釈放されるtimeleszの猪俣周杜さんの写真を見て、「女性を殴った疑いで逮捕された人だ」より先に、「かっこいい」が来ませんでしたか。
9月25日、黒いスーツで警視庁の前に立ち、頭を下げる映像が、SNSで何百万回も流れました。
逮捕されて、釈放される場面です。それなのに、最初に頭に浮かんだのは、容疑より顔だった。そんな自分に、ちょっと戸惑った人もいると思います。
これは、あなたが薄情だからではありません。
職場でも、学校でも、恋愛でも、似た場面に覚えはありませんか。
同じミスをしても、見た目のいい人は「ドンマイ」で済む。
遅刻しても、なぜか責められない。
ちょっとした失礼も、笑って流してもらえる。
こういうのを見ると、つい言いたくなります。
「結局、世の中は顔なんだろうな」
では、本当にそうなのか。
心理学や、実際の裁判を調べた研究を見ていくと、答えは「半分正解」でした。顔が効く場面は確かにあります。でも、効かなくなる場面も、はっきりあるんです。
先に書いておきます。この記事は、猪俣さんを裁くためのものでも、見た目をからかうためのものでもありません。
先に、起きたこと
報道で分かっていることだけを並べます。
9月19日、猪俣さんは傷害の疑いで逮捕されました。9月18日の夜、東京都江東区のコンビニの駐車場に止めた車の中で、20代の知人女性の顔を複数回殴り、けがをさせた疑いです。
逮捕の時点では、「口論になり手が当たってしまったかもしれない。パニックになった」と話し、容疑を否認していました。
9月25日に釈放され、「このたびは大変申し訳ございませんでした」と頭を下げています。捜査は在宅で続き、起訴されるかどうかはまだ決まっていません。所属事務所は、当面の活動休止を発表しました。
けがをした女性がいます。そして、まだ何も確定していません。この2つを置いたまま、本題に入ります。
① 脳は「顔がいい」と「中身もいい」を勝手につなげる
初対面の人の顔を見て、「優しそう」「ちゃんとしてそう」と感じることがあります。
まだ一言も話していないのに、です。
心理学では、これを「ハロー効果」と呼びます。1つの目立つ特徴に引っ張られて、ほかの特徴まで良く(または悪く)見えてしまう心の動きです。100年以上前、アメリカの心理学者ソーンダイクが名前をつけました。
見た目については、もっと直接的な研究があります。1972年の有名な実験では、見た目の魅力的な人の写真を見せられた人ほど、その人の性格を「優しい」「誠実」と評価し、幸せな人生を送っていそうだと予想しました。研究者たちは、これを「美しいものは善いもの」という思い込みと呼んでいます。
つまり、顔がいい人が許されやすいのは、周りの人が甘いからではありません。見た瞬間に、脳が「きっといい人だ」という前提を勝手に置いてしまうからです。
実践法
- 誰かを「いい人そう」と感じたら、その根拠を1つ言えるか確かめる
- 言えなければ、それは中身ではなく見た目の印象だと気づくだけでいい
② 許されやすさは、本物の裁判にも出ている。ただし軽い話まで
「さすがに裁判では関係ないでしょ」と思うかもしれません。
ところが、1980年にアメリカ・ペンシルベニア州の実際の刑事裁判を調べた研究では、見た目が魅力的な被告ほど、言い渡された刑が軽い傾向がありました。有罪か無罪かの判断には、見た目との関係は見られませんでした。刑の重さのほうに出ていたんです。
ただ、ここからが大事なところです。
1991年に、テキサス州で2,000人以上の被告を調べた研究があります。見た目が罰金や保釈金の額に影響していたのは、軽い罪の時だけでした。重い罪になると、見た目の影響は見られなくなっていました。
顔が効くのは、「まあいいか」で済む範囲の話まで。
人を傷つけたかどうかが問われるような重い話になるほど、人は見た目ではなく中身で判断しようとします。
実践法
- 自分の中の「許せちゃう」に気づいたら、写真や映像を見ずに、文字だけで出来事を読み直す
- 「もし見た目が違う人だったら、同じように許すか」と置き換えてみる
③ 見た目を「使った」とわかると、逆に厳しくなる
顔がいいと、いつでも得をするわけではありません。
1975年の実験では、同じ女性が罪を犯した設定で、写真だけを変えて刑の重さを決めてもらいました。
空き巣の場合は、魅力的な写真のほうが刑が軽くなりました。
ところが、見た目を使って人をだます詐欺の場合は、魅力的な写真のほうが刑が重くなったんです。
人は、見た目の良さそのものには甘い。でも、その見た目を武器にして人を動かしたと分かった瞬間、裏切られたように感じて、かえって厳しくなります。
普段の生活でも同じです。見た目の印象で信用されていた人が、その信用を使って誰かを振り回したと分かると、周りの反動は大きくなります。
実践法
- 見た目で得をしていると感じる場面ほど、それを交渉の道具にしない
- 好印象な相手ほど、大事な約束は言葉で確認する
④ 顔の力は、知り合うほど薄くなる
「顔じゃ勝てない」と感じてきた人に、いちばん伝えたいのがここです。
2015年に、167組のカップルを調べた研究があります。
出会ってすぐに付き合ったカップルほど、2人の見た目の魅力が釣り合っていました。ところが、長く知り合ってから付き合ったカップルや、もともと友達だったカップルでは、その傾向がほとんど見られなかったんです。
研究者の説明はこうです。知り合ったばかりの頃は、誰が魅力的かについて、みんなの意見が一致しやすい。つまり顔が強い。でも、長く付き合うほど、その人の話し方や考え方、一緒にいる時の心地よさが見えてきて、魅力の感じ方が人によってばらけていきます。
顔が一番強いのは、最初の数分だけ。
時間が経つほど、評価は中身に置き換わっていきます。
実践法
- 第一印象で負けたと感じても、勝負を1回目で終わらせない
- 会う回数を増やせる場所(職場、趣味、習い事)で、少しずつ知ってもらう
まとめ
- 脳は「顔がいい」と「中身もいい」を勝手につなげる。好印象の根拠を1つ言えるか確かめる
- 顔で許されるのは軽い話まで。重い話ほど、人は中身で判断する
- 見た目を使ったとわかると、評価は逆に厳しくなる
- 顔の力は、知り合うほど薄くなる
「世の中は結局顔なのか」への答えは、こうなります。
世の中が顔で動くのは、最初と、軽い話だけ。
だから、あの写真を見て最初に「かっこいい」が来た自分を責めなくていい。それは誰の脳にも起きることです。大事なのは、その次に、文字だけで事実を読み直せるかどうかです。
猪俣さんの件は、けがをした人がいる重い話です。だからこそ、顔ではなく、これから明らかになる事実で見ていきたいと思います。
この記事を保存しておいて、次に誰かの第一印象に引っ張られそうになった時、4つの見出しだけ読み返してください。
しんどいことを少し軽くする考え方と、面倒くさがりがAIでラクをする方法を書いています。
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