これだけで、話はかなり変わります。
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参考書籍+オススメ書籍
・お笑い芸人に学ぶ ウケる!トーク術|田中イデア|リットーミュージック
・「ウケる」は最強のビジネススキルである。|中北朋宏|日本経済新聞出版社
・アイデアのちから|チップ・ハース、ダン・ハース|日経BP
・伝え方が9割|佐々木圭一|ダイヤモンド社





