「Vibe Coding」から「Software 3.0」へ。Claudeを“英語で動く開発・研究・実行チーム”に変える方法
2026年のClaude活用を語るなら、アンドレイ・カーパシーを外すことはできない。OpenAI創業メンバーであり、TeslaのAIディレクターとしてAutopilotの視覚AIを率い、教育者としてもCS231nやLLM講義で多くのエンジニアに影響を与えてきた人物である。カーパシー自身のプロフィールでも、OpenAI創業メンバー、Tesla AI Director、Stanfordでの深層学習教育への関与が明記されている。
さらに2026年5月、カーパシーはAnthropicに参加した。Reutersによれば、彼はClaudeモデルの基礎能力を形づくるpretrainingチームに加わったと報じられている。
つまり、Claudeを語るうえで「カーパシー的に使う」とは、単なる有名人の名前を借りたプロンプト術ではない。LLMを新しいコンピュータ、新しいOS、新しい開発環境として扱う思想を、Claudeの最新機能に接続することだ。
ただし、最初に大事な前提を置く。この記事でいう「ClaudeのKarpathy版」は、Anthropicやカーパシー本人が配布している公式モードではない。カーパシーの公開講演、Claude Codingに関するメモ、Software 3.0の思想、そしてAnthropic公式のClaude最新情報をもとに再構成した実践フレームである。
1. カーパシー版Claude活用の本質は「AIに聞く」ではなく「AIで作る」こと
多くの人はClaudeを、文章生成、要約、調査、メール作成のために使う。もちろんそれでも十分便利だ。しかし、カーパシー的なClaude活用はそこでは止まらない。
彼の2025年の講演「Software Is Changing Again」では、ソフトウェアの地図が大きく変わったことが語られている。Software 1.0は人間が書くコード、Software 2.0はニューラルネットの重み、そしてSoftware 3.0はLLMに対するプロンプトであり、自然言語が新しいプログラミング言語になりつつある、という整理だ。
この見方をClaudeに当てはめると、Claudeは「チャット相手」ではない。
Claudeは、英語や日本語で動く新しい実行環境である。
コードを書く。
テストを書く。
仕様を読む。
ブラウザを使う。
ファイルを編集する。
SlackやGoogle DriveやJiraとつながる。
サブエージェントに仕事を分ける。
成果物をArtifactとして残す。
必要ならプロジェクト全体の文脈を覚える。
2026年のClaudeは、質問に答えるAIではなく、仕事を進めるAIになっている。カーパシー版の使い方とは、この変化を正面から受け入れることだ。
2. 2026年7月時点のClaude最新地図
Claudeの最新ラインナップは、単に「どれが賢いか」で選ぶものではない。Claude Sonnet 5、Claude Opus 4.8、Claude Fable 5、Claude Mythos 5、Claude Haiku 4.5は、それぞれ役割が違う。
Anthropicは2026年6月30日にClaude Sonnet 5を発表した。公式発表では、Sonnet 5はFreeとProのデフォルトモデルで、Max、Team、Enterprise、Claude Code、Claude Platformでも利用できると説明されている。また、2026年8月31日まではAPIで入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり10ドルの導入価格、その後は3ドル/15ドルになるとされている。
Sonnet 5の重要点は、価格性能比とエージェント性能だ。Anthropicは、Sonnet 5を「最もエージェント的なSonnet」と説明し、ツール利用、計画、ブラウザやターミナルを使った自律的な作業が、数か月前ならより大きく高価なモデルを必要とした水準で可能になったとしている。
API面でも大きな変化がある。Claude Sonnet 5は100万トークンのコンテキストウィンドウと128kの最大出力トークンを持ち、Adaptive Thinkingがデフォルトになっている。一方で、従来の手動Extended Thinking指定や、temperature、top_p、top_kなどのサンプリングパラメータを非デフォルトにする運用は使えなくなっている。
Claude Opus 4.8は、複雑なエージェント型コーディングや企業業務向けの上位モデルとして位置づけられている。AnthropicはOpus 4.8について、コーディング、エージェントタスク、長時間作業での性能向上に加え、ユーザーの自律性を支える、根拠の弱い主張を避けるといった正直さ・整合性の改善を強調している。
さらに2026年6月には、Claude Fable 5とClaude Mythos 5も登場した。AnthropicはFable 5を、一般提供されるモデルの中で最も高性能なモデルとして説明し、ソフトウェアエンジニアリング、知識労働、ビジョン、科学研究などで非常に高い性能を持つと発表している。
一方、Mythos 5はProject Glasswingを通じた限定提供で、防御的サイバーセキュリティ領域を中心に慎重に扱われている。
ただしFable 5とMythos 5は、発表直後に米政府の輸出管理指令を受けて一時的にアクセス停止され、その後2026年6月30日に制限解除、7月1日に再展開された。Anthropicはこの経緯の中で、サイバーセキュリティ関連の安全分類器を強化し、一部の正当なデバッグやコーディング作業も誤検知される可能性があると説明している。
つまり、2026年7月時点のClaude選びはこう考えるとよい。
日常作業と多くの開発作業は、まずSonnet 5。
本当に重い設計、長時間のエージェント作業、複雑なレビューはOpus 4.8。
最重要の長時間・高難度タスクはFable 5。
防御的サイバーセキュリティの特定用途では、限定提供のMythos 5。
安価で速い分類、抽出、下処理、サブエージェントにはHaiku 4.5。
カーパシー的に言えば、「すべてを一番強いモデルに投げる」のではない。計算資源を配分する。小さな仕事は小さく、重い仕事は重く、検証可能な形に分ける。
3. カーパシーの転換点:「80%手書き」から「80%エージェント」へ
カーパシーは2026年1月の長文投稿で、Claude Codeなどを使ったコーディングについて、自分のワークフローが短期間で大きく変わったと述べている。彼は、以前は手動コーディングと補完が大半で、エージェント利用は一部だったが、2025年12月頃からはエージェントによるコーディングが中心になり、人間は編集や仕上げに回るようになった、と説明している。
この話の本質は、「AIがコードを書けるようになった」ではない。
本質は、人間の役割が変わったことだ。
人間は、すべての行を書く人ではなくなる。
人間は、目的を決める。
制約を決める。
成功条件を定義する。
テストを要求する。
実装を読んで、危ない抽象化を削る。
設計の美しさを判断する。
Claudeが暴走したら止める。
Claudeが詰まったら、問題を分解する。
カーパシーは同じ投稿で、エージェントはまだ間違えるため、大事なコードでは「鷹のように見る」必要があるとも書いている。間違いは単純な構文エラーではなく、ジュニア開発者がやりがちな微妙な概念ミス、勝手な前提、過剰な抽象化、不要コードの放置、関係ないコメントやコードの変更などに移っている、という指摘だ。
ここがカーパシー版Claude活用の核心である。
Claudeに任せる。
しかし、Claudeを信じ切らない。
Claudeを使って速く作る。
しかし、人間が審美眼と検証責任を持つ。
4. Claudeは「命令」より「成功条件」で動かす
カーパシーのClaude Codingメモで最も重要な示唆の一つは、AIエージェントは具体的な目標に向かってループするのが得意だ、という点だ。彼は、やることを細かく命令するよりも成功条件を与え、テストを書かせ、それを通すようにループさせる方向を勧めている。
これは、Claudeの使い方を根本的に変える。
悪い頼み方はこうだ。
このバグを直して。
少し良い頼み方はこうだ。
このログを見ると、ログイン後にリダイレクトが失敗しています。
原因を探して修正してください。
カーパシー版はこうだ。
目的:
ログイン後、ユーザーが元の遷移先に正しく戻るようにする。
成功条件:
- 既存のログイン成功ケースが壊れない
- 未ログイン状態で保護ページにアクセスした場合、ログイン後に元のURLへ戻る
- 不正なredirectパラメータでオープンリダイレクトが起きない
- 関連するユニットテストまたは統合テストを追加する
- テストが通るまで実装を反復する
進め方:
- まず関連ファイルを探索する
- 実装前に修正計画を短く出す
- テストを先に書く
- 実装する
- テストを実行する
- 最後に、変更点・リスク・未確認点を報告する
命令ではなく、成功条件。
手順ではなく、検証可能なゴール。
これがClaudeを「返答するAI」から「完了に向かって進むエージェント」に変える。
5. Claude Codeは、カーパシー版Claude活用の中心である
Claude Codeは、ターミナル、IDE、コードベース、Git、CI、MCP、サブエージェント、Skillsなどとつながる開発用の実行環境である。AnthropicのClaude Codeドキュメントでは、コードベース探索、バグ修正、リファクタリング、テスト、コミット、CIでのコードレビューやIssueトリアージなどの用途が紹介されている。
カーパシー版のClaude Code運用は、次のような流れになる。
まず、人間が目的を書く。
Claudeにコードベースを探索させる。
Claudeに計画を立てさせる。
Claudeにテストを書かせる。
Claudeに実装させる。
Claudeにテストを実行させる。
Claudeに失敗ログを読ませる。
Claudeに修正させる。
最後に、人間がコードを読む。
読んで気持ち悪いところを削る。
過剰な抽象化を消す。
不要な依存を抜く。
シンプルな実装に戻す。
この最後の「人間が読む」が抜けると、カーパシーが警告する“slopacolypse”に近づく。つまり、大量のAI生成物がGitHub、ブログ、論文、SNSに流れ込み、見た目は動くが品質が怪しいものが増える世界である。
Claude Codeを使うなら、書く力より読む力が重要になる。
これからの強いエンジニアは、コードをすべて手で書く人ではない。
Claudeが書いたコードの良し悪しを、速く、深く、厳しく判断できる人だ。
6. CLAUDE.mdは、Claudeに与える“プロジェクト憲法”である
Claude Codeでは、セッションごとに文脈がリセットされる。そこで重要になるのがCLAUDE.mdだ。Anthropicのドキュメントでは、Claude Codeのセッションは新しいコンテキストウィンドウから始まり、プロジェクト知識を引き継ぐ仕組みとして、ユーザーが書くCLAUDE.mdと、Claudeが補正や好みに基づいて残すAuto memoryが説明されている。
CLAUDE.mdは、単なるメモではない。
これは、Claudeにとってのプロジェクト憲法である。
ここに書くべきなのは、細かいプロンプトではない。
設計思想、禁止事項、品質基準、テスト方針、命名規則、セキュリティ方針、レビュー観点である。
カーパシー版 CLAUDE.md テンプレート
Project Rules for Claude
Mission
このプロジェクトの目的は、[目的を書く] です。
Claudeは短期的に動くコードではなく、長期的に保守できる実装を優先してください。
Core Principles
- まず既存コードを理解してから変更する
- 勝手な前提で進めない
- 不明点、矛盾、仕様の曖昧さを見つけたら明示する
- 過剰な抽象化を避ける
- 1000行の複雑な解決より、100行の明快な解決を優先する
- 関係ないファイル、コメント、挙動を変更しない
- Dead codeを残さない
- セキュリティ、権限、入力検証を軽視しない
Workflow
- 変更前に関連ファイルを探索する
- 実装前に短い計画を出す
- 可能な場合はテストを先に書く
- 実装後にテストを実行する
- 失敗したらログを読んで原因を説明する
- 最後に、変更点・確認済み項目・未確認リスクを報告する
Review Checklist
- この変更は本当に必要か
- もっと単純にできないか
- 既存仕様を壊していないか
- エラー処理は十分か
- テストは意味のある失敗を検出するか
- 型、Lint、Build、主要テストは通るか
Communication
- 不確かなことを断定しない
- トレードオフを明示する
- ユーザーが間違った方向に進んでいる場合は丁寧に止める
- 実装完了を主張する前に証拠を示す
これだけで、Claudeの振る舞いは変わる。
「何となくコードを書いてくれるAI」から、「プロジェクトの設計思想に沿って作業するエージェント」に近づく。
7. Claudeには、XMLタグで文脈を渡す
Claudeのプロンプト設計では、構造化が非常に重要だ。Anthropicのプロンプトベストプラクティスでは、複雑なプロンプトで指示、文脈、入力、例を混ぜる場合、XMLタグを使って内容を分けると、Claudeが曖昧さなく解析しやすくなると説明されている。
カーパシー的に言えば、これはSoftware 3.0のコードスタイルである。
Pythonで関数やクラスを整理するように、プロンプトでも役割とデータを分ける。
<task>
新しい請求書CSVインポート機能を実装してください。
</task>
<context>
このプロジェクトはB2B SaaSの管理画面です。
既存のCSVインポート機能は customers/import にあります。
請求書データは invoices テーブルに保存されます。
</context>
<success_criteria>
- CSVの必須列が欠けている場合はエラーを返す
- 日付形式が不正な行はスキップせず、行番号付きでエラー表示する
- 正常なCSVは一括登録される
- 重複invoice_idは更新ではなくエラーにする
- テストを追加して全件通す </success_criteria>
<constraints>
- 既存のcustomers/importの設計を参考にする
- 新しい外部ライブラリは追加しない
- UI文言は日本語
- セキュリティ上、CSV内容をログにそのまま出さない </constraints>
<output>
最初に計画を出し、承認後に実装してください。
</output>
Claudeは自然言語で動くが、自然言語を雑に渡す必要はない。
Claudeにとって読みやすい文脈構造を作る。
これが、上級者のClaude活用である。
8. 「Vibe Coding」は雑に作ることではない
カーパシーは「vibe coding」という言葉で有名になった。これは、自然言語でAIに指示し、細かなコードの行ではなく、作りたいものの感覚や目的を伝えながら開発するスタイルを指す言葉として広がった。彼は「英語が新しいプログラミング言語になる」という趣旨の見方でも知られている。
しかし、ここで誤解してはいけない。
カーパシー版のVibe Codingは、「コードを読まなくていい」という意味ではない。
むしろ逆である。
Claudeに大きく書かせるほど、人間はより厳しく読まなければならない。
Claudeに速く作らせるほど、人間はより明確に成功条件を定義しなければならない。
Claudeに任せるほど、人間の設計センス、プロダクト感覚、セキュリティ意識、レビュー能力が問われる。
これからの開発は、生成能力と識別能力に分かれる。
生成はClaudeが担う。
識別は人間が鍛える。
コードを書く筋肉は少し衰えるかもしれない。
しかし、コードを読む筋肉、設計を見抜く筋肉、システム全体を把握する筋肉は、むしろ以前より重要になる。
9. Claudeの真価は「時短」より「拡張」にある
カーパシーはClaude Codingのメモで、LLM支援の効果は単純なスピードアップだけでは測れないとも述べている。速くなるだけでなく、以前なら作る価値がなかった小さなツールを作れるようになり、自分の知識やスキルの外にあったコードにも取り組めるようになる、という見方だ。
これは非常に重要だ。
Claudeを使うと、1時間の作業が10分になる。
それは時短である。
しかし本当の変化は、そもそも以前ならやらなかったことをやれるようになる点にある。
社内の小さな分析ダッシュボード。
顧客ごとの個別レポート。
営業資料の自動生成。
ログ監視の簡易ツール。
自分専用の学習アプリ。
面倒で放置していたテスト。
古いコードの整理。
ドキュメントの再構成。
複数ファイルにまたがる地味なリファクタリング。
人間だけなら「面倒だから後で」となるものが、Claudeとなら「ついでに作るか」になる。
ここに、AI時代の本当のレバレッジがある。
10. Claude Code + IDEの正しい配置
カーパシーは、エージェントだけを信じてIDEを捨てるような極端な見方には慎重だ。彼の現在の流れは、Claude Codeのセッションを複数開きつつ、横に大きなIDEを置いてコード確認や手動編集を行うスタイルだと説明されている。
これは実務でもそのまま使える。
左側にClaude Code。
右側にIDE。
Claudeには探索、実装、テスト、修正を任せる。
人間はdiffを見る。
設計を見る。
変な抽象化を見る。
不要な変更を見る。
Claudeの説明と実際のコードが一致しているかを見る。
Claudeは作業者。
IDEは検査室。
人間は責任者。
この三角形が、2026年の強い開発環境になる。
11. Claude Codeの基本ワークフロー
Claude Codeで開発を始めるときは、いきなり「実装して」と頼まない。まず探索させる。
このリポジトリを探索して、以下を把握してください。
- アプリの構成
- 主要なディレクトリ
- テストの実行方法
- Lint・型チェック・Buildの方法
- 認証・DB・APIの設計
- この機能を追加するなら触る可能性が高いファイル
まだコードは変更しないでください。
最後に、変更前に確認すべき質問を出してください。
次に、計画を出させる。
以下の機能を追加したいです。
<feature>
[追加したい機能を書く]
</feature>
<success_criteria>
[成功条件を書く]
</success_criteria>
まず実装計画を出してください。
計画には、変更ファイル、追加テスト、リスク、代替案を含めてください。
まだコードは変更しないでください。
次に、テストを先に書かせる。
計画に沿って、まずテストを追加してください。
実装はまだ最小限にしてください。
テストは以下を満たしてください。
- 仕様が壊れたら失敗する
- 例外ケースを含む
- 過度に実装詳細へ依存しない
- 既存のテストスタイルに合わせる
テスト追加後、実行して失敗することを確認してください。
最後に、実装と反復を任せる。
テストを通す実装をしてください。
実装後、関連テスト、型チェック、Lintを実行してください。
失敗した場合はログを読み、原因を説明してから修正してください。
完了時は、変更点、確認済み項目、未確認リスクをまとめてください。
この流れにすると、Claudeは単にコードを書くのではなく、検証ループに入る。
カーパシーがいう「成功条件を与えてループさせる」使い方に近づく。
12. Claudeに“単純化レビュー”を必ずさせる
カーパシーは、LLMが過剰に抽象化し、1000行の複雑な構造を作ってしまうことがあると指摘している。人間が「もっと単純にできない?」と聞くと、すぐ100行程度に縮めることもある、という趣旨の話をしている。
したがって、Claudeで実装した後には必ず「単純化レビュー」を入れる。
今の実装を、シニアエンジニアとして厳しくレビューしてください。
観点:
- 過剰な抽象化はないか
- もっと少ないファイル・少ない関数でできないか
- 新しい概念を増やしすぎていないか
- 既存の設計に自然に乗っているか
- Dead codeや不要なコメントはないか
- 将来の保守で混乱しそうな命名はないか
- セキュリティ・エラー処理・境界条件は十分か
出力:
- 問題点
- 単純化案
- 実際に削れるコード
- リスク
- 修正版
Claudeに作らせた後、Claudeに削らせる。
Claudeに実装させた後、Claudeに疑わせる。
Claudeに説明させた後、人間が読む。
これが、AI生成コードをスロップにしない最小条件である。
13. サブエージェントで、Claudeを“チーム化”する
Claude Codeは、サブエージェントを使ってタスクを分担できる。Anthropicのドキュメントでは、Claude Codeには特定用途のヘルパーエージェントがあり、さらにユーザーは独自のサブエージェントを作成できると説明されている。サブエージェントには、カスタムプロンプト、ツール制限、権限、Hooks、Skillsなどを設定できる。
カーパシー版の考え方では、Claudeを一人の万能助手として使わない。
役割を分ける。
探索エージェント。
実装エージェント。
テストエージェント。
セキュリティレビューエージェント。
単純化レビューエージェント。
ドキュメントエージェント。
移行計画エージェント。
データ分析エージェント。
たとえば、以下のようなサブエージェント設計が使える。
security-reviewer
あなたはセキュリティレビュー専門のサブエージェントです。
実装そのものは行わず、変更差分を読み、脆弱性リスクを指摘します。
重点観点:
- 認証・認可
- 入力検証
- SQL/NoSQLインジェクション
- XSS
- SSRF
- 秘密情報のログ出力
- 権限昇格
- オープンリダイレクト
- 依存パッケージのリスク
出力:
- 高リスク
- 中リスク
- 低リスク
- 誤検知の可能性
- 修正案
simplifier
あなたは単純化専門のサブエージェントです。
コードを増やすのではなく、減らすことを目的にレビューします。
重点観点:
- 不要な抽象化
- 重複
- 過剰な設定
- 新規依存の必要性
- 既存パターンとの不一致
- 読みにくい名前
- テストしにくい構造
出力:
- 削れる箇所
- 統合できる箇所
- 既存実装に寄せられる箇所
- 最小実装案
Claudeをチームにするとは、複数のAIをただ並べることではない。
観点を分けることだ。
実装するAIと、疑うAIを分ける。
速く作るAIと、遅く厳しく見るAIを分ける。
これが実務で効く。
14. Skillsは、Claudeに“会社の型”を覚えさせる仕組み
ClaudeのSkillsは、特定タスクを繰り返し高品質に行うためのフォルダ型の指示・スクリプト・リソースである。Anthropicのヘルプでは、SkillsはClaudeが専門タスクで性能を上げるために動的に読み込む仕組みであり、ブランドガイドラインに沿った資料作成、組織固有のデータ分析手順、個人タスクの自動化などに使えると説明されている。
CLAUDE.mdがプロジェクト憲法なら、Skillsは業務マニュアルである。
たとえば、次のようなSkillsを作る。
営業提案書Skill。
月次レポートSkill。
コードレビューSkill。
SQL分析Skill。
障害対応レポートSkill。
採用面接メモSkill。
Notion議事録Skill。
Excel財務モデルSkill。
ブランド準拠スライドSkill。
Claudeに毎回「この会社ではこう書いて」「このExcelではこの形式で」「このレビューではこの観点で」と説明しているなら、それはSkill化すべきである。
営業提案書Skillの例
Skill: enterprise-proposal
Purpose
エンタープライズ顧客向けの提案書を、当社の標準構成で作成する。
Inputs
- 顧客名
- 業界
- 顧客課題
- 提案サービス
- 予算感
- 導入スケジュール
- 競合状況
Output Format
- 表紙
- エグゼクティブサマリー
- 顧客課題の整理
- 提案方針
- 導入ステップ
- 体制
- 価格・見積もり前提
- リスクと対策
- 次のアクション
Style
- 経営層向けに簡潔
- 誇大表現を避ける
- 数字には根拠を添える
- 顧客の言葉を優先する
毎回プロンプトを書くのではなく、Claudeに再利用可能な能力として渡す。
これが、Claudeを個人利用から業務基盤へ進化させる鍵になる。
15. MCPでClaudeを“現実の業務システム”につなぐ
Claude活用が一段変わるのは、MCPを使ったときだ。Anthropicのドキュメントでは、Model Context ProtocolはAIアプリケーションを外部システムにつなぐオープン標準であり、Claude CodeはMCPを通じてツール、データベース、API、Issueトラッカー、監視ダッシュボードなどに接続できると説明されている。
MCPの意味は大きい。
これまでのClaudeは、人間が情報をコピーして貼る必要があった。
MCP後のClaudeは、自分で情報源を見に行ける。
JiraのIssueを見る。
Slackの議論を読む。
Google Driveの仕様書を参照する。
Figmaデザインを読む。
DatadogやSentryのログを確認する。
DBスキーマを見る。
GitHub Issueを更新する。
社内APIを叩く。
チケットを作る。
レポートを保存する。
AnthropicのMCP説明では、Claude CodeがFigmaデザインからWebアプリを生成する例や、企業チャットボットが複数DBに接続して分析する例も挙げられている。
カーパシー版Claude活用では、MCPは単なる連携機能ではない。
Claudeを現実世界に接地させるための感覚器官である。
MCP接続後のプロンプト例
Jira、GitHub、Sentry、Google Driveに接続されています。
目的:
直近の決済失敗率上昇の原因を調査し、修正計画を作る。
進め方:
- Sentryで関連エラーを確認
- GitHubで直近の決済関連変更を確認
- Jiraで関連Issueを確認
- Google Driveの決済仕様書を確認
- 原因仮説を3つに絞る
- 最も可能性の高い原因を特定
- 修正案、テスト案、ロールバック案を出す
制約:
- 本番データを書き換えない
- 破壊的操作は提案だけにする
- 根拠のない断定をしない
この使い方になると、Claudeは「回答」ではなく「調査業務」を行う。
カーパシーがいうSoftware 3.0の世界では、自然言語が実際の業務システムを動かすインターフェースになる。
16. Claude Projectsは、文脈を持つ“作業部屋”である
ClaudeのProjectsは、チャット履歴と知識ベースを持つ自己完結型ワークスペースである。ヘルプでは、Projectごとにドキュメントをアップロードし、文脈を与え、焦点を絞った会話を行えると説明されている。
これは、非エンジニアにとってのCLAUDE.mdに近い。
たとえば、次のようなProjectを作る。
新規事業Project。
YouTube台本Project。
採用Project。
資金調達Project。
顧客サポートProject。
論文読解Project。
自社プロダクトProject。
競合分析Project。
個人学習Project。
Projectには、毎回使う資料を入れておく。
会社概要。
顧客ペルソナ。
過去の提案書。
ブランドトーン。
商品仕様。
FAQ。
競合リスト。
過去の議事録。
数字の定義。
禁止表現。
Claudeは文脈があるほど強くなる。
プロンプト単体を磨くより、作業部屋を整える方が重要になる。
17. Artifactsは、Claudeの出力を“使える成果物”に変える
ClaudeのArtifactsは、会話とは別の専用ウィンドウで、アプリ、ツール、可視化、ドキュメント、コンテンツなどの独立した成果物を作れる機能である。Anthropicのヘルプでは、Artifactsにより、アイデアを共有可能なアプリ、ツール、コンテンツに変えられると説明されている。
これもカーパシー的には重要だ。
なぜなら、AI活用は「回答」ではなく「Artifact」を残すべきだからである。
良いプロンプトは、答えを求めない。
成果物を求める。
この売上CSVを分析して、単なる説明ではなく、経営会議で使えるインタラクティブなダッシュボードArtifactを作ってください。
必要な要素:
- 月次売上推移
- 商品カテゴリ別売上
- 顧客セグメント別売上
- 前月比・前年比
- 異常値のハイライト
- 経営者向けの要点3つ
- 次に見るべき指標
このLP案をもとに、実際にブラウザで確認できるプロトタイプArtifactを作ってください。
条件:
- ファーストビュー
- 課題提起
- ベネフィット
- 機能説明
- 導入事例
- FAQ
- CTA
- モバイルで読みやすい構成
回答ではなくArtifact。
説明ではなく道具。
この発想に変えると、Claudeは知識の提供者ではなく、仕事の生産者になる。
18. Claudeはファイル作成・編集にも使う
Claudeは、チャットだけでなく、Excel、レポート、チャート、プレゼンテーションなどの作成・編集にも使える。Claudeヘルプでは、Excelで数式付きの財務モデルを作る、アップロードデータを高度に分析する、チャート付きレポートを作る、文書からプレゼンを生成する、といった用途が説明されている。
カーパシー版では、これも「生成」ではなく「ワークフロー」にする。
添付の売上データをもとに、経営会議用のExcelモデルを作ってください。
要件:
- 月次売上、粗利、営業利益
- 商品別・チャネル別の分解
- 前年同月比
- 3つのシナリオ予測
- 主要KPIのチャート
- 入力セルと計算セルを分ける
- 数式が追いやすい構造にする
最後に、どの前提を変えると利益が最も動くかを説明してください。
Claudeのファイル作成能力は、単なる「きれいな資料作成」ではない。
人間が意思決定するための中間成果物を作る力である。
19. Claude Tag、Cowork、Connectorsで、Claudeはチームメンバー化する
2026年のClaudeは、個人チャットだけではない。AnthropicはClaude Tagを発表し、Slack上でClaudeをチームメンバーのように呼び出し、選択したチャンネル、ツール、データ、コードベースにアクセスさせ、タスクを委任できる仕組みを説明している。
また、ClaudeのConnectorsは、Linear、Slack、Google Driveなどにつなげられる。ヘルプでは、Claude、Claude Desktop、Claude Code、APIのMCP Connectorで利用でき、カスタムConnectorやMCP対応サービスにも接続できると説明されている。
Google Workspace Connectorでは、Gmail、Google Calendar、Google Driveに接続し、メール検索、カレンダー管理、ドキュメント作業、ファイル保存などを会話から行えると説明されている。
これは、Claudeを「使う」から「同僚として呼ぶ」への変化である。
Slackでこう頼む。
このチャンネルの今週の議論を読み、未決事項を整理してください。
出力:
- 決まったこと
- まだ決まっていないこと
- 担当者が曖昧なタスク
- ブロッカー
- 来週の会議で決めるべきこと
- Jiraに起票すべきIssue案
またはこう頼む。
このチャンネル、関連Google Drive資料、GitHub Issueを見て、リリース準備状況をまとめてください。
確認観点:
- 未解決バグ
- ドキュメント未整備
- 顧客告知
- サポートFAQ
- リスク
- Go/No-Go判断
Claudeが業務システムに接続されると、プロンプトは命令文ではなく、仕事の依頼文になる。
20. Claude ScienceとClaude Design:専門領域でも“Artifact中心”になる
Anthropicは2026年6月30日にClaude Scienceを発表した。これは科学者向けのAIワークベンチで、研究でよく使うツールやパッケージを統合し、監査可能なArtifactを作り、柔軟な計算資源へのアクセスを提供するものと説明されている。さらに、最大50件のAI for Scienceプロジェクトに最大3万ドルのクレジットを提供する支援も発表された。
またClaude Designでは、ユーザーが必要なものを説明するとClaudeが初期版を作り、会話、インラインコメント、直接編集、Claudeが作るカスタムスライダーなどで調整できると説明されている。チームのデザインシステムを適用することもできる。
この流れは、カーパシーがSoftware 3.0で語った「LLMは新しいOSに近い」という見方と相性がよい。
専門家は、Claudeに答えを出させるのではない。
Claudeに作業環境を構築させる。
分析し、可視化し、検証し、Artifactを残させる。
科学者なら、実験設計、文献整理、コード、解析ノート、図表、再現手順。
デザイナーなら、コンセプト、ワイヤーフレーム、バリエーション、ブランド適用、プロトタイプ。
エンジニアなら、Issue、設計、テスト、実装、レビュー、PR。
ビジネス職なら、資料、モデル、ダッシュボード、議事録、意思決定メモ。
Claude時代の成果物は、文章だけではない。
作業環境そのものが成果物になる。
21. カーパシー版Claude活用の7原則
原則1:Claudeをチャット欄ではなく、新しいコンピュータとして扱う
Claudeに質問するだけでは弱い。
Claudeに作らせる。
動かせるArtifactを出させる。
ファイルを編集させる。
テストを走らせる。
チケットを読ませる。
Slackの文脈を読ませる。
コードベース全体を探索させる。
Software 3.0の考え方では、プロンプトは文章ではなくプログラムである。
原則2:命令ではなく成功条件を与える
「これをやって」ではなく、「何を満たせば成功か」を書く。
Claudeはゴールが明確なほど、ループして進めやすい。
成功条件:
- 既存テストが壊れない
- 新しい仕様を検証するテストがある
- エラー時の挙動が明確
- 実装が最小限
- 未確認リスクが報告される
原則3:テストを先に置く
Claudeにコードだけを書かせると、見た目は動くが保証が弱い。
テストを書かせ、通るまで反復させる。
これはClaudeを自律的にするためのレールになる。
原則4:人間はコードを書く人から、コードを読む人へ移る
生成はClaudeが速い。
しかし、識別、審美眼、設計判断、セキュリティ判断は人間が持つ。
これを放棄すると、AI生成物はすぐに負債化する。
原則5:過剰な抽象化を必ず削る
Claudeは賢いが、時に大げさな構造を作る。
実装後に必ず「もっと単純にできるか」を聞く。
1000行を100行に戻す勇気が、人間側に必要だ。
原則6:CLAUDE.md、Skills、Subagents、MCPで環境を作る
強いClaude活用は、毎回のプロンプトではなく環境設計で決まる。
CLAUDE.mdでプロジェクト憲法を作る。
Skillsで業務マニュアルを作る。
Subagentsでレビュー観点を分ける。
MCPで実システムにつなぐ。
原則7:速度ではなく、やれることの範囲を広げる
Claudeの価値は、作業を速くするだけではない。
以前なら面倒で作らなかった小さなツール、分析、テスト、ドキュメントを作れるようにすることだ。
AI活用の本質は時短ではなく、行動範囲の拡張である。
22. そのまま使えるClaudeプロンプト集
- カーパシー式・コードベース探索プロンプト
このリポジトリを探索してください。
まだコードは変更しないでください。
目的:
このプロジェクトの構造を理解し、今後の開発でClaudeが安全に作業できるようにする。
出力:
- 全体アーキテクチャ
- 主要ディレクトリ
- 主要な実行コマンド
- テスト・Lint・型チェック・Buildの方法
- 認証、DB、API、状態管理の場所
- 変更時に壊しやすい箇所
- CLAUDE.mdに追記すべきルール
- 次に確認すべき質問
- 成功条件ドリブン実装プロンプト
以下の機能を実装してください。
実装前に計画を出し、テストを先に作り、テストが通るまで反復してください。
<feature>
[実装したい機能]
</feature>
<success_criteria>
- [成功条件1]
- [成功条件2]
- [成功条件3] </success_criteria>
<constraints>
- 既存設計に合わせる
- 新しい依存ライブラリは追加しない
- 関係ないファイルを変更しない
- 不明点は勝手に決めず、仮定として明示する </constraints>
<done_definition>
- 関連テストが通っている
- Lintまたは型チェックが通っている
- 変更点と未確認リスクが報告されている </done_definition>
- テストファーストプロンプト
まずテストだけを書いてください。
実装はまだ行わないでください。
仕様:
[仕様を書く]
テスト要件:
- 正常系
- 異常系
- 境界条件
- セキュリティ上の注意点
- 回帰テストとして意味があること
テスト追加後、なぜそのテストで仕様を検証できるのか説明してください。
- 単純化レビュー
この実装を単純化してください。
ただし、挙動とテストは維持してください。
観点:
- 不要な抽象化
- 重複
- 過剰なファイル分割
- 不自然な命名
- 既存パターンとのズレ
- Dead code
- コメントと実装の不一致
出力:
- 削れるもの
- 統合できるもの
- より自然な設計
- 修正版
- 変更後に実行すべきテスト
- AIコードレビュー
あなたはシニアエンジニアです。
以下の差分を厳しくレビューしてください。
観点:
- 仕様を満たしているか
- 既存挙動を壊していないか
- エラー処理は十分か
- セキュリティリスクはないか
- テストは意味があるか
- 実装は単純か
- 将来の保守で困らないか
出力:
- 必ず直すべき問題
- できれば直すべき問題
- 良い点
- 追加テスト案
- マージ可否
- MCP調査エージェントプロンプト
接続済みのツールを使って、以下の問題を調査してください。
<problem>
[調査したい問題]
</problem>
<available_sources>
- GitHub
- Jira
- Slack
- Google Drive
- Sentry
- Database schema </available_sources>
<rules>
- 破壊的操作はしない
- 根拠のない断定をしない
- 使った情報源を明記する
- 推測と確認済み事実を分ける </rules>
<output>
- 確認済み事実
- 有力な原因仮説
- 反証・不確実性
- 追加で見るべき情報
- 修正案
- リスク
- 次の一手 </output>
- CLAUDE.md生成プロンプト
このリポジトリを読み、Claude Code用のCLAUDE.mdを作ってください。
含める内容:
- プロジェクト概要
- 実行コマンド
- テスト方法
- コーディング規約
- 触ってはいけない領域
- セキュリティ方針
- 変更前に確認すべきこと
- 実装後に必ず実行するチェック
- Claudeがやりがちな失敗への注意
- Subagent設計プロンプト
このプロジェクトでClaude Codeを使うために、サブエージェント構成を設計してください。
目的:
品質を落とさず、開発・レビュー・テスト・ドキュメント作成を分担する。
出力:
- 必要なサブエージェント一覧
- 各エージェントの役割
- 使用可能ツール
- 禁止事項
- 呼び出すタイミング
- 各エージェント用プロンプト
- プロダクト仕様から実装計画へ変換するプロンプト
以下のプロダクト仕様を、実装可能な開発計画に分解してください。
<spec>
[仕様]
</spec>
出力:
- ユーザーストーリー
- 技術的タスク
- DB変更
- API変更
- UI変更
- テスト計画
- リリース手順
- リスク
- 最小リリース範囲
- Claude Codeに渡すべき最初のタスク
- カーパシー式・学習プロンプト
私は[テーマ]を学びたいです。
あなたは教育者として、単に説明するのではなく、私が自分で理解できるように導いてください。
進め方:
- 全体像を地図として示す
- 重要概念を小さく分ける
- 直感的な説明をする
- 数式・コード・具体例で補強する
- 小テストを出す
- 私の回答から理解の穴を診断する
- 次の課題を出す
最後に、このテーマをClaudeやAIエージェントで実装するならどう使うかも説明してください。
23. Claude活用で絶対に避けるべき失敗
失敗1:Claudeの完了報告を信じすぎる
Claudeは改善されているが、完了したと言っても、テストを実行していない、該当ファイルを読んでいない、前提を勝手に置いている場合がある。Opus 4.8では正直さや不確実性の表明が改善されたとされるが、それでも実務では証拠を要求するべきだ。
完了と判断した根拠を示してください。
実行したコマンド、通ったテスト、確認したファイル、未確認のリスクを分けて報告してください。
失敗2:いきなり大規模変更させる
Claudeは大きな変更もできるが、最初から巨大なリファクタリングを任せると、差分が読めなくなる。
小さく切る。
テストを置く。
段階的に進める。
各段階でレビューする。
失敗3:CLAUDE.mdを書かない
プロジェクトごとのルールを毎回口頭で説明していると、Claudeの品質は安定しない。
CLAUDE.mdに残す。
Skillsにする。
サブエージェント化する。
失敗4:レビュー専門のClaudeを置かない
Claudeに実装だけさせると、Claude自身の前提に乗ったまま進む。
別の観点でレビューさせる。
特にセキュリティ、単純化、テスト妥当性、UXの観点は分ける。
失敗5:サイバーセキュリティ用途で境界を超える
Claude Sonnet 5はSonnet系列で初めてリアルタイムのサイバーセキュリティ安全措置を持つモデルと説明されており、高リスクなサイバー関連リクエストは拒否される場合がある。
Fable 5でも、安全分類器が強化され、正当な作業でも一部ブロックされる可能性がある。
防御的な監査、パッチ作成、ログ調査、セキュアコーディングには使う。
攻撃、悪用、回避、エクスプロイト作成には使わない。
実務では、権限、監査ログ、承認フローを必ず入れる。
24. 非エンジニア向け:Claudeを“カーパシー式”に使うなら
カーパシー版というとコーディングの話に見えるが、本質はエンジニア限定ではない。
自然言語で新しいコンピュータを動かす。
成功条件を与える。
Artifactを残す。
レビューさせる。
MCPやConnectorで業務システムにつなぐ。
この原則は、営業、マーケティング、人事、経営、研究、教育にもそのまま使える。
営業
この商談メモ、顧客サイト、過去提案書をもとに、次回商談の戦略を作ってください。
出力:
- 顧客の本当の課題
- 決裁者が気にする論点
- 反対されそうな点
- 提案すべき価値
- 使うべき事例
- 次回の質問リスト
- 提案書Artifactの構成
マーケティング
この商品について、LPを作る前に顧客理解を深めてください。
出力:
- 想定顧客
- 顧客の痛み
- 既存代替手段
- 購入を妨げる不安
- 刺さる訴求軸
- 誇張になりやすい表現
- LPの構成案
- A/Bテスト案
人事
この職種の採用要件をもとに、面接設計を作ってください。
出力:
- 必須スキル
- 見極めるべき行動特性
- 面接質問
- 良い回答例
- 危険な回答例
- 課題選考案
- 評価シート
- バイアスを避ける注意点
経営
添付の月次資料を読み、経営判断に使える形にしてください。
出力:
- 今月の重要変化
- 数字で確認できる事実
- 主要リスク
- 成長機会
- 意思決定が必要な論点
- 追加で確認すべきデータ
- 次回会議のアジェンダ
非エンジニアでも、Claudeを「相談相手」ではなく「仕事を進めるエージェント」として扱える。
これがSoftware 3.0の民主化である。
25. カーパシー版Claude活用の最終形
最終形は、こういう働き方になる。
朝、ClaudeがSlack、メール、カレンダー、Jira、GitHub、Google Driveを確認する。
重要な変化をまとめる。
人間が今日の優先順位を決める。
Claude Codeが実装を進める。
別のClaudeサブエージェントがレビューする。
Claudeがテストを実行する。
ClaudeがPR説明を書く。
Claudeが顧客向けリリースノートを作る。
Claudeが社内FAQを更新する。
ClaudeがダッシュボードArtifactを更新する。
人間は、方向性、品質、責任、判断を担う。
これは、人間が不要になる未来ではない。
人間の仕事が、より高い抽象度に移る未来である。
カーパシーは、LLMエージェント能力が2025年12月頃にある種の閾値を超え、ソフトウェアエンジニアリングに相転移を起こした、という趣旨の見方を示している。
その相転移をClaudeで使いこなすには、ただ流行ツールを触るだけでは足りない。
Claudeに成功条件を与える。
Claudeにテストを書かせる。
Claudeにループさせる。
ClaudeにArtifactを残させる。
Claudeにレビューさせる。
Claudeに削らせる。
Claudeに現実のツールを触らせる。
そして人間が、最後に読む。
結論:ClaudeのKarpathy版とは、“AIに書かせる技術”ではなく、“AIを働かせる設計思想”である
ChatGPT的な使い方が「聞く」から始まるなら、カーパシー版Claude活用は「作る」から始まる。
プロンプトは質問ではない。
プロンプトはプログラムである。
Claudeは回答者ではない。
Claudeは実行環境である。
Claude Codeは補助輪ではない。
Claude Codeは、英語で動く開発チームである。
ただし、強いAIほど、強い人間の監督が必要になる。
Claudeに任せるほど、成功条件の設計が大事になる。
Claudeが速く書くほど、人間は速く読む必要がある。
Claudeが大きく作るほど、人間は小さく削る必要がある。
カーパシー版Claude活用の合言葉は、こうだ。
細かく命令するな。成功条件を与えろ。
コードを書かせろ。ただし、必ず読め。
テストを書かせろ。通るまでループさせろ。
大きく作らせろ。最後に単純化しろ。
毎回プロンプトを書くな。CLAUDE.md、Skills、Subagents、MCPで環境を作れ。
Claudeを使うな。Claudeと働け。
2026年のClaudeは、文章生成AIではない。
Software 3.0時代の知的作業環境である。
そして、カーパシー的に使うとは、その環境を“雑に便利なAI”として扱うのではなく、“人間の判断を増幅する実行システム”として設計することだ。





